「絶望したときに開けなさい」と言われて怪しげな箱を渡された

ライデン

第1話箱

[あなたは、私の願いどおりに魔王を見事に打倒しました。なんでも、一つだけ願いを聞き届けて差し上げましょう]


 懐かしい声。俺を異世界転生させた女神の声だ。  


(まったく) 


 ひどい世界だったぜ。


 魔力が枯渇しかけ、魔力を得るために色々な種族が血みどろの紛争をしている世界。同じ種族、親族間でも日々血みどろの争いをくりひろげている。地獄とか修羅界とは、こういう所のことだろう。


「俺を元いた世界に戻してくれ。ここに比べたら、天国だった気がする」


 元の世界もまわりの人間のすべての営みが三文芝居にしか思えず、とても空虚だとしか感じていなかったが。  


「それは……」


「ん? なんでも願いを叶えてくれるんじゃなかったのか??」 

また、俺に嘘をついたのか。


「その前に渡しておくものがあります」


「なんだ?」


「箱です。両手を差し出してください」


「こうか?」

 俺は、箱を受け取るように両手を差し出す。


「はい。では、受け取ってください」  


 箱は、木で出来ていた。大きさは、弁当箱くらい。細い紐で封じられている。


「なんだ、これ? 玉手箱??」


「似たようなものです。開けたら、持ち主が十分じゅっぷんで死ぬ箱です。絶望したときに開けてください」


 玉手箱を開けると爺さんになってしまうのだが、この箱を開けると十分苦しんで死ぬのかよ!  


「元の世界に戻ったら、俺は絶望するのか?」


「そもそも、元の世界に帰るというのが間違いなのです、私があなたに施したのは、異世界転移ではないので」


「じゃあ、なんだったんだ?」


「くくく。さぁ? 魔法を解いて差し上げますから、ご自分のなさったことをよく確かめることですね。まぁ、端的に言えば族滅ですよ。ふふふ。あなたが真に望んだ通りのね」  


 族滅って、一族郎党皆殺しだっけ? 鎌倉時代とかに横行したやつ。  


 問題は、どの一族郎党を皆殺しにしたかってこと。俺が皆殺しにしたかったが、憎しみをいだいていただけではないので、殺せなかった一族郎党?


(まさか……)


 女神の邪悪な魔法が解けた時、俺は女神に渡された箱を開けた



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「絶望したときに開けなさい」と言われて怪しげな箱を渡された ライデン @Raidenasasin

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