第10話 休日だそうですよ①

 ︎︎今日は珍しく妹と休みが被ったのでどこかに遊びに行くことになった。メンバーで言ったら僕と妹とシア、それと夏月先輩と雫先輩だね。

 ︎︎夏月先輩たちは来年になると卒論に追われるから今のうちに遊べるだけ遊びたいとのことらしい、僕も二年後は同じ目に遭うのかぁ……。


 ︎︎妹はまだ中学生だし、来年が受験かな。それを考えたらシアは既に協会で働いてるから学校ってものを経験することが出来ないのか。


「それでどうする? シアの獣耳としっぽはあの協会に登録してる【冒険者】からしたら納得できるけど、一般人とか別の協会に登録してる【冒険者】からしたら結構不思議に感じるだろうから隠さないとなんだよね」


 ︎︎それにシアはお出かけする用の服とかを持っていなかったので、僕たちの家に来てもらって妹がシアの服を選んでいた。それより、今日もダンジョンに籠ってるのかあの親たちは……協会に貢献するのはいいけど帰ってくるのが月一はどうなんだろう。


「お兄ちゃん、私の服じゃサイズがピッタリでしっぽを隠せないよ。お兄ちゃんの服なら隠せるんじゃないかな?」


「確かにダボダボの服なら隠せるかもしれないね。ちょっと待っててね、シアに似合いそうなやつ探してくるから」


 ︎︎高校生までは制服があったし、特に遊びに行くということもなかったのであんまり服は気にしてなかったんだけど、大学に入ってから私服登校だから母さんと妹が色んな服を買ってきてくれたんだよね。そのおかげで今は結構服があるからその中から選ぶとしよう。


 ︎︎まぁしっぽをちゃんと隠すとなればパーカーとかしかないわけなんだけどね。男が履くようなスボンは無理だろうし、下は妹に頼もう。


「私の古いショートパンツにしっぽを出す穴を作ったから、そこからしっぽを出して、お兄ちゃんのパーカーを着れば隠れるかな?」


「これ、着てみていいですかにゃ?」


 ︎︎部屋から出ていこうと思った時には既に遅かった。ほんの少し見えてしまったけど、見てないかのように振舞って僕は部屋の外に出た。





 ︎︎夏月先輩たちと集合し、夏月先輩たちは僕が登録してる協会と別のところに登録してるからシアのことは知らないのでまずは自己紹介から始まった。


「シアですにゃ。語尾に関しては気にしないで欲しいにゃ、産まれた時からですから直せないにゃ」


「僕は七瀬夏月ななせなつき、一応冒険者してる。あと隣の雫と付き合ってるよ」


湊雫みなとしずくだよー、夏月くんが言った通り付き合ってまーす。ちなみに夏月くんとは大学の同級生でうちも【冒険者】だよ」


 ︎︎今のところしっぽと獣耳についてはバレていない。でも普通に帽子は浮いてるし、服は妙に背中側が膨らんでるからすぐにでもバレそうなんだけど。


「シアはまだまだこの街について知らないと思うから僕たちから離れないようにね。普通に服装のこともあるし」


「そうだ服! そんなダボダボのパーカーじゃ歩きずらいでしょ、今からうちが選んであげようか? というより……それ、履いてる?」


「履いてますにゃよ?」


 ︎︎シアがパーカーを持ち上げてショートパンツを履いていることを証明したがその代償に思いっ切りしっぽが見えてしまった。ひとまず場所を変えよう、説明するにしても公道でする話じゃない。


「場所を移動しましょう、そこでシアについて話しますから」


 ︎︎今回行く予定だったショッピングモールの中に移動して、その中にあるフードコートの本当に一番端の席でシアについて説明をした。二人とも最初の方こそ不思議そうな目をしてたけど、普段モンスターを相手にしているからか、途中からシンプルにモフってた。

 ︎︎やっぱりシアの毛って触り心地いいのかな? 夏月先輩も触りたそうにしてるけど僕と同じような葛藤してるんだろうなぁ。


「まぁそういうことなのでシアのことは秘密にして貰えると嬉しいですね。会いたければ僕が登録してる協会の方に来たらいつでもいると思うので」


「会長のところで精一杯働いてますにゃ! 天乃江様の為にも働きますにゃよ?」


「いや主従関係とか別にないからね?」


 ︎︎そして雫先輩が服を買いに行きたいとのことなのでついでにシアの服も買おうかなと思う。ちなみに僕も夏月先輩は自負してるレベルでファッションセンスが皆無なので楽しそうに服を選んでいるみんなを眺めていた。


「夏月先輩、男ってファッションセンスがない運命なんですかね?」


「いや、僕らがないだけだと思うけどね。もう全部家族に任せきりでいいかなって思ってきてる」


「それは僕も同感です。礼華に頼んだ方が絶対に似合う服を選んでくれますし」


「ねぇねぇ二人ともこっち来て!」


 ︎︎雫先輩に呼ばれて試着室の前に行くと、何着か服を持っていた。


「良いのがいっぱいあったからさ、二人に選んで欲しいんだよね。夏月くんはうちのを選んで、天乃江くんは妹ちゃんとシアちゃんのを選んでね」


「僕の方だけ二人って難易度高くないですかねぇ。それに僕たちはファッションセンスが皆無なんですよ!? 雫先輩は知ってますよね? それなのに服を選ばせるなんて鬼畜ですか!?」


「うーん、頑張って?」


 ︎︎拒否権はなかったようだ、それにしても妹のシアの服かぁ……どんな服を着ても可愛いと思うし、似合うと思う。その中から選ぶって難しいなぁ……。


「……頑張ろうか」


「そうですね……」

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