第9話 初めての兄妹配信③
︎︎コメント欄もだいぶ落ち着いてきたところで、僕達はさらにダンジョンの奥に進んでいって別れ道に遭遇してしまった。
「お兄ちゃん、これどっちが正解だと思う?」
「そもそもダンジョンに正解とあるのかな、どっちにしろモンスターは居るだろうし直感で決めよう」
︎︎妹が選んだのは右の道で、さっき居た場所と違って全く視界を確保できない。僕は暗闇になれてるから見えるけど、配信を考えたらライトを使った方がいいよね。
「ライト持って僕が先頭を歩くから、礼華は僕の後ろから撮影しておいて。あーでも背後には気をつけてね、知能があるモンスターだっているから」
︎︎普通に無音で近づいてきて、背後からぶっ刺してくるモンスターとかいるからね。最近だったらヴァンパイアロードだね、まぁ近づかずにやれるヴァンパイアロードはより悪質だけど。
︎︎ここCランクだから知能があるモンスターは結構いるはずだからね。
『ライトあっても全然見えないな』
『二人は見えてるのかな?』
『気づいたら地面に死体が転がってるのほんまにえぐい』
「迷路みたいに入り組んでるね、ボス部屋どこー? 時間に余裕はあるけど、疲れるんだよねぇ……」
「建物なら空気の流れとかでどこが階段だとかわかるけど、ここ地下だからね。手当たり次第に進んでいくしかないよ」
︎︎ダンジョンゲートを潜ると、別世界みたいにダンジョンに辿り着くんだけど、その時ごくまれに建物に転移する時があるんだよね。まぁ僕は一度も建物に転移したことは無いんだけどさ。
︎︎イレギュラーでモンスターに建物を占拠されてる時はあるから建物内での戦闘経験が無い訳ではない。
『さらっととんでもないこと言ってないか?』
『空気の流れでわかるとは?』
『冒険者の中では普通なのかね?』
「お兄ちゃん、さっきから同じ道を進んでる気がするんだけど気のせいかな?」
「同じ道ってことは無いと思うけど……。とりあえず進まないと帰れないから頑張ろうか」
︎︎転移結晶はあるから帰ろうと思えば帰れるのだが、せっかくここまで進んできたのに途中で帰るのは……と思ってしまうのが【冒険者】だ。それに視聴者からしても途中で帰るのは面白くないだろうし、やっぱりボスとは相対しないと。
︎︎そのまましばらく進んでいくと、前にもあったようなさっきまでとは雰囲気が違う広い空間に出た。前と同じならここはボス部屋なはずだけど、どうだろう?
「視聴者さん、この角度で見えてる?」
『ばっちり』
『ボス戦楽しみにしてる』
『礼華ちゃんとお兄さんがんばえー』
『また無双か?』
︎︎また僕が無双すると思われてるけど、これは妹の配信だからボスの相手は妹にほとんど任せようと思う。僕は妹の邪魔にならないように周りに出現した敵でも倒そうかな。
︎︎どんな敵が出てくるかその空間に足を踏み入れると、緑色の鱗を身に纏った巨大な生物と取り巻きが出現した。
「リザードマンとリザードマンキングかぁ……。鱗が尋常じゃないほど硬いから、まず僕がその面倒な鱗を剥がしてくるよ」
︎︎リザードマン系の鱗はものすごくかたくて、並大抵の武器じゃ剥がすことができないんだけど……この短剣なら一気に削ぎ落とすことができるはずだ。削ぎ落とした後は簡単に切ることが出来るので、そこは妹に任せよう。
「ギャァァァァァ!!」
「近距離で叫ばないで欲しい、耳が壊れるからねっ!」
︎︎礼が放ったその一太刀はリザードマンキングの鱗を一気に削ぎ落とした。
「よーし、これで多分ダメージが簡単に通るはずだからキングの方は任せたよ。僕は取り巻きを処理しておくから」
「分かった、それじゃあいっくよー!」
︎︎リザードマンキングの意識が妹に集中したのを見て、僕は取り巻き達の注意を引き付ける。リザードマンも鱗を剥がさないといけないのが面倒だけど、結構売ると高いんだよねこの鱗。
『礼華ちゃん兄の動き速くね?』
『さっきの一太刀見えなかったんだが』
『どんな生活してたらこんな動きができるようになるんですかねぇ?』
︎︎リザードマンキングを倒すまで無限に湧いてくるし、売れるとは言っても別にお金に困ってるわけじゃないから持って帰っても重いだけなんだよね。でも妹がキングを倒すまで僕も耐え続けないとなぁ……。
「ギャァオ……」
「それじゃあ、これでとどめ!」
︎︎その一撃でリザードマンキングは倒れ、周りの取り巻きたちも消えた。
「やったー! ダンジョン攻略完了だよ!」
『おめでとう!』
『今日も可愛くて強かった!』
『ずっと取り巻きと戦ってた礼華ちゃん兄もナイスサポート!』
『次も楽しみ!』
「今回の配信も見てくれてありがとー! それじゃあまた次回会おうね!」
『おつー』
『おつ』
『おつかれー』
︎︎妹は配信を切って、カメラを鞄の中にしまう。今回はイレギュラーとか起きることなく配信を終えることが出来て良かった。
︎︎BKは居たけど被害はなかったからノーカンということで。
「それで、僕は素材を売りに協会に行くけど着いてくる?」
「行く! シアちゃんをモフりたい!」
︎︎シアと礼華はこの前で随分仲が良くなっていて、礼華はシアの獣耳やしっぽをモフることが楽しみになっていた。
「シアの仲が良さそうでよかったよ。というかシアってそんなに触り心地いいの?」
「うん、もふもふで気持ちいいよ!」
︎︎触ってみようかなと思ったけど、普通に僕が触ったらセクハラじゃん。獣人の性別が人間と同じか分からないけど、シアって普通に女性判定だろうし。
︎︎触りたい欲望はあったけど、僕は我慢することにした。さすがに捕まりたくは無いので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます