第7話 モードチェンジ

(数秒先の未来を予知した様ですね。やはり少しづつ能力が覚醒し始めている)

 月影も推測した。


「アルタイル、大丈夫か?」

 アクイラは自分のそばにアルタイルを引き戻して聞いた。


「問題アリマセン。マスター」

 アルタイルのダメージは思ったより軽微だった。


「く、浅かったみたい……」

 星辰が少し倒れこみ片膝をついた。


「何度も驚かせやがる。だけど、ここまでだな。さっきの蹴り効いてるだろ」

 アクイラが星辰を見て言った。


「ファミリアはマスターのエナジー。ざっくり言えば使っている奴の生体エネルギーで動いているんだ。マスターが怪我したりすると出力も落ちるんだよ」


「うう……」

 星辰が膝を地面についたまま少しうめいた。


(しかし両親が宇宙人だけあってこいつ超能力の素養があるらしいな。最初はこんな小僧をなんで欲しいのか疑問だったが、このファミリアといいどうやら思ってた以上に何かあるらしい)

 アクイラにとってここまでてこずるとは想定外だった。


「まあ、おまえが何者だろうとどうでも良い。そのファミリアにとどめを刺して終わりだ」


「く、まだまだ。こんな痛み気合で乗り越えてやる」

 星辰はそう言うと立ち上がった。だが、膝が笑ってる。


「気合とか根性なんぞで何とかなるわけねえだろ! 笑わせるなよ」


「気合と根性が陳腐だろうとなんだろうと、こうやって少なくても立ち上がれる」


「意地っ張りな奴だ。あきれるぜ」

 アクイラはやれやれとばかりため息をついた。


「ん?」

 アクイラは何かに気づいてレグルスを見た。

 また胸に文字が浮かび始めているのだ。


「これは『気合』の文字……」

 星辰もレグルスの胸を見て言った。


「またかよ。もう驚くと言うより飽きてきたぜ。それに今回は修復は無いようだな」

 だが……。

 気合の文字が消えると別の文字がレグルスの胸に浮かんできた。


「これって+(プラス)だよね? 算数とかの」


「はあ? 今度はなんだってんだ?」

 アクイラが、肩透かしをくったような声をだす。

 プラスの文字が消えると次は根性の文字が一瞬浮かび消えた。

 そして、根性が消えた後に別の文字が浮かぶ。


「次は=(イコール)……」


「なんなんだよいったい。このファミリアは?」

 イコールの文字が消えると次に最後に別の文字が浮かんだ。


「『熱血』……」

 星辰がレグルスの胸の文字を読んだ。


「あは、気合プラス根性イコールで熱血だと。はは、なんでそうなるんだよ。くくっ、人を笑わす機能でもあるじゃねえか? あはは、かるく腹筋いたいって」

 アクイラは腹を抱えて笑った。

 だが熱血の文字が表示されると、またレグルスが光り始めた。


「こ、こいつまだ何かあるのかよ。もういい。付き合ってられるか。アルタイル。このファミリアを……」

 アクイラがアルタイルに命令を言いかける途中で光は消えてレグルスが現れた。


「レグルスの形がちょっと変わってる。色も赤くなってるし。これっていったい?」

 星辰がレグレスに近づいて見上げた。


「けっ、それがなんだってんだよ。いけ、アルタイル」


「イエス、マスター」

 アルタイルがレグルスに突撃してくる。再度、レグルスをアルタイルの翼の刃をレグルスを襲った。


「ああ、もう一度、攻撃だ。レグルス」

 星辰の言葉に反応するレグルス。

 レグルスの拳が、アルタイルに掠った。


(く、このファミリアさっきより速くなっている?)

 アクイラが少しだけ焦る。


「これは……いける!」

 アクイラの動揺をよそに星辰は冷静にだった。


「この状態も分かってきた。レグルスのモードチェンジだ。レグルスの熱血モード」


「なんだそりゃあ、もうギャグだろ」


「うるさい。もう負けない」


「だからモードチェンジしからなんだってんだよ。こっちの方がまだ速ええ。アルタイル! そのファミリアを破壊しろ!」


「イエス。マスター」

 アルタイルがレグルスに突撃してくる。


(たしかにあっちの鳥の方が速い。でも、見える)

