第4話 レグルス
「これって……」
星辰が月影の見ている方を見ると、一体の機械のライオンが星辰の横におり、そして、星辰の腕には月影がつけているグローブがいつの間にか装着されていた。
「あ、ありゃあ、別のファミリアか?」
怪物たちが、うろたえる。
(星辰君が無意識に読んだのか? それともレグルスが星辰君を守るために現れた? もしくはその両方?)
月影も、さすがにこの状況には少しだけ困惑した。
「おまえら動揺するんじゃねえ。あれはターゲットのファミリアだ。あいつらにあれも持ってこいって言われてただろうが! 逆に探す手間が省けたぜ」
獄卒が怪物たちを一喝する。
「そ、そうか、これがあのファミリアか……だ、だけどよ。あれ、実物をみると強そうじゃないか?」
「うん、なんか見たことないタイプ……」
「おい、おまえがいけよ……」
「うるせえ、早く捕まえろ!」
獄卒がはっぱをかけるが、全員押し付けあって誰も先陣を切らない。
「これは先生とあいつらが使ってたロボットだよね。なんでだろう。初めてなのに、こいつの名前と使い方が分かる……」
星辰がレグルスに右手で触れながら言った。
「な、なんだと。こいつ本当かよ」
怪物たちが、また動揺する。
「よーし、だったら……」
星辰が怪物の方を右手の指でさした。
「あいつらをやっつけてこい!」
星辰が、勢いよく叫ぶ。
「う、うひいいい」
怪物たちが、星辰の声を聞いて恐れおののく。
「って、あれ?」
機械の獅子が反応しない。
「ど、どうなってるの?」
拍子抜けした様に星辰が言った。
「星辰君。このレグルスには人間で言う心があります。でも、赤ん坊の様な状態なんです。なので命令の意味が分からないのかも」
月影が星辰の横に来て説明した。
「心? 赤ん坊? なんかよくわからねえが、助かったのか?」
「へっ、また驚かせやがる。だが、それならでくの坊だなあ」
獄卒がほっとした声を出した。
「でもよ、だったらそんなものアルゴルの奴ら、そんなファミリア欲しがるんだろうな?」
怪物たちが、ガヤガヤとしゃべり始める。
「そうか分かった。いや分かる。お前に心があることを。言葉だけじゃなくて感じる」
「な、なに言ってんだ。この小僧」
怪物の一人が言った。
(いや、星辰君ならレグルスの心を感じることが出来るかも知れない……)
月影は推測した。
「そうか、怖かったのか。ごめん」
星辰が右手をライオンに添えて語りかけた。
「でも、あいつら悪い奴なんだ。だから、あいつらをやっつけるために力を貸して。心があるならおまえにも勇気はある。勇気が無いんじゃない。勇気を出してないだけなんだ。お前の心にも必ず勇気があるんだ」
星辰は目の前のライオンを激励した。
「なんだあ、ファミリアになんかくだらないこと言ってるぞ。頭がおかしくなったんじゃあねえのか?」
「ファミリアってのは機械だぜ。何言ってんだ。あいつ」
怪物の一人がそう言うと大きな声で笑った。それにつられたように周りの怪物たちも一斉に笑う。
彼らからすると星辰の言っていることは綺麗事以下のくだらないものだった。
だが、その瞬間。
機械のライオンが光る。
「これは……」
星辰が驚き目を見開く。
光が徐々に消えていく。そして、消えた後のライオンは人型へと変形していた。
「な、なんだあ、変形したあ」
これには怪物どもが驚いた。
「ば、馬鹿やろう。変形するファミリアなんぞ、吐いて捨てるほどあるだろうが! それにそいつはでくの坊だろう」
獄卒が怪物どもをまた一括する。
しかし、次の瞬間には人型となったレグルスの胸のあたりだけ再度光り、今度は文字が浮かび上がった。
「なんだなんだ、なんか文字が浮かんでるぞ」
「これって、漢字の『勇気』だよね?」
星辰もあっけにとられていた。
たしかにレグルスの胸のあたりに『勇気』の文字が表示されていた。
(もう、レグルスの成長させるとは……)
月影だけレグルスに何が起きているのが知っているのか、
「分かる。分かるぞ、お前パワーアップしたんだな」
星辰も状況を把握し始めていた。
「は、はあ? パ、パワーアップだと。あれだけで?」
怪物たちが、半ば呆れた様に言った。
「よーし、これだったら。あいつらをやっつけろ!」
星辰がレグルスに命令をくだした。レグルスがゆっくり動き出す。
「う、うわああ、動いた」
怪物たちは動くレグルスを見て、慌て始めた。
「あれだけで、パワーアップなぞするわけねえだろ! そのファミリアを動かなくなるくらいにやっちまえ!」
獄卒も号令する。
