第2話

 今日は、何もできなかった。


 一日中家にいて、ぼうっとしていた。


 家事をしようと思うとやる気がなくなり、最低限トイレには行くようにはした。


 だが、それ以上はできなかった。


 予定では、今日は買い物に行くつもりだったけれど、怖くて外に出ることができなかった。

 

 怖い、のである。


 人が怖い。


 人がいると、何か害を加えられるように思える。


 見知らぬ人である。


 しかしその人達が視界に入ると、途端にぞわりと、背中に汗が浮くのである。


 結果、私の動きがぎこちなくなり、更に目立つことになる。


 見られる。

 

 どうやら私は、見られること、注目されること――ひいては、失敗を見られることを恐れているらしい。


 見ないでほしい、見ないでほしいと思えば思うほど、人はこちらを見て来る。


 それが怖い。


 だから今日は、外に出なかった。


 毎日手帳には「その日満足したこと」を書くようにしている。


 今日は何を書こうか。


 今日の私は、何を満足した?


 というか、何ができた?


 何もできていない。


 非生産的。


 生き物として、失格している。


 そんな負の感情に飲まれそうになって――慌てて腿を叩いた。


 駄目だ、駄目だ、駄目だ。


 今日は駄目だ。


 睡眠剤を飲んで寝よう。


 そうして強制的に入眠して、今日は終わった。


 後日、日記に付け足した。


「今日は、なにもしなかった! えらい!」




(続)

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