第6話 また話題になるようですよ!?
︎︎僕は大学のダンジョン攻略部という少し特殊な部活に入ってるのだが、今日に限っては部室のドアを開きたくなかった。その名の通り活動はダンジョン攻略だし、時には誰が一番成果をあげれるかを競ったりもしている。
︎︎部員も結構いて、僕が通ってる大学では結構有名なのだが……ほとんどの人はダンジョンに入り浸ってて部室にはほとんど来ないんだよね。だから僕のことを知らない先輩も居る。
︎︎そして何より問題なのが、山本さんみたいにちゃんと妹の配信を見てるんだよ。妹がダンジョン配信者として有名になるのは嬉しいけど、僕に飛び火してくるからなぁ。
「天乃江、部室の前で立ち尽くしてどうした? ほら、今日の主役はお前なんだから早く入るぞ」
「やっぱりこの前の配信もちゃんと見てるんですね……。もういいですよ、配信に映ってしまった以上は消すことができませんし」
︎︎覚悟を決めて部室の中に入ったが、僕が入った瞬間に中にいた人全員の視線が僕に向いた、怖い。
「天乃江くん、この前の配信は
「僕の配信じゃないんですって、あくまで妹の配信でカメラマンをしているだけですから。別に
「あれは【冒険者】になってから二年目のことだし、まだ一年も経ってないのに倒した天乃江くんには敵わないよー」
︎︎そんなことを言ってる雫先輩だが、僕と同じぐらいの時にネームド個体をさっき言ってた夏月先輩と二人で倒している。二年目に倒したというのも、実力が足りないということではなく、ヴァンパイアロードに遭遇しなかっただけの話だろう。
「天乃江くん、今日の活動は重労働だよー! うち達部員だけでイレギュラーを抑えるんだって。もう既にダンジョン外に出ちゃってるみたいだし、早く行こうか」
「了解でーす」
︎︎雫先輩の運転する車でイレギュラーが起こった現場に行くと、既に結構荒れていた。いつもの事だがテレビ局の人達が来てるけど、危ないから普通に来ないで欲しいんだよね。
︎︎来るんだとしても建物の上から撮るとか、安全な場所を確保していて欲しい。
「お、雫たちもやってきたし結構余裕が出来そうだね。結構大規模のイレギュラーだから三人じゃきつかったんだよ、テレビ局の奴らを守りながらだから余計にね」
︎︎当たり前だが誰からを守りながら戦うというのは本来の力を出すことが出来ない。テレビ局の人達を気にしながらモンスターと戦うこと自体がおかしいのだ、普通に死ぬ確率が上がるだけだ。
「そういえば、部室に行ってからすぐここに来たので武器待って来るの忘れちゃいました」
「天乃江くんはずっと同じ武器を使ってるからたまには変えて欲しいと思ってさ、わざと直ぐに連れてきたんだよ。はいこれ、ヴァンパイアロード討伐おめでとう!」
︎︎雫先輩から受けとったのは僕がいつも使ってるような短剣なのだが材質が少し特殊だった。金属じゃないからモンスターの素材で作られたものなのだが、何のモンスターだろ。
「これね、ゼノ・クライシスの余った素材で作ってもらったんだよ。天乃江くんがやってきてから忙しすぎて歓迎会とか何もしてあげられなかったからねー、代わりと言ってはなんだけどそれをプレゼントするよ」
「ありがとうございます……。でもいいですか? こんな高価なものを貰って」
「いいよいいよ、どうせ残りカスで作って貰ったやつだから。どうしてもって言うならそれ使ってモンスターいっぱい倒してね」
︎︎素材って残ってたんだ、雫先輩と夏月先輩の武器を作って無くなったと思ってた。短剣だから作れたんだろうね、それじゃあありがたく使わせてもらおう。
︎︎とりあえず一番近いところにいたゴブリンを切ってみると、引っかかることなく切り裂くことが出来た。さすがネームド個体の素材で作られた武器、切れ味が普通の武器とは段違いである。
「これなら楽に倒せるね」
︎︎イレギュラーが起きた現場での生放送を見ているネットの人間が、また天乃江礼という存在をスレで話題に上げる。
『イレギュラーを大学生に対応させるとか国どうなってんだ』
『ちゃんと調べろ、国は放置してるんじゃなくてあの大学のダンジョン攻略部の奴らに依頼してるんだよ』
『それにしても学生に全部任せる国はやばい』
『いや、あの大学のダンジョン攻略部の人たちはレベルが高いから温室育ちの国の人間が来ても足でまといになるだけだと思うぞ』
︎︎スレは加速していき、大学の賞賛や国の悪口など、色んなことが言われていた。そこで一人のスレ民がとあることに気づいたことでさらに盛り上がりを見せることになる。
『一番前にいる小柄の男の子さ、礼華ちゃんの配信でカメラマンしてる人じゃない?』
『まじじゃん、礼華ちゃん兄って大学生だったんだ』
『カメラマンだから戦えないとは?』
︎︎スレはそのまま千にまで到達し、第二のスレさえも盛り上がりを見せるのだった。
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