ラプンツェル

 ラプンツェルはいつものように高い塔の最上階から地面に向かって長い長い髪を垂らしました。母親の魔女が塔の登り降りをするためです。地上に人影を見るといつもそのようにしています。

 ですが今日は何だか妙な気配がします。あれ? これお母さんじゃなくない? といった風です。

 案の定、人影は母親ではありませんでした。若い男のようです。いきなり上から垂れてきた髪の毛にびっくりしているようです。

 遥か下方から男は叫びました。

「髪の毛ちょっと切って売る気ない?」

「売るとは」

「高価な懐中時計の鎖を余裕で買える程度には良い髪質だと思うよ」

「うーん。どうしようかな。やっぱりゴリゴリ中抜きとかするの?」

「業界でも買取額ナンバーワンだよ」

「そっかー」

 ラプンツェルは髪の毛、の先の方を売りました。まあまあ長めにザックリ行きました。結構な金額です。お菓子と髪飾りもおまけについてきました。

 数日後、母親が帰ってきたのでラプンツェルは髪の毛を地面に向かって垂らしました。が、いつまでたっても手応えがありません。

 そういえばラプンツェルの母の身長はあまり高くありませんでした。ちびっこ魔女なのです。ラプンツェルもいただき物の髪飾りを使ってみたいがためにちょっと髪を細かく結いすぎたところがあります。

 これは届かないかもなあ、とビスケットを食べながらラプンツェルは思いました。

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