第7話 初めての兄妹配信①
︎︎僕たちはいつも通り僕がカメラを持って配信を始めるのではなく、今日は三脚に固定して配信を始めた。
「今日もいつも通りダンジョン配信していくんだけど、見てわかる通り三脚を買ったんだよねっ!」
『つまりは礼華ちゃん兄も一緒に戦うということか』
『この前のイレギュラーではお疲れ様でした』
『すごい楽しみ』
︎︎視聴者の要望を見て僕も妹の配信で戦うことにしたから期待されてるところまではいいんだけどさ、この前のイレギュラーの事がバレてるんだろうね? 確かにテレビ局の人が来てたから現場を見ることは可能だったけど、よくネットの人は僕が居たってわかるね。
「それでね、三脚買ったから今日はお兄ちゃんも一緒に戦うよ。お兄ちゃんはカメラマンだけど、ものすごい強いんだよ!」
『ご存知です』
『絶対カメラマンの器に収まりきらない強さなんだよな』
『今回も楽しみにしてるぞ』
「礼華の配信ですし、僕はサポートに徹しますよ。礼華が危なくなったらちょっと本気出しますけど」
︎︎妹が危なくなるのってイレギュラーが起きた時ぐらいだし、前みたいに急にヴァンパイアロードが出てきたりしなければ僕の出る幕はほとんどないだろう。とはいえ今回は前とは違ってCランクのダンジョンだ。
︎︎前までは僕がFランクだからという協会のルールで行ってはいけないというそれっぽい言い訳をしてDランク以下のダンジョンで配信をしていたが、僕はこの前Dランクになってしまったので今回はここに来ることとなった。
︎︎(ダンジョンは自分のランクの一ランク上までは行くことが出来る)
「それじゃあ中に入ろうか、今までとは比べ物にならないぐらい強いと思うけど頑張ろー!」
「確かにEランクとCランクじゃ全然違うけど、礼華ってゴブリンロードを一人でも倒せるんだから多分Cランクダンジョンも大丈夫だよ」
「それじゃあヴァンパイアロード? を一人で倒してたお兄ちゃんは何ランクまでなら大丈夫なの?」
︎︎ランクというのはそもそも三人想定で出来ている。Dランクモンスターのゴブリンロードを例として考えると、そのゴブリンロードを倒すにはDランク冒険者が三人必要ということになる。 ︎︎つまり一人でDランクモンスターを倒せるならCランクでも、誰かと一緒なら十分に戦えるということだ。
︎︎そうなったら僕はBランクのヴァンパイアロードを一人で倒したから、Aランクモンスターも誰かと一緒なら討伐出来る実力ということになってしまう。普通に墓穴を掘っちゃった気がする。
『協会の基準で考えるならBランクは余裕、Aランクは頑張れば行けるって感じ』
『Bランクが余裕の時点で十分バケモノ、協会から結構モンスター討伐の依頼されるはず』
『Bランクから極端に人が少なくなってくるからな、本当に凄い』
「お兄ちゃんめっちゃすごいじゃん! なんで私に秘密にしてたの」
「いやー、僕ってカメラマンだし戦わないから言う必要もないかなって。これだけは言っておくけど、ヴァンパイアロードを倒せたのは偶然だからね? OK?」
︎︎自分でもだいぶ苦しい言い訳だと思うけど、こうでも言っておかないと僕の評価が上がっちゃうからね。あくまで配信のメインは妹、僕が注目されすぎてもダメなのである。
︎︎ダンジョンの中に入ると、先に人が入っていたのか、一層目にモンスターは一匹もいなかった。普段なら楽できるから嬉しいけど、今は配信してるから見所がないと困る。
「先に人がいると思うからカメラは一旦ポケットの中にしまおうか。一応トラブルとかの証拠のためにマイクはONにしておくね」
︎︎そのまま奥に進んでいくが、しばらくは全くモンスターが居なくて、三層に進んだところで人影が見えてきた。
「あ? なんだお前ら」
「なんだって……ダンジョンを攻略しに来た人間ですけど」
「ここは俺が先に来てたんだ、お前らはさっさと帰れ!」
︎︎協会のルールとして複数の【冒険者】が同じダンジョンで攻略を行っている場合は、互いに協力し、モンスターの素材はお互いの同意の元で分配するというのがある。僕たちが後から来たのは間違いないが、だからといって帰らせる権利が向こうにある訳でもない。
︎︎こういうやつの相手は妹には任せられないかな。ポケット中に冒険者手帳が入ってるし、相手は【冒険者】だから協会のルールで追い詰めることができるね。
「貴方に僕たちを帰らせる権利は無いはずですが? ダンジョンは協会が管理している公共機関扱いなので僕たちが入ろうと僕たちの勝手です」
「こっちは生活かかってんだ、後から来たやつに素材を取られてたまるかよ。お前みたいなガキには分からないだろうけどな!」
「いや……僕も【冒険者】ですし、言ってることは分かりますよ? ただ、それより協会のルールは守らないといけないですよね?」
︎︎協会のルールを無視しだしたら【冒険者】なんて職業はやってられないからね。どんな人だって協会のルールを守ってもらわないと。
「もう一度言う、お前らは早く帰れ!」
「だから帰りませんって。ダンジョンを攻略する権利は僕たちにもあります」
「仕方ねぇ、お前たち来い!」
︎︎目の前の男が合図を出すと、さらにダンジョンの奥からその男の仲間が二人やってきた。たまに居るんだよね、【冒険者】を襲撃して武器とかお金、素材を取って逃げる
「相手がBKなら僕の仕事だからこれ持って少し遠くで見てて。大丈夫、絶対に怪我はしないから」
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