2章 第2話 真相

「さて、どこからお話しましょうか……」

 月影が少し考える様に言った。


「うーん、聞きたいことがいっぱいあるけど……まずは、あのアクイラって女の子が言っていた、僕が宇宙人って言うのは本当?」


「……そうですね。アクイラが言っていたことはおおむね本当です。ただ、厳密にはご両親が宇宙人で、星辰君が生まれた国は日本で間違いありません。戸籍も日本にあり。戸籍上は日本人です」


「僕の両親が宇宙人……アクイラもそんなこと言ってたっけ」


「はい。あの少女が言った様にあなたのご両親は宇宙人です。最近声が聞こえたり昨日の戦いで相手の動きが見えたのは、おそらくご両親から受け継いだ超能力でしょう」


「超能力? そんなものが僕にあるなんて……でも、そうでもないと説明がつかないかな……」

 星辰が思わず自分の両の手のひらを見た。


「ただ、訳があって、お二人とも地球に来ることに……」


「どんな理由で地球に来たか聞いても良い?」


「はい。星辰君のお父上は、銀河連邦の警察官でした」


「銀河連邦警察なんてあるんだ。本当に漫画みたい」


「はは、そう思うのも無理はないですが、本当です」


「話の腰をおっちゃったね。ごめんなさい。続けて」


「いえ、今言ったようにお父上は銀河連邦の警察官です。大変優秀な方でした」


「そうなんだ。先生はその頃のお父さんを知ってる感じだね」


「ええ、星辰君のお父上の部下でした」


「え、そうなんだ。そういえば、先生も宇宙人だったよね?それもびっくりしたなあ」


「それは秘密にして申し訳ありません」


「ううん。いいよ。聞いても信じられなかったと思うし……あれ先生って、随分と若いころから宇宙の警察官だったってこと?」


「そうです。私が警察官になったのは十代のころ、今の星辰君くらいのころでしたかね」


「そんな早く警察官になれるんだ?」


「まあ、宇宙は地球と色々と常識などが違いますし、飛び級みたいなものです……いや少し話がずれました。すみません」


「ううん。また僕のせいだよ……話を続けて」


「では。あなたのお父上ですが優秀な方でした。多くの宇宙の犯罪組織を壊滅させております」


「へえ、すごいや」


「ですが、優秀すぎた。彼は犯罪組織に目の敵にされる様になりました」


「たくさん犯罪組織を壊滅させたから?」


「そう。犯罪組織からすればにやられる前にやれ。っと言ったところでしょうか……。壊滅された犯罪組織の残党の連中からも恨みで付け狙われました。さすがのお父上も危険を感じ、やむをえず星辰君のお母上と共に逃走したのです」


「それで地球に?」


「はい、ただ地球に来たのは偶然です。乗っていた宇宙船が犯罪者どもの襲撃でガタが来ていたのでしょう。地球の近くまで来た時に故障して日本の紅鏡家が所有してた土地に不時着しました」


「日本の紅鏡家の敷地……」


「はい。その時、紅鏡家と縁ができました」


「……」

 星辰は黙って聞いている。


「旦那様。星辰君のおじい様は、お父上とお母上を保護した後、養子にされ日本の国籍もお二人のために取得されました」


「そうすると、僕の本当の両親とおじいちゃんは本当は血のつながりはないってことだよね?」


「……はい」

 月影は少し言いにくそうに答えた。


「そうなんだ……そうだよね。言われてみるとおじいちゃんも宇宙人な訳ないか……」

 星辰は少し考え込んだ。


「旦那様にはご子息とご子息の細君がいらっしゃいましたが、宇宙船が不時着する前に事故でお亡くなりになっております。お二人に星辰君のご両親を重ね合わせたのかも知れません」


「その亡くなった二人が、お姉ちゃんの本当の両親?」


「はい。ですので、旦那様と菖蒲さんは星辰君とは血のつながりは……」


「そうか、そうなんだ……」

 これには星辰も少しショックだったようだ。


「血のつながりはないかも知れませんが、お二人は星辰君のことを本当の家族と思っておりますよ」


「うん。分かってる……続きを聞かせて」


「紅鏡家の一員になったお二人にとって地球での生活は平穏でした。地球は辺境で銀河の中心部から離れていたため犯罪組織もお二人がどこにいるのか見失い追撃の手を振り切った様です」


「……」


「しかし、ある日ひとつの懸念が見つかりました」


「懸念?」

 星辰が少し怪訝な顔で聞いた。


「地球に特殊な金属があることが、お二人の調査で分かったのです」


「特殊な金属?」


「オリハルコニウムとアダマンニウムと言う金属の元になる原石が地球で見つかったのです」


「オリハルコニウムとアダマンニウム?また、漫画みたいな名前だね……」


「このオリハルコニウムはファミリアに使われ、アダマンニウムは宇宙船のワープに使用される金属です」


「それが地球で見つかったの?」


「はい、二つとも地球ではただの石ころくらいの価値なのですが、宇宙にある技術で加工すると、今言った金属に精製することができます。地球の言葉で言ったらレアメタルといったところでしょうか」


「そ、そんな貴重な金属が地球にあるの?」


「ご両親が調査して、かなりの量が存在すると推測されました」


「それが懸念材料ってこと?」

 星辰はピンと来ていない。


「地球にその二つの金属があると、宇宙の犯罪組織にばれると……」


「あ、そうか、そいつらが地球に来るかも」


「そうです。彼ら犯罪組織の中には、星ひとつ破壊する組織。民族すべて根絶やしにした組織もあります」


「そ、そんなこともできるの犯罪組織が?」


「残念ながら、犯罪組織と言うより軍隊と言った方が良いかも知れません。星ひとつ滅ぼせるほどの。その犯罪組織には、星を数個支配している組織もあるほどです」


「そんなやつらが地球に貴重な金属があると知ったら……」

 星辰の顔が少し青ざめる。


「大挙して地球に押し寄せるかも」


「そんなのだめだ」

 星辰が少し強く言った。


「そうですね。お二人にとって地球は第二の故郷でした。地球を守りたかった。そこでお二人は地球を守るために一つのファミリアの製造に取り掛かりました」


「それって……」


「そう、レグルスです」

 月影はしずかに答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る