第8話 初めての兄妹配信②

 ︎︎BKには二種類いるんだけどどっちなのかな? 弱くてモンスターを倒せないから【冒険者】を狙うことにしたタイプか、そこそこの実力を持っていながらもモンスターより【冒険者】を狙った方がいいじゃん! と魔が差したタイプか。


 ︎︎三体一だけど、殺されることがないってのはモンスターより安心できる。BKはあくまで素材とかお金を取ることが目的だから余程気に触ることをしなければ殺されることない。

 ︎︎逆にモンスターは三対一とか関係なしに容赦なくぶっ殺しに来るからダンジョンに慣れてる【冒険者】からしたらもはやBKの方がましなのである。


 ︎︎こっちは配信中だから音声に関しては広まってるし、顔は妹がカメラをどうするかだね。BKの被害って結構多いから同情とか全くなしで映していいと思うけどね。

 ︎︎それは【冒険者】の考えであって【配信者】である妹はどうするだろう。


「そんな短い剣一本でどうするつもりだ? こっちには三人も居るんだぞ、向こうの女は戦わせなくていいのか」


「多対一なんて何回もやってきてるから大丈夫、それにモンスターより人間の方が弱いからね。こっちも色々邪魔されてるから時間は掛けてあげないよ?」


 ︎︎そうは言ったけど、こっちから切りつける訳にいかないし、妹に絶対に怪我しないって言ったので多分時間は掛かる。配信に音声は流れてるから、気を利かせた視聴者さんの誰かがここに協会を呼んでくれているだろう。

 ︎︎普通に配信を見てる山本さんとかが来るかもしれないけどね。


「調子乗んなよ!」


 ︎︎剣を前に突き出して突っ込んできたので短剣を使って弾いて仲間の方向に突っ込ませた。うん、これなら怪我をせずに終わらすことができるかな? それに僕から手を出してないしその他の心配もないね。


「ちょ、痛いっす! 痛いっす! ちゃんと相手にやってくださいよ!」


「悪ぃ、ちょっと油断してたわ。次は確実に仕留めるために二人で行くぞ」


 ︎︎とりあえず僕は二人同時に挟み撃ちで突っ込んできたのをしゃがんで避けて、次の瞬間に相手の悲鳴が聞こえて血が辺りに血の雨が降り注いだ。血が酸化して匂いがだんだんきつくなってくるから早くここを去りたい。


仲間同士で刺しあった二人は痛みでもう動けなさそうだけど、あと一人やらないと。血の匂いが無理になる前に早く終わらせないと……。


「お兄ちゃん、配信を見てた人が協会の人を呼んでくれたから安心していいよ。それで……血の匂い大丈夫?」


「ほんと無理吐きそう……。早くこの場所から抜け出したい、モンスターに出会ってもいいから奥に行きたい」


 ︎︎この三人組は協会の人に任せるとしよう。そして僕たちはダンジョン奥に進んですぐに居たモンスターを討伐して少し休むことにした。


『大丈夫かマジで』

『時間が経つ事に血の匂いってやばいよな』

『モンスターの体液は大丈夫なのに不思議だな』


 ︎︎前会長の地下室に行った時からそうだけど、全然血の匂いには慣れない。正直あの時だって無理してたし、山本さんが【冒険者】してれば血の匂いに慣れるって言ってたけど僕は全然ダメだった。


「血の匂いには全然慣れないなぁ……。それより最近は刺激が多すぎるよ……もう少し穏やかに過ごしたい」


『ここら一週間の礼華ちゃん兄の動きすごいもんな』

『ヴァンパイアロード討伐、イレギュラー制圧、今回のBK撃破』

『イレギュラー制圧に関しては数時間ぶっ続けで戦ってなかったか?』


 ︎︎イレギュラー制圧の翌日は休みたかったけど単位は逃したくないから普通に行ったんだよね。【冒険者】の本来の以来より過酷だよダンジョン攻略部の活動は……。


『そういえば礼華ちゃんは顔出ししてるけど、兄の方は出す予定とかある?』

『それは気になってた』

『顔出しすると面倒なこともあるからそこは考えた方がいいと思う』


「僕はどっちでもいいですよ。それで迷惑行為してきたりしたら警察呼ぶだけですし、自分で返り討ちにしますから」


『具体的に何するつもりなんですかね……(震)』

『あの配信見て迷惑行為しようとするやつ居ないだろ』


 ︎︎そもそも迷惑行為って具体的にはどんなことがあるんだろう。家に来たりするなら警察だし、さっきみたいのなら協会行きである。

 ︎︎僕自身なるべく大事にはしたくないから警察とか協会の人とか呼びたくないんだけどね。


「余程のことがない限り警察とか協会の人は呼びませんよ。あ、話が脱線しましたね、顔出しに関してはアンケートしたいと……アンケートってどうするんだっけ?」


「お兄ちゃん、私に任せて! ここをこうやったらできるよ」


「おーすごい」


『ダンジョン内だよな……?』

『のんびりしすぎでしょ』


 ︎︎アンケートの結果、当たり前かのように顔出しが決定したので一旦妹にカメラを持ってもらうことにした。


「えっと、礼華の兄です。僕の顔ってそこまでみんな気になるかな? とりあえず休憩もしたし奥に進もう」


「ん、視聴者のみんなもお兄ちゃんの顔をもっと見たいと思うから私がカメラ持っておくね」


 ︎︎まーた僕が主役になっちゃうよ、もういっそ改名して兄妹チャンネルにしてもらおうかな。これからずっと僕も一緒に戦うことになるだろうしね。


『礼華ちゃん兄かっこいい』

『礼華ちゃん兄かっこいい』

『礼華ちゃん可愛い』

『礼華ちゃん兄彼氏にしたい』


 ︎︎コメント欄がかっこいいで埋め尽くされるのを見て少し妹が不貞腐れているがどうしてだろう?


「私のお兄ちゃんだもん、視聴者のみんなには渡さないからね!」


『可愛い』

『可愛い』


 ︎︎僕がかっこいいのかは疑問だが、反応的に顔出しして悪い感触ではなさそうなのでよかった。

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