第3話 機械仕掛けの使い魔

 月影の目の前に現れたロボットは全長は二~三メートル前後くらいになるだろうか。


(何もないところからロボットが出てきた?どういうこと?)

 星辰はそのロボットを凝視した。


「がっはっは。ファミリアだ。小僧一人にファミリアを使うことはないと思っていたが、念のためもらっておいて良かったぜ」

 獄卒が笑う。


「おい、お前らもファミリアをだせ」


「へい」

 獄卒の命令で、周りの怪物たちもファミリアと呼んでいる機械の人形を出した。怪物たちは腕にアームガードの様なグローブが装着している。


「この人数にファミリア。勝ったも同然だな」

 獄卒が勝ち誇った様に言った。


「やれやれ。チンピラはどこも同じようですね」

 月影はそう言うと右手を前にかざした。すると地面に落ちている複数の石や木の枝が空中に浮かびあがる。


「なんだと!こいつ、サイコキネシスを!」

 獄卒が気色ばんだ。


「むん」

 次の瞬間、空中に浮かび上がった石や木の枝が飛び散り月影の周りにいた怪物どもに勢いよくぶつかった。


「ぎゃああ」

 石や木の枝がぶつかり悶絶する怪物たち。


「ええ、先生っていったい……」

 星辰が驚きの声を上げる。

 次に月影の腕が急に光を発した。気が付くと、月影の両腕にアームガードの様なグローブが装着されていた。


「あれって、あいつらと同じ……」

 星辰が、また驚いて月影のグローブを見ている。


「サモンファミリア」

 月影はそうつぶやくと空間から、怪物たちが使っている機械の人形とは形状が違うが機械が出現した。人形と言うより竜の様な造形をしている。


「な、こ、こいつファミリアを持ってるぞ!」


「な、なんで、地球人がファミリアを……」

 怪物どもに動揺が走る。


「行け、ツバン。奴らのファミリアを蹴散らしてこい」


「イエス、マスター」

 呼び出された竜が、月影の命令に答える。いかにも機械がしゃべっている印象だった。

 ツバンと呼ばれた機械の竜が、怪物どもの機械の人形に襲い掛かる。


「ち、ちくしょう。おい、あのファミリアを破壊しろ」

 怪物たちも自分のファミリアに命令をくだした。

 しかし、月影がだした竜に蹴散らされた。


「先生がだした竜みたいなの強いや……あ、あぶない!」

 気が付くと、怪物どもの人形の一体が月影を襲った。

 しかし、月影は動じなかった。

 月影に近づいたファミリアは弾かれた。


「ちくしょう、やっぱりフィールドがありやがる!」

 怪物の一人が悔しそうに叫んだ。


「あれ、先生の周りにバリアみたいなものがある?」

 星辰たちの周りにうっすらと幕の様なものが見える。

 だが、


「!」

 月影は何か気づくと、立っていた場所からふいに離れた。

 そして、次の瞬間には地面が割れた。

 何かが爆発した様な衝撃だった。


「うわああ!」

 その衝撃で星辰が乗っている車がひっくり返った。


「星辰君!」

 さすがの月影も、この状況には慌てて星辰の乗っている車に駆け寄った。

 

