2章 第8話 守護者

「本当に勝ったら、その子たちは解放してくれるんだろうね?」


「約束は守るわ。今は私の超能力で守ってるから戦闘中も安全よ」

 ラートルは相変わらずの不気味な笑顔で答える。


「よし、本当だな? 行け、レグルス!」

 その言葉に反応する様にレグルスが吼えた。そのままエクスプローに襲い掛かった。


「あのアクイラがてこずったレグルスを見れるなんて楽しみね」

 ラートルはずっと笑っている。エクスプローもレグルスの攻撃をよけている。


(速いけど、アクイラのアルタイルに比べれば)

 エクスプローは確かに早いが、アクイラのファミリアであるアルタイルに比べれば、それほどでもない。


「ファミリアを使うようになって、まだ数日なのにここまで動かせるのね。すごいわ。でもね……」

 ラートルが指を鳴らすと、エクスプローの影から数本の針がレグルスを襲った。


「レグルス!」

 星辰が驚いて叫んだ。


「これがエクスプローの能力。影を自由に操れるの。今のは影から針をつくって飛ばしたの? どう、すごいでしょ?」


「く、だったら……」

 星辰はレグルスが人型へと変形させた。


「モードチェンジ。熱血モード!」

 さらにレグルスが熱血モードに変身させた。


「アルタイルを退けたモードチェンジね。第二形態ってところかしら? 楽しみだわ。でも、大丈夫? エナジーの消費も激しいんじゃないかしら?」


(確かに前回は倒れちゃったけど……)

 星辰にもそれは分かっている。


「そこは気合と根性で、やってみせる!」

 星辰はレグルスをエクスプローに再度突撃させた


「うふふ、いいね。その古臭い感じ」


(通常の形態よりも素早く動ける。これなら……)

 先ほどよりも素早い動きでレグルスはエクスプローに近づいている。


「うーん、良い線なんだけど。まだまだかな……」

 ラートルが再度指を鳴らした。無数の影の針が再度レグルスを襲う。


「よけろレグルス!」

 星辰が指示する。レグルスが避ける動作に入った。


「甘い甘い」

 しかし、無数の針を避けることはできずレグルスは膝をついた。


「次はこう」

 エクスプローの影がとりもちの様にレグルスに巻き付いた。


「取り外せ。レグルス」

 星辰が命令するが取れない。


「熱血モード……パワーは凄そうだけど、スピード、防御力ともに微増って感じかしら。攻撃力特化の形態って感じ?」

 焦る星辰そっちのけで、ラートルは分析した。


「まだ両方とも経験不足かな……予知の能力はどうしたの? 使ってたら結果は違ったんじゃないかしら」

 ラートルが星辰に聞いた。


「……」

 星辰は黙っている。


(どうやら、まだ予知も完璧には使えないみたいね……)


「だったら、こういう趣向はどうかしら?」

 空中に浮いていた子供たちの一人を自分の前まで浮かせたまま超能力で持ってきた。


「なにをする気だ!」


「こうするの」

 影がラートルの前にいる子供たちに巻き付く。


「この子をこの影で絞殺すわ。それくらいの力はあるの。人質はもう一人いるしね」


「なんだと! そんなの許さない」


「じゃあ、どうするのかしら?」


「この!」

 星辰がラートルをにらみつける。


(本当にこの子を殺すのか? あおってるだけ? いや、こいつ、人を殺すことをなんとも思ってない。こいつが殺すと言ったら本当にこの子を殺す)

 ラートルをにらみつけならが星辰は思った。


(さあ、レグルスを成長させてみなさい。それともできないかしら。私としてはどちらでもいいけどね)


「その子は僕が護って見せる!」

 星辰がラートルに向けって叫ぶ。


「ふふ、今の状態で、どうやって?」


「レグルス! 僕たちであの子を護るんだ!」


「レグルスはエクスプローの影で動けないわよ?」

 ラートルはそう言うと、レグルスへの影の巻き付きがきつくなる。


「くっ」


「これまでの様ね……じゃあこの子供を殺すわ」


「この、やめろー!」

 星辰が叫ぶ。次の瞬間、レグルスの胸が光った。


「! うふふ。発動したみたいね」

 ラートルが笑う。

 レグルスの胸には『護る』の文字が表示されている。

 そして、レグルスは巻き付いている影を引きはがした。


「ふふふ。レグルスを成長させた様ね。いいわ。でも、まだまだね。まだエクスプローの能力にはかなわない」

 エクスプローの影の針が、またレグルスを襲った。


「パワーはアップしたけど、この攻撃は防げないでしょう?」

 針が止まると、レグルスは膝をついた。


「この、まだまだ!」


「根性や気合で、どうしようもないものもあるのよ」

 ラートルが薄ら笑いを浮かべる。


「レグルス負けるな、僕たちには、あの子を、みんなを護る使命があるんだ!」

 星辰がまた叫ぶ。


「使命ね。ふふ、なるほどね……命を使うと書いて使命ね。確かに人は何かに命を使ってるわ。でも、その使命を他人のために使うなんて馬鹿馬鹿しいと思わない?」


「思わない!」


「まあ君ならそう言うかもね。でも、少し飽きてきたわね。終わりしようかしら。レグルスと君をさらって、子供たちを殺しておしまい」


「そうは、そうはさせない。子供たちも、みんなも護る、それが僕の『使命』だ」

 星辰がそう言うと、レグルスの胸が再度光った。『使命』の文字が光っている。


「そうだ。僕たちにはお父さんとお母さんから託された『使命』があるんだ!」


「ふふ。またパワーアップしたけど、それでどうするの?」


「こうだ。モードチェンジ!」

 使命の文字が消えると次に「+」、「護る」、「=」と文字が次々と消えてはうかんだ。

 =の文字が消えるとレグルスが光る。


「! これは……」

 少し驚いた様につぶやくラートル。

 光が消えると別の形態になったレグルスがいた。

 胸に『守護者』の文字が表示されている。


「守護者。ふーん。熱血モードとは別の第二形態ってとこかな?」


「いけ、レグルス!」


「また、同じ攻撃? 飽きないわね」

 ラートルがまた指を鳴らした。

 また、無数の針がレグルスを襲った。


(さあ、どうするの?)

 ラートルは興味津々に見ている。

 しかし、レグルスは針を気にせずそのまま突っ込んでくる。


「それじゃ、さっきと同じ……うん?」

 針はレグルスを襲ったが、まったくダメージを与えられない。

 全部弾かれてしまう。


「これは……」

 ラートルもさすがに少し驚いた。


「いっけーレグルス!」

 星辰の叫びと同時に、レグルスの拳がエクスプローに直撃した。

 その攻撃でエクスプローは破壊された様だ。


「ふふ、すごいわ。なるほど熱血モードが攻撃力特化型なら、こっちの守護者は防御力特化型ってことろかしら? 影の針が通じないくらいの装甲……」


「どうだ、勝負ありだ!」


「そうね」


「約束どおり、子供たちをかえせ!」


「……」

 ラートルは答えず、薄ら笑いを浮かべている。右手を肩の高さくらいまで正面まであげる。

 子供たちがすーと浮き上がる。


「おい、なにを、やめろー!」

 星辰が叫ぶ。だが次の瞬間、別の影がラートルを襲った。

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