4章 第7話 青い髪の少女
とにもかくにも一同は宇宙海賊・深紅の秩序の砦を目指した。途中数日程度ほど野宿したものの、目的の砦の前に三人は到着した。
「はー、本当に大きいね」
星辰はその大きさに感心した様に砦を見上げている。やはり砦と言うより要塞言った方がしっくりくる。
「さて、あそこに門番みたいなやつがいるな。あいつにユーラ―に取り次いでもらおうぜ」
砦の門の前に門番が二人立っているのをアクイラが指さした。
「……」
「おい、無視するなよ赤頭!」
砦が近づくにつれ、ルベルは段々と口数が少なくなり無口になった。
「本当に行くのか?」
ルベルのテンションは低い。
「ここまで来て、何言ってやがる。心の準備する時間は意外にあっただろうが」
「分かった……」
ルベルは渋々ながら、門に向かって歩き始めた。
「本当に大丈夫?」
星辰がルベルを心配して話しかけた。
「星辰、ここまで来て引き返せねえぜ。今のところ他に手はないしな」
「心配するな。俺は平気だ……」
そう言うルベルに覇気はない。
「いや全然、平気そうに見えないんだけど……」
「クックック……」
アクイラはよほど面白いのか押し殺した様に笑っていた。
「処刑台に乗る囚人の気持ちだ……」
(そこまで嫌なんだ……)
ため息をつくルベルを見て星辰はそう思った。
「クックッ、こりゃ思った以上に面白いもんが見れそうだなぁ」
(こっちはめっちゃくちゃ楽しそう……)
足取りが重いルベルとは逆にアクイラは、この状況が楽しんでいる。
「……おい」
ルベルは気乗りしない感じで門番の一人に話しかけた。
「なんだ、お前?」
ルベルに話しかけられた門番が聞き返してきた。ファンタジーの世界のゴブリンの様な容姿だった。
「俺はユーラ―の知り合いで、ルベル=ベラトールと言う者だ。頭領のユーラ―に会いたい。取り次いでくれないか?」
「ああ? お前が
「そうだ」
「お前の様な小僧が、頭と知り合いのはずがねえだろう? さっさと帰れ」
「そうか。分かった」
ルベルはあっさりと引き下がると、踵を返そうとした。
「おい。簡単に引き下がるんじゃねえ! なあ、こいつの親はロカってんだ。ユーラ―とは元同僚の男だ。間違いじゃねえ。ユーラ―に取り次いでくれよ」
その様子を見た、アクイラが割って入って門番に取り次ぎを頼んだ。
「それを証明できるものはあるのか?」
「いや、それは……。何かないのか?」
アクイラがルベルを見る。
「……」
ルベルは無の表情で黙っている。
「おい、なんかしゃべれ!」
全く喋らないルベルにアクイラは怒鳴った。
ルベルは門番が取り次がないことを良いことに、ユーラ―に会わない事を願っている様だった。
「こっちのチビは、あのティグリスとアリアの息子だ。ユーラ―のかつての上司だそうだぜ」
ルベルでは、埒があかないと思ったアクイラは星辰を指さした。
「ティグリスだと?」
これまで、全く無視を決め込んでいる様子だった、もう一人の門番が反応した。こちらに近寄ってくる。
「そうだ! ティグリスとアリアの息子だ」
「確かにティグリスとアリアっていや、お頭の恩人の名だ。聞いたことがある」
近づいてきた門番が思い出したかのように、門番の一人に話かけた。
「うーん、だが、それも証明できるのか?」
ルベルが最初に話しかけた門番がアクイラを見て言った。
「おい、星辰何かないのか?」
門番に問い詰められたアクイラは星辰を見た。
「……ごめん、それはないよ……」
「決まりだな。帰れ」
門番がシッシッと手を払った。
「そうだ、フェミナ=エクエスだ」
アクイラが思い出した様に言い始めた。
「あん?」
門番たちが怪訝な面持ちでアクイラを見る。
「フェミナ=エクエスだよ。お前らの頭の本当の名だ」
