第3話 話題になるそうですよ!?

 ︎︎いやぁ……さっきの光景が全部全国に配信されちゃってたとは思わなかった。さすが某有名会社のカメラ、耐久性が違う。


 ︎︎まぁそんなことはどうでもいいとして、どうしようかな。アーカイブを消したとしても既に拡散されてるだろうし手遅れだとして、正直僕ができることはない気がする。

 ︎︎多分だけど協会の人もこの配信見てるよなぁ、妹って結構有名なダンジョン配信者だし。


 ︎︎とりあえずヴァンパイアロードの素材を拾ってダンジョンを出る。そしてスマホを確認してみると案の定、#礼華ちゃん兄がトレンド入りしていた。


「お兄ちゃんに言いたいことが二つあります」


「はい……」


 ︎︎出口に居た妹は僕を見るなりそう言うが、今回ばっかりは完全に僕が悪いから怒られても仕方ないのかもしれない。


「どうして私だけを転移結晶で脱出させたの? 確かにヴァンパイアロードは危険なのかもしれないけど、二人で戦ってた方が安全だったよね」


「ヴァンパイアロードは本当に危険なんだよ、戦っても勝てる可能性の方が低い」


「それはお兄ちゃんも同じだよね?」


「はい、すいませんでした」


 ︎︎妹に怒りながらも安心しているようにも見える。これからは妹を心配させないようにしないとなぁ……でも協会の依頼とかが来るし、カメラだけを持つ人にはなれなさそうだけど。


 ︎︎とりあえず協会にヴァンパイアロードの素材を持っていくとして、会長にどうすればいいか聞いておこうかな。あくまで僕は配信を安全に行わせるだけのカメラマンなんだから目立ってしまうと困る。





 ︎︎協会の中に入るといつも通り酒を飲んでいる人などが居た。良くも悪くも変わらないよね、この協会って。

 ︎︎未成年も協会に入ることぐらいはあるんだからここで酔い潰れるのはやめて欲しいけどね。


「いやぁ、今回の活躍はしっかり妹さんの配信で見てたぞー? ヴァンパイアロードを倒したんだ、昇格も有り得るんじゃないか。記念に飲むか?」


「勘弁して下さいよ、僕まだ二十歳になったばかりですし。それに礼華もいるので飲みませんよ」


「そうかい、それじゃあジュースぐらいはご馳走させてくれや」


 ︎︎今話しかけてくれたのは山本和真さん、何年も前から【冒険者】として働いていて、妹の配信を欠かさず見ている人である。ちなみに婚約していて、よく奥さんに怪我をして帰ってくることを心配されているらしい。


 ︎︎山本さんから妹の分までジュースを奢ってもらって、少し席に座って話すこととなった。


「今回の配信で礼の実力は全国に知れ渡った、視聴者の間だけでなく【冒険者】の間でも話題になるだろうな。Fランクで登録されてるやつがヴァンパイアロードを倒したんだからな、しかも無傷で」


「そんな無傷ってところを強調しないでくださいよ……。普通カメラがいい角度で転がってるとは思わないじゃないですか」


 ︎︎今は会長が居ないからあれだけど、帰ってきた時に呼び出されるのは目に見えてる。そうなったら協会内でも話題になるし、ネットではもう既に話題になっちゃってるから会長に話して【冒険者】の間だけでも話題を消してもらおうかな。


「まぁ【冒険者】なんて飽き性だ、すぐにこの話題なんて消え去るさ。ネットの方はどうか知らないけどな」


「次の配信の時に色々説明しますよ。Fランクっていうのが信じてもらえるのか分かりませんが」


 ︎︎まぁ冒険証見せれば信じてくれるでしょ。そこにはちゃんとF……いや多分今回の功績で上がるからもうFランクとは名乗れないな。

 ︎︎どれだけ上がるか知らないけどそこまで上げないで欲しい、僕は低いままの方がいい。


「礼華が疲れているので帰っていいですか?」


「主にお兄ちゃんが心配させたせいだけどね。あと会話に混ざれない」


「そりゃあ未成年には俺たちの話はつまらないわな。ちなみに会長が用あるみたいだから帰れないぞ」


 ︎︎とりあえず会長が来るまでの間暇なので今回の配信のコメントを確認してみると、やっぱり僕に対してのコメントが多かった。


『礼華ちゃん、今回も可愛かった』

『それはいつもの事。それより今回は礼華ちゃんの兄のことだ』

『あれな、ヴァンパイアロード相手にやばかった』

『そういや礼華ちゃんの兄ってランク何なんだ?』


 ︎︎見る限りネットの方は収まることはなさそうである。ぶっちゃけネットなんて一度拡散されたら終わりだから諦めてたけどさ、ただ一回ヴァンパイアロードを倒しただけで広がりすぎだと思う。


 ︎︎無理だろうけど、世の中にはもっと凶悪なモンスターをボコボコにしてる人もいるんだから、上には上がいるってことで僕のことは早く忘れて欲しい。


「お兄ちゃん、いっぱい高評価付いてるよ!」


「あーうん、そうだね。礼華が有名になるのはいいけど、僕が有名になるのはちょっと……」


「いいじゃん、カメラを固定する台を買って二人でダンジョン攻略しようよ!」


 ︎︎この際そうした方が人気が出そうな気もするけど、固定カメラだと上手く撮れないんだよね。撮る対象が動き回るから近すぎる時もあれば遠すぎる時もあるしね。

 ︎︎まぁそういうことも考えておくとしよう、もしかしたら視聴者の方から望まれるかもしれないし。


「呼んだのに待ってもらって悪いわね、それじゃあ奥に来て貰えるかしら? 他の二人も来てもいいわよ」


「俺は見に行くとするかね。妹さんはどうするんだい?」


「もちろん行く!」


 ︎︎妹と山本さんと一緒に協会の奥に入って席に座ると、会長の他に見慣れた顔があった。


「お久しぶりですにゃ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る