赤ずきん

 狼は先回りをして、赤ずきんちゃんよりひと足早くおばあさんの家にたどり着きました。

 まずはおばあさんをぺろりと食べます。そうしておばあさんに成りすまして赤ずきんちゃんを待ち、油断しているところをこれもぺろりといただいてしまう。作戦はこうです。完璧ですね。

 というわけで、狼は力任せに戸を蹴破り、おばあさんの家に押し入りました。

 おばあさんの格好に着替えている別の狼と鉢合わせました。

「は?」

「え?」

「お?」

「え?」

 何だか嫌な沈黙が二匹の狼の間を駆け抜けます。えっお宅誰? といった風です。

 入り口で立ち尽くす狼(狼の姿)の傍らをすり抜けるようにして、新たな影が家に入ってきました。猟師です。歴戦の勇者のような雰囲気の猟師が無駄のない滑らかな動作で狼(おばあさんの姿)を仕留めました。猟銃とナイフの技量が冴え渡ります。

 そのまま狼(おばあさんの姿)は猟師によって太めの腹をさばかれ、中からおばあさんが救出されました。

 遅れてやってきた赤ずきんちゃんがおばあさんと抱擁を交わします。「おばあさん!」「赤ずきん!」。急なサプライズからの感動の対面です。

 狼(狼の姿)は何となく事態を察してそっと立ち去りました。猟師がものすごい顔で凝視してくるのに耐えられなくなったというのもあります。

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