「くう……」

 星辰は車のドアをなんとか開けて、そこから外に出ようとしていた。


「無事でしたか?」

 車から這い出ている星辰に月影が声をかけた。


「な、なんとか……」

 返事をする星辰に月影は、少しだけほっとしたような顔する。


「ふん、ファミリアまで持っているとは油断したなあ」

 どすどすと足音をして、獄卒が星辰と月影に後ろから近づいてくる。

 星辰はまだ半身は車の中だ。


「な、でかい……」

 近くで見るとと、獄卒の巨大さが分かった。

 さらに獄卒は人間では、持つだけでも苦労しそうなハンマーを持っていた。


「ファミリアを使うなら知ってるよな。フィールドは近接武器は通す事をなあ」


「フィールド?」


「ファミリアを出しているときにマスターの周りに出てるバリアみたいなもんだよ。ファミリアの攻撃や飛び道具は気かねえが、こういうハンマーみたいなものは通すんだよ」

 獄卒が言った。


「え、そうなの?」


「……それは……そうですね」

 月影は星辰の疑問に答えた。


「だから、そいつはさっきの攻撃を避けたのさ」

 獄卒も話入る。


「そういえば……。でも、それだと……」


「このハンマーでつぶせるってことだよ。つぶれろやああ!」

 獄卒はそう言うと持っていたハンマーを振り上げた。


「星辰君。もう一度車の中に隠れて!」

 月影が叫ぶ。


「うわあああ!」

 もう一度、車の中に入った星辰が叫んだ。

 それと同時に獄卒のハンマーが振り下ろされた。


「ちいっ」

 月影が振り下げられたハンマーを避ける。

 そのハンマーが地面に刺さり、その衝撃で地面が割れた。

 星辰の車も、その衝撃で地面から一度浮いて地面にたたきつけられた。


「な、なんて威力……」

 星辰がその衝撃に驚く。


「と、とにかく、外に……」

 車から再度這い出る星辰。今度はなんとか全身を出して立つことができた。


「月影先生!」

 星辰と月影の今いる位置にはある程度の距離があり。星辰は大きな声を出して月影に呼びかけた。


「大丈夫ですよ。星辰君」

 月影は星辰にニコッと笑顔を見せた。


「そうかな、超能力が使えたりファミリアを持ってたりしたのはすこし驚いたが、この数にはかなうまい」

 この獄卒は見かけによらず冷静だった。

 数は減っているが、それでも周りにはまだかなりの数の敵がいた。


(数による力業か。単純だが、たしかにやっかいですね)


「分かったか。もう一度言うさっさと小僧を置いてうせな。そしたらお前は見逃してやる」


「くどいですね。お断りします」

 月影はきっぱり言った。


「俺は優しいで言ってるんだぜ、この優しさがわからんかなあ」

 獄卒はにやりと笑った。


「おまえたち犯罪者の言葉を誰が信じる」


「ふーん、あっそ。じゃあまずはおまえを先に殺しにしてやるよ。おいお前ら、まずはこの眼鏡を殺せ!」


 獄卒は周りの怪物たちに命令した。怪物たちが武器を持ち月影に襲い掛かる。


「ツバン、戻ってこい。星辰君はどこかに隠れていなさい」


「で、でも……」

 星辰が答える間もなく、怪物どもは雄たけびをあげならが月影に襲い掛かってきた。


「はッ」

 襲ってくる怪物どもを月影とツバンが撃退していく。


(でも、あいつら数が多いし、このままだと、先生がこいつらに殺されちゃう……)

 月影は強いが、この様子を見て星辰は焦っていた。


(うちの使用人の人たちを電話で呼ぶ? 駄目だ、逆にみんな殺されちゃうよ。警察? 警察でもあいつらに勝てるのか? それに信じて貰えるかどうか……)


「でも、どうすれば……あッ」


 月影が怪物の一人に殴られた。手には金属のこん棒の様な物を握っており、それで殴られたのだ。やはり数が多い。


「ぐっ」

 月影が膝をついた。


「ぐへへ、とどめだ!」

 月影を殴った怪物の一人が、持っているこん棒を振り上げた。

 殴られたら、おそらく致命傷になる。


「あッ、この、やめろおおお」

 星辰は気が付いたら走り出して、こん棒を持っていた怪物に体当たりした。


「ぐ、この……」

 体当たりの衝撃で怪物がよろめく。

 次に星辰は月影をかばうように、月影の前に立ちはだかった。


「星辰君。危険です。後ろに下がっていなさい!」


「だめだ! このままだと先生が殺されちゃうよ。それにあいつら僕を狙っているんだよね。だったら僕を殺すことは出来ないはずだ」


「なるほどな。確かにお前を殺したら金が貰えねえが、殺さない程度に痛めつけることはできるんだぜえ」

 月影を殴った怪物が言った。


「やってみろ!」


「星辰君、よせ!」


「こんな大勢で先生一人を襲う連中なんかに負けてられないよ。こいつらは弱虫だ」


「なんだとお。じゃあ、やってやろうじゃねえか!」

 月影を殴った怪物が、持っているこん棒で星辰に殴りかかった。


「星辰君!」

 月影が叫ぶ。


「くっ」

 星辰は目をつぶった。

 だが。

 次の瞬間には、吹っ飛ばされているのは星辰を殴ろうとした怪物の方だった。


「ぐ、ぐうう……」

 怪物は衝撃で意識を失った。


「あ、あれ、どうなってるの?」

 目をあけた星辰が気絶した怪物を見て唖然としていた。


「これは、レグルス……」

 月影は別の意味で驚いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る