アクイラは深紅の秩序の頭領ユーラ―の本当の名前を言った。この情報を知っている者ならば門番は取り次ぐかも知れない一縷の望みをかけた様だ。
「頭の本当の名前だぁ?」
「ああ、何言ってんだ。そんな名前を聞いたことねえ。でまかせ言ってんじゃあねえぞ」
しかし、門番たちにはユーラーの本当の名前を知っている様子はなかった。
「でまかせじゃあねえ。ユーラ―本人に聞いてみろって」
アクイラがなんとかくらいつく。
「いいからもう帰れ」
門番の一人が、もう面倒とばかりに手を振る。
「待って」
すると後ろから、声をかけられた。
星辰達が振り返ると、年のころは星辰達と同年代くらいの一人の少女が立っていた。青みがかった長い髪の毛をしている。美少女と言っていい。
「ニーナ」
門番の一人が、少女の名を呼んだ。
「ロカは確かに頭領の元同僚だし、ティグリスとアリアは頭領の恩人の名。その名前は、無視できません」
(この女の子も宇宙海賊なのかな? それにしては雰囲気がお嬢様っぽいけど)
星辰はその少女を見て、そう思った。海賊とはイメージがかけ離れている。
「だけどよ。ニーナ偽物かも知れんぜ……」
もう一人の門番がニーナに意見する。
「だったら、君、こっちに来てくれる?」
ニーナが星辰に自分の近くまで来るように促した。
「僕? うん」
星辰がニーナに近づく。
「……ちょっと失礼するね」
ニーナはそう言うと、右手を星辰の額に当てた。
「え?」
星辰が驚いて彼女を見る。
「な!」
アクイラも、彼女の行動に驚いて少しにらむ様にニーナを見た。
(ち、なんなんだこのイライラは……)
アクイラはニーナの行動に対して、ほんの少しだけイラついた。ただ、なぜイライラするのか分からない。
「君、すごい超能力の才能を秘めてるね?」
ニーナが星辰の額から手を離すと、少し驚いた様に星辰を見た。
「そうなの?」
そう言われても星辰にはピンときていない。
「うん。でも、まだ完全に全ての能力を引き出していないみたいだね」
「うーん、実感わかないな……」
ニーナに言われて星辰は、頭を少し掻いた。
「なあ、君。俺はどうかな?」
ルベルがいつの間にか、ニーナのそばにいた。
「うん。君も見てみるね」
ニーナはそう言うと、ルベルの額に右手を当てた。
「君もかなりの力を持ってるみたいだね」
右手を額から外すとニーナはルベルにも、そう告げた。
「そうだろう。あのチビに比べればはるかに強力な才能がね」
ルベルがドヤ顔でニーナを見つめる。
「ルベル。それを本人の前で言う?」
星辰はルベルをたしなめたが、ルベルは無視した。
「もう女の子を見ると、これだ……」
さすがの星辰も呆れた。
「でも、二人がティグリスさんやアリアさん、そしてロカさんの子供と言うのは本当だと良いと思う」
「そうかよ。ニーナがそう言うならそうなんだろうな。分かった」
門番はそう言うともう一人の門番とうなずきあって、門を開かせた。
「三人とも、ちょっと待ってて頭領に取り次いでくるから」
ニーナはそう言って、門の中に消えた。
「あ、うん」
「ああ、いつまでも君を待つよ」
「こいつ……。まったく、星辰じゃねえが呆れるぜ」
アクイラもルベルのセリフに呆れた。
三人は砦の前でニーナを待っていて、しばらくするとニーナが砦の門から再度、姿を現した。
「待たせてごめんなさい。頭領のユーラ―が会うと仰ってます」
ニーナは戻るなり、三人にそう告げた。
「本当? ありがとう」
星辰がニーナに礼を言う。
「案内するから、私の後についてきてね」
ニーナはそう言うと踵を返して、また砦の中へ歩を進め始めた。
星辰達三人も、少し緊張した顔をしてニーナを後ろをついていき砦の中へと入っていくのだった。
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