2章

2章 第1話 一夜過ぎ

 昨日の出来事から一夜が過ぎた。


「う、ううん……」

 公園で倒れた星辰は、そのまま気を失った。


「あ、ここは……僕の部屋?」

 そして、星辰が目を覚ますと、そこは紅鏡家の自室だった。


「気が付きましたか、星辰様」


「ソフィーさん?」


「昨日は大変でしたね。星辰さん」


「シルビアさんも……」

 星辰の寝ていたベットのそばには椅子に座ったソフィーがいた。その横にシルビアが立っている。


「……いつの間に僕の部屋に? 昨日のことは、もしかして夢?」

 星辰は上半身を起こしながら言った。


「いえ、現実でございます」

 ソフィーが答える。


「……やっぱり、現実なんだ。夢かと思ったよ」


「そう思うのも無理からぬことかと」


「ソフィーさんやシルビアさんとみんなが来てに助けられたんだっけ」


「駆け付けるのが遅れて申し訳ありません」


「そんなことないよ。でも、なんでいきなり僕は自分の部屋に……」


「星辰様は昨日、公園で気を失いました」


「そうなんだ、もしかしてソフィーさんとシルビアさんが僕を診てくれたの?」


「はい。診察したことろ、特に体調に問題はございませんでしたので、こちらに運ばせていただきました」」


「そういえば、ソフィーさんは医師の免許、シルビアさんは看護師の免許を持ってたっけ」


「左様です。念のため、正規の医師にも診ていただいて問題ないとのことです」

 ソフィーが答える。


「そうか、いろいろありがとう……あ、そういえば、花里君は大丈夫かな?」

 星辰が心配そうに言った。


「お友達の体調も問題ございません。昨日、ご自宅に送らせていただきました」

 ソフィーの横にいたシルビアが答えた。


「私もお友達を診させていただきましたが、特に問題はなかったかと」

 ソフィーが言う。


「そうか。それなら良かった……。そうだ、学校は?」


「本日はお休みでございます」


「あ、ああ、そうだっけ」


「いずれにせよ本日はお休みなさった方が良いかと思いますが……」

 今度はシルビアが言った。


「ううん。もう大丈夫。起きるよ」


「大丈夫ですか? 無理せずとも……」

 ソフィーが少し、心配そうに言った。


「本当に大丈夫。元気だよ。それより僕に何が起きているか知りたい」

 星辰はそう言うとベットから出た。


「昨日の公園に来たってことは、二人や桜さん、エリナさんは僕の状況のことはしってるの?」


「恐れながら、存じております」

 星辰がベットから出るのをみてソフィーが立ち上がり、星辰に答えた。


「そう」


「ごめんなさい」

 シルビアが唐突に頭を下げながら謝った。


「私も申し訳ありません」

 ソフィーも頭を下げて謝る。


「なんで二人が謝るの?」

 星辰はきょとんとしている。


「私たちは昨日のことがある前に、星辰さんの様々な状況を聞いておりました」

 ソフィーが言った。


「なのに私たちは星辰さんにそのことを秘密にしておりました。だから……」

 シルビアが申し訳ないように言った。


「二人やみんなが、僕の秘密みたいなことを知ってて僕に言わなかったってことは、言えない理由があったんでしょ?」


「……はい」

 シルビアが答える。


「じゃあ、別に二人のせいじゃないよね」

 星辰はあっけらかんとしていた。


「それに先生が、詳しく説明してくれるらしいから先生から聞くよ」


「……承知しました」

 ソフィーはそう答えると頭を下げた。シルビアもソフィーにあわせて頭を下げている。


「ええと、先生はどこにいるのかな?」

 星辰にとっては、まず月影から話を聞きたかった。


「シルビア、月影さんは?」


「今はあそこにいます。もし星辰さんが月影さんに会いたいと言った場合はそちらにお通しせよと言付かってます」


「そう。では、星辰様ご案内いたします」

 ソフィーはそう言うと、星辰を促すように歩き出した。


「うん」

 星辰はうなずくとソフィーの後ろにつくように歩いた。さらに星辰の後ろにシルビアがついてきている。

 星辰の部屋を出て、ソフィーの後をついて随分歩いて行くとひとつの扉の前に到着した。妙に無骨な印象を受ける扉だ。


「ここって、近寄るなっておじいちゃんに言われてた扉だ」

 祖父の郷太郎に近づかないように言われていた扉である。

 近づかなかったというより専用のカードキーが無いとこの扉は開かず、そのカードキーを持っていない星辰には中に入ることは出来なかった。


「左様です」

 ソフィーはそう言うと、カードキーを取り出し端末に差し込んだ。端末に反応があったあと、扉から見て右の壁の小さな扉が自動で開いて1つの穴が出てきた。

 ソフィー扉のその穴に自分の手を入れた。


「これって指紋認証?」


「いえ、分かりやすく言えばDNAを認証しております」


「へえ、そうなんだ……」

 祖父が近づくなと言った場所だけに随分厳重なセキュリティーだ。

 扉の中に三人で入る。

 扉の中は廊下だった。

 しばらく三人で進むと、また扉がある。

 ソフィーがボタンを押すと、エレベーターとなっている様だ。


「星辰様。こちらへ」

 ソフィーとシルビアがエレベーターに乗り、ソフィーが星辰を促した。


「ああ、うん」

 星辰が言われるがまま、エレベーター乗り込む。


「この中って、こうなっていたんだ……」

 星辰が少し驚いた様に言った。

 そうしているうちにエレベーターが止まったようだ。

 扉が開いて、また廊下になっている。


「こちらです」

 ソフィーが、また星辰を促す。


「ここに月影さんがいらっしゃいます」

 廊下をまっすぐ歩くと、また1つ扉があった。


「この中に先生が?」


「はい」

 ソフィーは星辰の質問に答えると部屋の横のボタンを押した。インターフォンの様になっているらしい。


「はい」

 ボタンを押すと月影の声が聞こえた。


「ソフィーです。星辰様が目を覚まし月影さんにお会いしたいと仰るので、シルビアと共にお連れしました」


「分かりました。星辰君と二人で話をしたいので申し訳ありませんがソフィーさんとシフビアさんは、ここで……」


「承知いたしました」

 ソフィーが月影に答える。

 次に扉が開いた。


「では星辰様……」


「うん」

 またソフィーに促されて星辰のみが扉の中に入った。

 中はまるでSFに出てくる様な機械の部屋だった。割と広い。

 その中に月影が立って待っていた。


「先生」

 気づいた星辰が月影に近づく。


「きましたね。星辰君」

 月影が星辰を見て微笑むながら言った。


「うん。でも、家の地下にこんなものがあるとは思わなかったよ……」


「ここも秘密でしたから。驚いたでしょうか?」


「ちょっとね」


「星辰君こちらに来てもらっておいてなんですが、体調の方は大丈夫なんですか?」


「うん、問題ないよ。ソフィーさんも問題ないって言ってたし。先生こそ大丈夫?」


「私も問題ありません」


「そう、それなら良かったけど……」

 月影の言葉を聞いて、星辰は少し安心した様だ。


「それより、私の話を聞きたかったのではありませんか?」


「ああ、うん。でも、僕もここまで来て言うのもなんだけど本当に大丈夫?」


「大丈夫。君にとって大事な話です」


「分かった。聞かせて」


「はい」

 月影はそう言うと、少し深呼吸をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る