蒼き星の子と機械仕掛けの獅子王レグルス

第６話 予知

「レ、レグルスが……」

　レグルスの惨状にあっけにとられる星辰。

「ぐ、ツバンも」

　月影は立ち上がりながら言った。

「そのファミリアは結構やっかいそうだから、動けなくさせてもらったよ」

　アクイラが地面に降りてくる。

「星辰君には手を出させん」

　月影が近づいてくるアクイラの前に立ちはだかる。

　だが次の瞬間、横から来た影に襲われ無理やり星辰と引きはがされた。

「くっ」

　月影の服が軽く切り裂かれる。

「あんたの相手は私だよ。先生さん」

　そう言うとウルラは、持っているサーベルで月影を切りつけてきた。

「むう」

　月影も空間から剣を出して応戦する。

「へえ、怪我してるのに良い動きだね」

　ウルラが感心した様に言った。

（腕力と動きが少女のそれではない）

　鍔迫り合いの中、月影は思った。

「ウルラをなめるなよ。そこらでのびてる雑魚よりやるさ」

　アクイラが言った。

　月影とウルラが何度か剣を交える。

　剣と剣が合わさる時に金属音が周辺にこだました。

「ねえさま。こいつ結構強いよ。怪我が無かったら私でも後れをとるかも」

　何度か剣が交差したのち、ウルラはジャンプしてアクイラのそばに来て言った。

「そこまでか……少し、急ぐか」

　星辰に近づくアクイラ。

（どうすれば……）

　星辰はアクイラとレグルスを交互に見た。

　アクイラが星辰の前に立つ。

　並んでみると、アクイラの方が女性でありながら星辰よりも体格が大きい。

「悪い事言わない大人しく捕まりな」

「君に捕まると僕はどうなるの？」

「宇宙の犯罪組織アルゴルってのに引き渡す。まあ、死にやしないさ。大事されるだろうよ」

「でも犯罪組織なら、レグルスと僕は多分悪いことに加担されるんだよね」

「そうだろうな。だったらどうする？」

「そんなの絶対に嫌だ！　だから君と一緒に行かない」

　拒否する星辰。しかし、拒否する言葉を発した瞬間に腹に衝撃が走り後ろに吹っ飛んだ。

「ぐうう」

　腹を抑えてもだえる星辰。アクイラに腹を蹴られた様だ。とても少女の蹴りとは思えない。

「星辰君！」

　月影が叫ぶ。

「おっと、まだ私と遊んでもらうよ」

　ウルラのサーベルが月影を襲う。

「くう……」

　サーベルを持っている剣で受け止める月影。ウルラの相手で手いっぱいだった。たしかに先ほどの宇宙人どもより格上である。

「大人しくしな。あんまり痛めつけるつもりはないんだ。さっきも言ったように、そんな粗末には扱われないさ」

「そんなことは別にいいんだ。ただ、僕は悪いことは嫌なんだ！」

　星辰はそう言うと立ち上がった。

「こりゃ驚いた。根性だけは大したもんだね」

　だが、立つのがやっとだった。

「はあ、はあ……」

　星辰の息が激しい。

「諦めな。だから……ん？　なんだ？」

　アクイラがしゃべろうとした時、半壊しているはずのレグルスの異変に気付いた。

「この文字は『根性』？」

　星辰がレグルスを見てる。半壊したレグルスのまた胸のあたりに根性の文字が浮かんでいた。

「なんだなんだ。こいつに反応して、またパワーアップしたってのか？　でも、今更……」

　アクイラが少しだけ驚いた様に言った。

「いや、これは……」

　月影がレグルスの様子が何かおかしい事に気づいた。半壊したレグルスが急速に修復・再生を始めていたのだった。

「なんだと！　このファミリアこのスピードで自己修復と再生をしてるだと！」

　アクイラが驚いて声をあげた。

（ファミリアには自己修復する機能があるものもあるけど……）

　ウルラもレグルスの自己修復のスピードに驚きを隠せなかった。

「なんとなく分かってきた。これがレグルスの力なんだ！」

　星辰が叫ぶように言った。

「この小僧。調子に乗るなよ。ファミリアを使う必要もないと思ったが、しょうがねえ。サモン、ファミリア」

　アクイラの手にグローブが出現され、空間からファミリアが召喚された。なんとなく鷲を思い起させる形状をしている。

「アルタイル。あのファミリアを破壊しろ、ただし心臓部だけは残すんだ」

「イエス、マスター」

　アルタイルと呼ばれたファミリアが返事をした。ツバンよりも女性的な声だ。

　命令を受けたアルタイルがレグルスに襲い掛かる。

「く、負けるな。レグルス」

　レグルスも向かってきたアルタイルに対して拳を突き出す。

「甘えよ」

　アルタイルはレグルスの拳をあっさり避けて、そのままレグルスを攻撃した。翼が刃物の様になっている。

「は、早い」

「当たり前だろ、そんなどんくさい奴に鳥が捕まえられるか？　自己修復できないくらいまで破壊してやるぜ」

　アルタイルは恐るべき速さでレグルスの周りを動いてレグルスを切り刻んだ。

「く、どうすれば……あれ、これって……」

　その時、星辰が左目を不意に抑えた。

「これは？」

　左手を話して、目をあけてみる。

（どういうこと？　見える。あのアルタイルっての先の動きが……）

　自分自身にも分からないが、星辰にはアルタイルの数秒先の動きが見えるようだ。

「よーし、これなら！　レグルス、右の方向に殴れー」

　レグルスが右の方にぐるりと向くとそのままの勢いで左拳を突き出す。

　拳はレグルスの右側から襲い掛かろうとしていたアルタイルに当たった。

　アルタイルが吹っ飛ぶのが見えた。

「なんだと！」

　アルタイルが吹っ飛ぶ様に驚くアクイラ。

「あいつ、予知能力か？　まさか……」

　ウルラも驚いて星辰を見た。