4章

4章 第1話 彼女からの連絡

 星辰、ルベル、アクイラの三人がいなくなった次の日。

 当然、大騒ぎとなった。 


「すまない。エバン。いや月影……。ルベルがついていながら、こんなことになるとは……」

 紅鏡家の地下の部屋でロカとエバンは厳しい顔で話合いしていた。


「いや、私も油断していた……。もっと、気を使っていれば……」

 月影も少し憔悴した様にロカに返事をした。


「申し訳ございません」

 この部屋には星辰の護衛のメイドたちも四人全員顔をそろえていた。

 当日、星辰とルベルを待っていた桜とシルビアは終始すまなそうにうつむき加減に下を向いていたが、意をけしった様に桜が謝罪を口にして頭を下げる。

 シルビアも頭をさげる。


「二人は良くやってくれました。むしろ責任は私にあります」

 エバンは二人を責めず、励ますように言った。


「そうは言っても、やはり私たちにも責任があります」

 シルビアが月影を見ながら言った。


「いや、俺もお前に頼まれていた彼女たちのファミリアを用意できていれば結果は違ったかも知れん……」

 ロカもすまなそうに話しをした。


「いや、その時間がなさすぎました……。いや、もう起きてしまったことはどうしようもない。これから、どうするか考えましょう」


「そうだな……」

 ロカが少しだけ辛そうに答える。


「あのラートルと言う少女の情報は銀河連邦警察のデータベースにありましたか?」

 月影がロカに聞いた。


「調べてみたが全ての情報がない」

 ロカが月影の質問に答えた。


「全く?」

 月影が少しだけ驚いた様にロカに聞きかえした。


「俺も驚いたんだが、データベースに全く情報がないんだ。指名手配もされていない」


「……名前は偽名としても、情報が無いとは……」

 ロカの話を聞いて右手で顎を触りながら月影は考えた。


(では、ラートルと言う少女もしかして……)


「……フフ、おそろいの様ね」

 月影が考えをまとめていると、突如部屋にあるモニターが起動した。そこには、一人の少女が画面に映し出されていた。


「! 皆さんラートルです」

 桜がモニターを見て言った。


「この気持ち悪い笑い間違いないよ」

 エレナも桜に同調する。


「気持ち悪いは少し酷いんじゃないかしら? 傷つくわ」

 言葉と裏腹にラートルは薄笑いを浮かべている。


「貴様、どうやってこの部屋のモニターに!?」

 ロカがラートルに聞く。映像とは掴みかからんばかりに勢いだった。


「地球の文明程度なら簡単にアクセスできるわ」


「ふむ。だが、逆に探す手間がはぶけました。せっかくです。単刀直入に聞きましょう。星辰君たちをどうしたのですか?」


「星辰君とルベル君は無事よ。ついでにアクイラもね。まあ、多分だけど」


「多分?」


「三人は地球とは別の星にテレポーテーションさせたわ」

 部屋にいる一同がざわめく。


「なんだと! どこの星だ!」

 ロカが怒鳴る。


「そこまで言う義理はないわ」

 ラートルがフフと笑う。


「あなたの言う事が信じられるとでもお思いですか?」

 ずっと黙っていたソフィーが口を開いて、ラートルに聞いた。ただ目が怒っている。


「そちらが信じるか、信じないかは、まあ別にどちらでもいいかしら?」


「そもそも我々に、なぜその情報を伝えるのです?」

 月影が聞く。


「親切心よ。きっと心配していると思って」


「この! ふざけるなよ。アンタ!」

 今度はエレナが怒鳴った。


「つまり、まだ星辰君はアルゴルのクスカの元には引き渡していない?」

 月影がエレナを制しながら聞いた。


「そうよ。安心した?」


「ですが、そもそも地球とは別の星に星辰君たちを飛ばす必要があるのです?」


「あなたたちにも色々な事情があるように、私にも色々と事情があるのよ」


(この少女、自分の思惑で動いているのか? それとも別の……)

 月影が推測する。


「そうそう、地球にはかわいい子には旅をさせろって言葉があるのよね? いい言葉ね」


「急に何を言って……」

 シルビアがラートルの言葉が理解できない様に困惑した様に言った。


「さっき、なぜ地球以外の他の星に三人を飛ばす必要があるのか聞いたよね? 星辰君たちの成長を促すためよ。あなたたちはどうも過保護みたいだからね。まさに、かわいい子には旅をさせなくっちゃね」


「ふざけないでください!」

 桜がラートルをにらみつける。


「あらあら、私は真面目に言ったつもりなんだけど……。まあ、いいわ。星辰君はきっと自力で地球に帰ってくるわよ。多分ね」


「本当にふざけないでもらいましょうか?」

 ソフィーがさらに怒気をました目でラートルをにらみつける。


「そんなに怒らなくてもいいじゃない。せっかくの綺麗な顔が台無しよ。フフ、それに大丈夫でしょう。星辰君、次々と超能力を覚醒させているじゃない?」


「……」

 それについて誰も回答しない。


「正確には覚醒しているのではなく、『能力が解放している』と言った方がいいかしら?」


(! この少女、どこまで知っている?)

 ラートルの言葉に月影はほんの少しだけだが、動揺した。ロカや他のメンツも同様の様だ。


「星辰君ならきっと大丈夫でしょう? 地球にはきっと自力でもどってくるわ。それまで星辰君の成長と無事を祈りながら、お待ちなさいな」

 ラートルはそう言うとモニターは切れた。


「あ、待て!」

 ロカが怒鳴る。


「ちっ。本当に何が目的だ!?」

 ロカは消えたモニターを見ながら、そう言うと舌打ちした。


「……彼女の言っていることを信じるとしたら、星辰君たちは地球とは別の星にいることになります」

 月影が少し厳しい顔をしながら言った。


「しかし、その話が本当だとしたら私たちには……」

 ソフィーが少しうつむきながら言った。


「できることをしましょう。何もできないと諦めたらそこで終わりですよ」

 月影が部屋にいるみんなに言った。その言葉にその場にいる全員がうなずていく。


(あのラートルと言う少女は、おそらく……)

 そう考えながら、月影が左手で眼鏡をくいとあげた。

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