第21話 『地下の世界』 その10


 とざんくんは、崖下に消えた。


 すると、あたりは、すっかり真っ暗になる。


 『とざんくんがいないと、なにもできないか。』


 と、ぼくは愚痴った。


 しかし、具李子さんが思わぬ事を言った。


 『なんか、変よね。』


 『なにが?』


 『だって、とざんくんは、あらゆるデータを持ってる。とか。でもね、あんなにすぐ分かるようなことなら、とっくに知っていたんじゃない?』


 『ロボットが、わざと、やってると?』


 『というか、先生を疑うわけではないけど、とっくに調べてるんじゃないのかな。』


 『たしかに。そうだよね。でも、なんで、わざわざ?』


 『さあ?………』


 『もし、崖に道があるとしたら、どうする?』


 『それはもう、入りたい。危険でもね。』


 『ふうん。それこそ、無駄なような気もしてきたなあ。巫女さまは、なにか、ぼくたちから、本当は隠したいのかもしれない。もしかして、ぼくたちを、神隠しにするかも。』


 『それは、絶対に無いよ。絶対に。』


 『でも、きみが、言い出したんだからね。』


 『まあ、ね。それは、考えないことにしましょう。とざんくんの報告を待ちましょう。』


 『ちょっと、この石組を触ってみよう。』


 ぼくは、三角形の、不可思議な、氷山の一角という帽子みたいな石組を、懐中電灯を照らしながら、ぐりぐりといじったのだ。


 『あ、回る。変だな。からくりみたいな。』


 と、言うまもなく、石組は、下に沈んで、ばっと穴が空き、階段が現れた。


 


 


 

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