4章 第4話 支配されている星

「でも、これからどうしようか?」

 星辰が嘆くように二人に聞いた。


「まあ、情報収集だろうな。ここにいてもしょうがない」

 アクイラが答える。


「それについては同意する」

 ルベルもアクイラの言うことに同意した。


「そうだね。ここから出ようか」

 星辰たち三人は歩き始める。


「なんだか、地球のビルに似てるね」

 建物の中は思ったより広かった。

 歩いている最中に星辰は二人に話しかけた。


「地球と同程度の文明はあるようだな」

 星辰の言葉にルベルが答える。


「そういえば学校はどうなってるのかな?」


「あの状況じゃ、しばらく休校じゃないか? 誰かさんのせいで大騒ぎになってるだろうしな」

 ルベルはそう言うと、チラッとアクイラを見た。


「あ、アタシのせいって言いたいのか?」

 ルベルの言葉を皮肉と受け取ったアクイラがルベルにつっかかる。


「別にお前とは言っていないが」


「けっ」


「もう、喧嘩しないでよ。でも、なるべく早く戻らないと……。姉ちゃんに怒られそうだ……」

 星辰はそう言うと少しへこんだような顔をした。


「姉? 菖蒲さんがか?」

 ルベルが聞いてくる。


「へえ、お前姉ちゃんいたのか?」

 アクイラも以外そうに聞いてくる。


「うん」


「あの女性が怒るところが想像できんがな……」

 ルベルが少し首をひねる。


「君はある意味お客さん扱いだから……。僕にはかなり怖いよ。早く帰らないとどうなるか……。考えただけでも恐ろしい……」

 星辰は心底怖いようで震えがっている。


「少し、大げさじゃないか」

 ルベルが答える。


「そうだな」

 アクイラも同意した。


「ルベルは一人っ子? アクイラ三人姉妹の一番上?」


「そうだが」

 ルベルが星辰の質問に答えた。


「まあな」

 ルベルに続いて、アクイラも質問答える。


「君たちは知らないんだ、弟とお姉ちゃんの関係が。この関係性には明確な身分みたいな差があるんだ」

 星辰は少し力説した。


「あ、ああ、そうなのか……」

 ルベルが、星辰の言葉になんとも言えない顔で答えた。


「さあ、早く地球に帰ろう。お姉ちゃんに怒られる前に」


(こいつ、それが地球に帰る真の動機じゃないよな……)

 アクイラは少し呆れたように、星辰を見た。


「そうだな、まだクラスの女の子と仲良くなってない」

 ルベルも、地球に帰る事に関して星辰に同意した。


(こいつの地球に帰りたい動機もなんだかな……)

 アクイラはルベルを見て、ものすごく呆れた様にため息をついた。


「ここが出口だね」

 廃墟の出口からと思しき個所から三人は外に出た。


「街?」

 建物を出てると、ある程度の規模の街だった。建物の中にいた時は分からなかったが、今は昼の様だ。


「スラム街だな……」

 ルベルが周りの様子を確認しながら言った。街は荒廃しているように見え、なにがしかの薬物か何かのせいなのか、それとも貧困のせいなのか虚ろの表情の者が複数いる。


「こういう星にも、スラム街があるんだ……」

 星辰は悲しそうな、なんとも言えない顔をした。


「銀河の星の中では珍しくねえよ。銀河連邦に非加盟なら特にな」

 アクイラも少し悲しいそうな複雑な表情をして周りを見てる。


「そう」


「まだ断定できんが、銀河連邦に非加盟の可能性は高そうだな。とにかく情報収集すべきだろう」

 ルベルが話に入ってきた。


「周りの人に聞くのは?」


「現段階では、それしかないか……。おい星辰」

 ルベルは星辰を呼ぶと自分の方に近づく様に手招きした。


「何?」

 呼ばれて星辰がルベルに近づく。


「ここでは、我々が銀河連邦の警察官だと言う事は街の連中に言うな」

 近づいてきた星辰にルベルが、小さい声でこう注意してきた。


「なんで? 地球と同じで、銀河連邦警察とか知らないかもだから?」

 星辰がルベルに聞いた。


「その可能性もあるが……」


「銀河連邦警察を良く思っていない奴がいるかもだからさ。お坊ちゃま」

 アクイラが話に割って入ってきて星辰に言った。


「ふん。そいつの言う通りだ。言った瞬間、どんな事が起きるか分からん」


「そうなんだ。分かったよ」

 星辰がうなずく。


「さて、話を聞こうかね」

 アクイラはそう言うと、歩きだした。

 そして、屋台らしき店を開いている中年の女性に声をかける。皮膚が赤くて、一見すると鬼の様な角がある女性だった。やはり地球の人間とは、少し違う。


「●◇▽+◎■」

 アクイラは星辰の知らない言語でしゃべっている。


「何を言ってるか分からない……。そうかこの星の言語か……」


「宇宙公用語だ。エバンさん、いや月影さんからもらった腕時計の真ん中のボタンを押してみろ」

 ルベルが星辰の横に来て星辰の左手首のつけている時計を指さした。


「分かった」

 星辰がルベルに言われた通りに腕時計の真ん中のボタンを押した。


「ああ、ここがなんて星かだって? テーゲ星だよ」

 中年の女性はそう言っているのが聞こえた。


「テーゲ星? 本当にテーゲ星なんだな」


「ああ、そうだよ。変なこと聞くお嬢ちゃんだね」


「ああ、悪いな……。ありがとうよ」

 アクイラが女性に礼を言って、星辰達の方へ歩いてくる。


「あ、あの二人が何喋ってるか分かる」

 アクイラと女性の話を聞いた星辰が、少し驚いた様に言った。


「その腕時計が翻訳してくれている」

 ルベルが説明する。


「へえ、便利だな。かなり丈夫みたいだし」


「まあな。だが、この星がテーゲ星だと言う事は分かった」


「この星について、ルベルは何か知ってるの?」


「テーゲ星。やはり、銀河連邦の非加盟国だな。高値で取引される宝石や鉱石などが産出される星でもあると聞いたことがある」


「聞いていたと思うが、ここはテーゲ星だ……」

 二人に近づいてきた、アクイラは二人に対してこう言った。


「お前は、この星を知っているらしいな?」

 アクイラの様子を見てルベルが聞いた。


「前に少し調べていただけだ……。あの遠くにある塔を見ろ」

 アクイラはそう言うと、自分の後ろにあった棟を右手の親指でさして二人に見る様にうながした。


「ここからだと、確かにかなり距離があるな……」

 ルベルが塔を見て言った。


「随分、おっきい塔だね」

 星辰も右手を額に当てて塔を見た。


「あの塔がどうした?」

 ルベルがアクイラに聞いた。


「あれは、アルゴルが建てた塔だ……」

 アクイラがルベルの質問に答える。


「なんだと」

 ルベルは少し驚いた様に、再度塔を見た。


「アルゴルって、確か僕を狙ってる犯罪組織だよね?」

 星辰がルベルに聞いた。


「そうだな。しかし、どういうことだ?」

 ルベルがアクイラに再度質問をする。


「つまりよ。この星はアルゴルが支配してる星ってことさ……」

 アクイラはそう言うと、少しうつむいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る