ノアの方舟[KAC20243]

夏目 漱一郎

第1話選抜

どうも世界がヤバイらしい。


それは、、そういうじわじわとくるようなヤバさではなくて、すぐにでも地球が消えて無くなってしまう位のヤバさなんだそうだ。


なんでも数週間前に、自分の事をと名乗る男がやってきて、こんなメッセージを残していったそうだ。


「あのさ、偶然にも東日本大震災と同じ日だから覚え易いけど三月十一日にから、早く逃げた方がいいよ~。じゃあね~☆」


その未来人は本物なのか?という話にもなったが、その自称未来人は自分が本物である事を証明する為にロト7の当選数字をピタリといい当てたという事だ。


この緊急事態を受けて、国連は全国連加盟国による臨時会議を招集。アメリカ主導による火星移住計画を加速化し、全世界で割り当てられた人数を専用の宇宙船に乗せて火星へ避難する事が決定された。いわゆる【ノアの方舟】である。


そのうち、日本でそのノアの方舟に割り当てられたのは百人。そのうちの天皇陛下と皇后様を除いた98人の人選をどうするかで、国会は紛糾していた。


「この百人はでなければならない。という事は、我々岸辺内閣は当然その中に入っていなければならないと思いますが…」

「いや、アンタの内閣なんてじゃないか!」

「この人選は国民投票で決めるべきだ!そうしなければ日本中で暴動が起こりますよ!」

「それじゃじゃないか!本当に必要な人材を選ばないと日本の未来は無いぞ!」

与党も野党も入り混じって紛糾する国会で、ある妙案を出したのはデジタル庁の河本大臣だった。

「それならAIに選ばせたらどうでしょう。AIならば、妙な馴れ合いも発生しない完全に公平で平等な人選をしてくれる筈です」

この案は国会の賛成多数で可決され、ノアの方舟に乗る事の出来る国民の人選は全日本国民の様々なデータを基にAIが決定することになった。


それから三日後…岸辺内閣の官房長官が一枚のリストを持ってかなり慌てたように総理官邸へと駆け込んできた。

「総理!AIが出来上がりました!」

「おお、出来たかね!…それでんだろうね?」

「いや、それが…」

「それがどうしたの?」

「総理の名前どころか、ようです…」

「一名も載っていないだって!?そんなバカな」

岸辺総理は、官房長官が持っていたリストをひったくるようにして奪い取ると、そのリストから目を皿のようにして自分の名前を探し始めた。


そのリストの選出範囲は様々な方面に及んでいた。経済界、医学、科学は勿論、芸術やスポーツの分野で活躍している日本人が名前を連ねている。しかし、その中に岸辺総理の名前は無かった。

「クソッなんで私の名前が無いんだ!大体、野球選手なんて火星に行ったら大して役に立たないんじゃないのかね?」

リストの中の一行を指差して、岸辺総理は大声を出して喚いた。きっと大谷翔平の事を言っているのだろう。そんな岸辺総理の様子を見ながら、官房長官は心の中で思った。

(アンタも大概けどね…)


各国、デモや暴動すれすれの騒動をなんとか収め、ついに『運命の日』を迎えるときがやってきた。

全人類の代表を乗せて火星へと出発目前の『ノアの方舟』その操縦席に、一通のメールが届けられた。

「ん、メール?このタイミングで一体誰から…」

不審に思いながら、操縦士はそのメールを開いた。














―――――――――――――――――――――――――――――――

   ♪テッテレ~~~~♪未来ドッキリチャンネル.大成功☆

―――――――――――――――――――――――――――――――


あの未来人、マジ殺ス!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノアの方舟[KAC20243] 夏目 漱一郎 @minoru_3930

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