第6話

 *


 非常に良くない。


 良くないというのは何かというと、現状である。


 良くないということは、いっそ悪いということでもある。


 ふと、癇癪かんしゃくを起こしてしまった。


 その原因は何かは分からない。


 普段は、感傷的エモーショナル刺激的センセーショナルなメディア、SNSは観ないようにしている。


 私の病と相性が良くないからである。


 ならば、何か契機があったのか、と考えるが、それも掻き消される。


 癇癪の中、私は布団に思いっきり叫び、己の太腿が赤く腫れるまで叩き、壁に頭を五、六度打ち付けて止まった。


 止まれただけでも、僥倖だろう。


 頭や足から出血はしていない。


 ほとんど無意識の自傷だった。


 これが起こったのは、久しぶりだった。


 幸いなのは、外出中に発動しなかったことだろう。


 訪問看護の方からは、何かあった時のために携帯電話の番号が渡されている。


 それを使おうかどうか迷って、止めた。


 取り敢えず、止まることができたからである。


 その後、ぼろぼろと涙が溢れてきた。


 一瞬その涙の意味を、私は理解することができなかったが、後から追随して感情が湧いてきた。


 どうして私は、こうなのだろう。


 どうして私は、ちゃんとできないのだろう。


 そう思って泣く中で、どこか冷静な私も存在していた。


「一般」、「普通」という括りと己を比較して、そこに適合できないことを嘆いているのだろう。


 社会不適合者という言葉が、まさに当てはまる。


 私は、生きていてはいけないのではないか。


 誰もその言葉を否定してはくれない。


 誰もその言葉を肯定してはくれない。


 何もない、当たり前である、独りなのだから。


 一通り泣き終え、感情を吐露し終えた後。


 癇癪のせいで、より凄惨さを増した汚い部屋を掃除しようと、私は思った。




(続)

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