「そ、そうだな。あんなことでパワーアップするわきゃねえ!」
「お、おう! この人数なら動けなくするくらいは……」
獄卒の号令に、怪物たちが答えて襲い掛かってきた。
「やってみろ! レグルス、お前ならいける!」
雄たけびをあげる怪物どもにレグルスは突撃した。
レグルスの機械音は、まるでうなる獣の様に聞こえた。
「うぎゃあああ!」
レグルスが勢いづく怪物立ちを簡単に蹴散らした。
怪物どもの声が叫び声が響く。
「レグルス、そのファミリアって機械も破壊しろ!」
レグルスが怪物が使用しているファミリアを攻撃を開始する。
「ツバン。いけ。レグルスをサポートしろ」
月影が、そばに来ていたツバンに命令を与える。
「イエス、マスター」
命令を受けたツバンがレグルスに加勢する。
あっという間にレグルスと共に怪物どもの残っていたファミリアが全て破壊された。怪物たちも二体のファミリアの攻撃で全員、気を失った。
「なんだと!?」
子分の怪物どもが全員やられてしまい獄卒は驚愕した。
「おい、もうお前だけだぞ!」
星辰が獄卒を右手で指さした。
「こ、このクソガキがああ」
獄卒が激昂して襲い掛かってきた。
「レグルス、そいつが最後だ。やっつけろ!」
「こんなファミリアなんぞ!」
獄卒がハンマーを振り上げ、レグルスに向かって勢いよくハンマーが振り下ろされる。
しかし、気が付くとそのハンマーをレグルスが奪った。
「な、いつの間に、この野郎おお」
獄卒がハンマーを奪い返そうとレグルスに襲い掛かるが、レグルスがハンマーをそのまま持ち替えて獄卒をそのハンマーで横殴りした。
「ぐはああッ」
殴られた衝撃で獄卒が吹っ飛ぶ。
次にレグルスはハンマーをそのまま振り上げた。
「うひゃあ、お、お助けー!」
獄卒が叫ぶ。
「だめだ!」
ハンマーが獄卒に振り下ろされた時、星辰が叫んだ。ハンマーが獄卒に当たる寸前に止まる。
「ぐうううぅ」
うめきとも叫びとも取れない情けない声を出して獄卒は気を失った。
「それで殴ったら、そいつ死んじゃうよ。悪い奴でも、そんなに簡単に殺しちゃ駄目だ。悪い奴でも生命なんだ。殺すのは本当に最後の手段だ。まずは捕まえて罪を償わせるんだ」
星辰が言うと、レグルスは静かにハンマーを地面に捨てた。
そして片膝をついた状態から、ゆっくりと立ちあがる。
「そうだよ。それで良いんだ」
星辰がレグルスに話かける。
(まるで、星辰君のお父上を見ている様だ……)
怪我をしている月影は地面にかがんでいる状態から星辰をま少しぶしそうに見上げた。
するとレグルスの胸がまた光って文字が表示された。
「今度は『生命』って表示されたけど、これっていったいなんなんだろう?」
レグルスの胸の文字を見て、星辰が首をひねる。
「それは後で説明しますよ」
月影が星辰のそばにきて言った。
「あ、先生。そういえばレグルスのこと知ってる口ぶりだったね?」
「はい」
「それに、こいつらなんだったの?僕を狙っていることと言い、分からないことだらけだ……先生も超能力みたいなのも使ってたよね?」
「それは……落ち着いたら必ず説明いたします。まずは帰りましょうか」
「そうだね。確かにもう疲れたかな」
「これだけ色々あったら、そうでしょう」
「そういえば、こいつらどうしよう?気がついたら悪いことしないかな?」
星辰は気を失っている怪物たちを見た。
「少々お待ちください。ツバン来い」
ツバンが月影のそばにもどってくる。
「はああ……」
月影が力をこめる様に右手を前に出すと、植物の根が地面から生えて怪物どもに巻き付いた。
これがロープの役割をなりそうだった。
「ええ、すごいや……」
「植物を生み出すツバンの能力です。動いているときは、使うのが難しいですが、今の状態ならこういう風に使うこともできます。この連中もこれはそう簡単にほどけませんよ」
「へえ、この機械、ファミリアって言うんだっけ。そんなことできるだね?」
「いろんなタイプのものがあるので、全部ではありませんがね。とりあえず、これでどこかに行って悪いことはできないですよ」
「そうか良かった。そういえば殴れたところは大丈夫?」
「なあに、大丈夫ですよ」
「そっか、それなら良かった」
星辰はほっと息をついた。今日は本当に色々ありすぎた。日もいつの間にか落ちている。
「おい」
不意に後ろから声をかけられた。
二人がとっさに後ろを振り返る。
「お、女の子?」
声がした方を見ると二人の少女が立っていた。
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