 星辰はアルタイルの数秒先の動きを予知した。


「そこだ。レグルス!」

 星辰の予知の能力でアルタイルの動きは予測されレグレスの右拳がアルタイルにクリーンヒットし派手にアルタイルは吹っ飛んだ。


「な、なんだとアルタイルが……」

 アクイラが茫然とする。


「馬鹿な、あのファミリアはなんなんだ」

 その様子を見たウルラが少しだけ驚いた様に言った。


「さあ」

 ウルラの言葉を聞いていたのか月影が答える。


「やっぱり、あんたは思った以上に色々知ってるみたいだね」

 ウルラが月影をにらむ。


「知っていても言いませんが」


「ちっ」

 ウルラは、また後ろに飛んでアクイラのもとに近づいた。


「姉さま。ここは引こう」


「なんだと、このまま引き下がれってのか?」


「そうそう、もう帰った方いいんじゃないですかね?」

 月影が二人の話に割って入った。


「あん?……!」

 月影に話しかけらたアクイラとウルラは月影の方を向くと、何かに気づいてその場を咄嗟に離れた。二人に襲い掛かる人影があったからだ。


「なんだ、こいつら?」

 人影の攻撃を避けたアクイラが言った。


「紅鏡家のメイドさんです」

 月影が説明した。


「メイド? メイドって使用人だよな。そんな奴にあたしが……」


「甘く見ない方がいいですよ。とっても強いですから」

 月影がアクイラに声をかける。

 その間にストレートの黒髪のメイドが、アクイラに拳を突き出した。

 バシッと共にアクイラはその拳打を受け止めた。


「あら、宇宙人と言うからどんな方かと思ったらかわいい女の子じゃないですか」


「な、なに言ってんだ、こ、こいつ」

 かわいいと言われたせいなのか、アクイラは顔を赤らめて少し動揺した。


 その頃、ウルラは別の欧米人と思われるメイドと対決していた。

 メイドは警棒を持っており、その警棒でウルラに殴りかかった。


「随分とうちの星辰さまと月影さんをかわいがってくれたようですね」

 警棒をサーベルで受けるウルラ。


「こいつら」

 ウルラが少し険しい顔で、そのメイドをにらむ。


「桜さん、ソフィーさん」

 星辰がメイドたちの名前を呼んだ。


「星辰ちゃん、こっちに」

 別のメイドが星辰の横に来て言った。こちらはアフリカ系女性だ。


「エレナさん。でも……」

 星辰は声をかけられた方を向いた。


「桜とソフィーなら大丈夫だって」

 エレナと星辰に呼ばれたメイドが言った。


「そうです。あちらは二人にまかせて、星辰さんはこちらへ」

 さらにもう一人、褐色の肌で長身のメイドが星辰を促した。


 その間、桜とソフィーのメイド二人はアクイラとウルラをおいこんでいた。

 お互いの背中を預けながらウルラがアクイラに話しかけた。


「姉さまこいつら、地球人にしてはやるよ」


「あの眼鏡。こいつらをいつの間にか呼んでて、時間稼ぎのためにあたしの話乗りやがったな」


「だから、やめとけって言ったのに」

 ウルラが飽きれた様にアクイラを少しなじった。


「分かったよ。謝るって」

 アクイラがバツが悪い様に言う。


「しょうがねえ。お前の言う通り、ここは仕切り直しだ」


「分かったよ。姉さま」

 二人の足が地面から離れる。あっという間に地面から離れた。


「逃げるのですか?」

 ソフィーと呼ばれたメイドがアクイラをあおった。


「うるせーな」

 アクイラが吐き捨てる様にいった。


「おい、小僧」

 空に飛んだアクイラが星辰に話しかける。


「小僧じゃない、星辰だ。紅鏡星辰」


「星辰。今日は油断した。次はこうはいかねえからな」

 アクイラはそう言うと空の向こうに飛んで行った。ウルラがその後ろについて飛んでいく。


「あ、いっちゃった……」

 星辰は見送る様に二人を見ていた。


「あ……」

 二人が消えると星辰は、そのまま倒れた。


「星辰ちゃん!」

 エレナが駆け寄り、星辰の仰向けにして頭を抱える。

 そこに月影が駆け寄る。


「どうやら気を失った様です」

 シルビアも星辰に近づき、星辰を見て言った。


「月影さんも、お怪我は大丈夫ですか?」

 近づいてきたソフィーが月影を案じて言った。


「私は大丈夫です。あなたの方でも星辰君を見ていただけますか?」


「承知しました」

 ソフィーは少し頭をさげると、次は星辰のそばに近づていった。


「シルビアさんは、ソフィーさんと一緒に星辰君を見てください」

 月影がシルビアに命令をくだした。


「はい」

 花里を抱えているソフィーが花里を抱えたまま少し頭を下げた。


「桜さんとエレナさんは、後続の人たちと共に後処理をお願いいたします」


「はい」

 桜とエレナも同じく返事をすると頭を下げた。


(これから、本当に忙しくなりそうですね……)

 月影は少し難しい顔すると眼鏡を取った。すでに日は暮れていた。

 これが、星辰とアクイラの初めての出会いであった。

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