4章 第3話 仲間

 アクイラの傷は星辰の右手から出ている光によって、みるみる塞がった。


「な……」

 アクイラが自分の傷が塞がっていく様を呆気にとられて見ていた。


(こいつ、ヒーリングの能力を……)

 ルベルも星辰のヒーリングを驚き、その様子をただただ見ていた。


「よし、完全に塞がった」

 アクイラのふくらはぎの傷は完全に塞がった。


「アクイラ。立てる。どうかな?」

 星辰がアクイラが立てるか促した。


「あ、ああ……」

 呆気に取られてたアクイラだったが、星辰に話しかけれがゆっくりと立ち上がった。


「これは……」

 アクイラの足の怪我は完全にふさがっている様だった。


「大丈夫みたいだね。良かった」

 星辰も立ち上がるとアクイラを見上げながら笑った。


「ああ、ありがとよ……」

 アクイラが星辰を見ながら少し照れながら言った。


(父さんが、こいつをやたら特別扱いするのはティグルス警視の息子でレグルスを使えるからだけだと思っていたが……)

 ルベルの想定以上の秘めた能力が星辰にはありそうだった。


「ヒーリングが使えるなら、最初からお前がやれば良かっただろうが」

 ルベルがなかば呆れた様に言った。


「さっきまで、使えないと思ってたんだよ。だから君にお願いしたんじゃないか」

 星辰が少しすねた様にいった。


「なんだと?」


「もしかしたら僕も使えるかと思って、やってみたんだ。そしたらうまくいったみたい……」


「ぶっつけ本番で使ったのか? テレポーテーションの事と言い感心するより呆れるな」


「君がアクイラの治療をしないから……」

 星辰がルベルを少しなじった。


「それで、超能力を次々とな……もはや化け物だな」


「な、そこまで言わなくても……」


「化け物じゃなかったら、物の怪とでも言おうか」


「君、言いすぎだぞ! 結構良い奴と思ってきたのに……」

 星辰が少しけしきばむ。


「男に好かれようと思ってない」


「まったく、さすがに僕もあきれるよ……」

 さすがの星辰のルベルの性格に多少あきれた。


「それで、結構だ」


「……」

 アクイラはいがみ合う二人の様子を静かに見ていた。

 そして、次に先ほどまで痛んでいた足を見た。痛みは完全にない。


(こんなスピードで成長する奴を見たことがない……。こいつ本当になんなんだ……)

 アクイラは星辰を見た。


「アクイラ、どうしたの? まだ、足が痛むの?」

 アクイラの視線に気づいた星辰が聞いた。傷が痛むと思った様だ。


「ああ、いや大丈夫だ……別に痛まねえよ」

 アクイラは星辰に話しかけられて少し照れた。


(なんで、アタシ照れてんだよ……)

