第11話 ヒュェルリーンのアドバイス
ヒュェルリーンは、商会のトップを支える筆頭秘書であり、優先順序を間違える事が有ってはならない立場なので、アイカユラの話に興味は有ったが、当面は、ジューネスティーン達のパワードスーツの製作になる事を忘れてはいない。
「外装骨格の量産化は、今のジュネス達のパワードスーツを送った後になるわね。きっと、ジュエルイアンの許可も下りるでしょうから、予算を取れるようにしておくわ。商会は利益追求をする為にあるから、開発費は利益の中から捻出しなければならないわ。その辺が国家予算とは違うところかしら」
ヒュェルリーンは嬉しそうに答えると、聞いていたアイカユラは、飛び上がりそうな程舞い上がっていた。
自身の提案した外装骨格の使い道について、ヒュェルリーンが興味を持って接してくれた事がとても嬉しかった。
その様子をヒュェルリーンは満足そうにした。
「早めにジュネス達のパワードスーツの完成を急いでおいてね」
そこまで言うと少し鋭い目をした。
「それと、前のような過重労働はダメよ。時間を使うのではなく、作業の効率化を見てあげるの。一歩下がった所から見てアドバイスをしてあげてね。エルメアーナは、作る楽しさに集中しているから気がついてない事も多いはずよ。最初に作ったジュネスのパワードスーツの作り方を学んでいるから、あなたのような目線で見た事を話したら、エルメアーナには製作する時のアイデア、そのヒントになる事もあると思うわ」
アイカユラは、一瞬、初めて店に来た時の話を思い出してギクリとするが、根に持って話しているのでは無いと感じるとホッとしたような表情で聞いていた。
「今は、まず、ジュネス達にパワードスーツを送る事に専念ね。エルメアーナに余計な仕事をさせないために箱の構想を考えてくれて良かったわ。それに箱の構想が決まっているなら、今の1台を完成させた後に全体重量の半分程度と考えればいいわ。外部装甲を外した後に胴体から左右の手足は外して、梱包するなら胴体が一番重くなるでしょうけど、胸と腰のパーツに両開きの背骨でしょ。案外、両足の方が重くなってしまうかもしれないわ」
その説明を聞いてアイカユラは納得するような表情をした。
(そうよね。箱なのだから、多少重量が変わったとしても、過剰品質にさえならなければ良いのよね。胴体、手足とグラム単位で計算する必要が無いなら、30キロなのか100キロなのか、誤差の10キロや20キロなんて構わないのか。多少、サバをよんでも構わないという事なのね)
ヒュェルリーンは、アイカユラの表情を面白そうに何を考えているのか分かっているという表情で見ていた。
「その様子なら、梱包箱の業者と打ち合わせを行なっておくといいわ。私の方で、手配しておくから、店で打ち合わせしておきなさい」
その言葉にアイカユラは驚いた。
「えっ! この店でですか?」
(大丈夫なの? 外部には秘密のパワードスーツを組み立てているのに、ここへ関係無い人を呼ぶの?)
アイカユラの様子を見ていたヒュェルリーンは、平気な表情で笑顔を向けた。
「ええ、そうよ」
ヒュェルリーンの言葉にアイカユラは驚いたように聞き返したが、ヒュェルリーンは当たり前だという表情をした。
アイカユラには、その理由が見えてこなかった。
「あ、あのー、工房にあるパワードスーツは、どうするのでしょう?」
ヒュェルリーンは、一瞬、何の事だと思ったようだが、その言葉の裏を考え理由が見えてきたように苦笑いをした。
「何言っているのよ。そんなの見せるわけ無いでしょ」
その返事にアイカユラはしまったという表情をして両手で頭を抱えた。
(しまった! 箱の内寸と重量を言うだけで箱は決まる。固定用の梱包材だっておおよその事を言えばいいのよ。中に入る物を見せる必要なんて無い! それだったら、工房に入れずに店舗の中だけで話をしてしまえばいい。中に入れる物はフルメタルアーマーだとでも言っておけば良かったのよ! あー、私って、なんて浅はかな考えしかできないのかしら!)
自分の考えに苛立つような様子をすると、ヒュェルリーンは面白いというようにアイカユラの様子を見ていた。
(あらま、いいセンスなのに、やっぱり、経験不足なようね)
ヒュェルリーンは、アイカユラの様子を見てから笑顔を向けた。
「店の奥のリビングや工房で打ち合わせを行う必要は無いでしょ。この店の中で済ませるのよ」
店の奥にあるテーブルを指差すので、アイカユラも見て納得するように頷いた。
(まだ、若さが残っているわ。気付けなかったけど、私と話をしていたら気が付けたみたいね。これで、もっと広い視野で物事を見れるようになりそうね)
その様子をヒュェルリーンは嬉しそうに見ていた。
「今まで、外部の業者に製造を依頼するなんて無かったわね。製造も材料の購入も同じよ。必要な物と量を、期限を決めて発注するだけよ。材料の手配と違うのは相手の持っている材質を手配するだけではなくて、寸法や重量、それ以外にも作る為に必要な情報を揃える事。それが、材料の時より増えるだけなの。何度か行なっていけば慣れてしまうわ」
アイカユラはそんなものなのかと思ったような表情になった。
「エルメアーナは、業者と打ち合わせなんて出来そうもないから、あなたの存在は助かるわ」
ヒュェルリーンは、改めてアイカユラをエルメアーナに付けた事に満足そうにした。
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