 自分でも、この感情がよく分からない。


「でも、この星ってどういうところなんだろう?」

 星辰がぽつりと言った。


「……」

 ルベルもアクイラも喋らない。


「ルベル。銀河連邦警察に連絡できない?」

 星辰がルベルに聞いた。


「それだがな、通信妨害があるらしく連絡をしようにもできない」

 ルベルが答える。


「それってどうして?」


「銀河連邦政府に非加盟の星なのかも知れんな。そう言った星だと連絡が出来ない場合がある」


「だけど地球だと、先生は普通に連絡とってたみたいだよ?」


「地球は犯罪組織や宇宙犯罪者が支配されていないからな。宇宙犯罪者が支配している星だとこういうことがある」


「つまり、この星は犯罪組織が支配してて、そいつらが銀河連邦政府への連絡を妨害しているってこと?」


「まだ推測だが、そうだ」


「星を丸ごと犯罪者が支配するなんて……」


「銀河ではざらにある話さ……」

 アクイラが話に入ってきた。


「その女の言う通りだ。まあ、そう言った星を犯罪者どもから解放するのも銀河連邦警察の役割でもあるがな……」

 ルベルは少し悔しいそうに言った。


「だが、そんな簡単にはいかねえのさ……銀河連邦警察もしっかりして欲しいぜ」

 アクイラがルベルをからかう様に言った。


「ち、泥棒が言う事か」


「だが、だらしないのは事実だろ」


「ふん」

 ルベルは返す言葉が無いらしく顔をそむけた。


「そうなんだ……そう言うことがあるんだ……」

 星辰はそう言うと少し考え込んだ。


「あのさ、この後なんだけど。アクイラはどうするの?」

 星辰がふいにアクイラに話しかけた。


「なんだよ急に……」


「良かったら、一緒に地球に戻らない?」


「何言ってんだよ?」

 アクイラが驚いて聞いた。


「そうだ、星辰何を言ってる?」

 ルベルも星辰に問う。


「だって、一人では地球には戻れないだろうし……」


「アタシは地球なんか思い入れはねえし、別に戻りたいとは……」


「でも、ウルラはいるでしょ? じゃあ、いったん地球に戻らないと」


「まあ、そう言われるとそうだけどよ……」


「だったらさ、一緒に戻ろうよ? アクイラが一緒だと心強いし」


「おい、星辰本気か? こいつはお前を犯罪組織に引き渡そうとしているやつだぞ?」

 ルベルが星辰の肩をつかんで星辰がしゃべるのを制止した。


「そいつの言う通りだぜ。それに、お前ら銀河連邦警察だろ。そしたらアタシは逮捕する対象じゃあねえのか? そんな連中と一緒にいられるか」

 アクイラがルベルに対抗する様に言った。


「だったら、一時休戦にすれば?」


「なんだそれは?」

 ルベルが星辰に聞く。


「だから、みんな地球に帰るまで僕たちはアクイラを捕まえない。アクイラは僕を犯罪組織に渡さないって事にすれば。三人いればなんとなるよ」


「はあ?」

 アクイラが心底呆れた様に声を出した。


「おまえ本気か? さっき俺に呆れたとか言っていたな。その言葉、そのままお前に返してやる」


「そうかなあ、そんなに変なことかなあ?」

 星辰は首を少しひねる。


「ぷ、くく、あはは、あっはっはっはっは」

 アクイラが急に声を出して笑った。


「ええ、急にどうしたの?」

 笑うアクイラを星辰は少し呆気にとられて見た。


「お前の言動が、よほどおかしかったんだろ……」

 ルベルがアクイラの気持ちが分からんでもないと言いたげ言った。


「うーん。そんな笑うほどかなあ……」

 星辰はまだ、良くわかっていない。


「分かったよ。その話にのってやるよ」

 笑いがおさまったアクイラは涙を拭きながら星辰に答えた。


「え、本当?」


「ああ」

 

「ふん。宇宙犯罪者と一緒だと? ふざけてる」

 その様子を見ていたルベルは、まだ納得できていない様だった。


「おまえには言ってねえよ」

 アクイラがルベルに馬鹿にして様に言う。


「なんだと……いや、分かった」

 ルベルはアクイラの言葉に最初怒気を持っていたが、少し考え込むと急に理解を示した。


「なんだ、急に?」

 ルベルが急に考えを変えたことにいぶかしむ。


「泥棒を連行している考えることにする」


「なんだと!?」

 今度はアクイラがルベルに詰め寄ろうとする。


「待って。地球に戻るまでは仲間だよ」

 アクイラとルベルの間に星辰が割って入る。


「仲間?」

 アクイラが星辰に見ながら聞いた。仲間と言う認識まではなかった。


「そう仲間でしょ?」


「仲間。仲間か……」

 アクイラは星辰の言葉に何とも言えない表情をした。


「俺はそうは思わん。お人よしもたいがいにしろ」

 ルベルはそう言うと、顔をそむける。


「ふん。言ってろ」

 アクイラも少し怒った様にあさっての方を見た。


「あはは……」


(自分で提案したことだけど、大丈夫かな……)

 少し乾いた笑いをした後、多いに不安を覚える星辰だった。

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