第19話 『地下の世界』 その8


 独裁者タイガー・プーは、3次元通信にて、副官と話をしていた。


 顔は、見えない。


 『高邁なる我らが首領、世界は概ね良好です。あちら側からは、目立った挑発もなく、観光事業も好調です。人材交流事業もうまくいっています。スパイの活動にも異常はなく、国内の反体制的人間も、わりに大人しくしていますが、監視は綿密に行っています。今週の処刑は150人。まあ、普通です。』


 『そうですか。』


 タイガー・プーは、無表情に答えた。


 『お宝寺島は?』


 『まあ、変わらずです。人格転換療法は、あまり進歩していません。命を保ちながら行うには、まだ、障害があります。知能の低下が起こりやすいです。』


 『継続せよ。』


 『はい。』


 『大修行は、なんと言っていますか?』


 『のらりくらりです。しかし、表だった活動はありません。』


 『絶対なにか、企んでますよ。』


 『鋭意、調べております。』


 『ふん。毎度そうですな。』


 『と、と、と、首領どの、あなたは、偉大です、我らは小さい。ぶたないでください。』


 『ぶたないですよ。がんばってください。あ、不思議が池お気楽饅頭を送りましたから、食べてね。』


 副官は、泣きながら言った。


 『ありがとうございます。』



       🍩



 『ぎーぎー。頂上につきました。』


 とざんくんが報告するまでもなく、そこは、頂上である。


 しかし、意外に広い。


 大きなお堂を建てるくらいのスペースは十分にある。


 けれど、そうした構造物は見当たらなかった。


 『なにもないよね。』


 ぼくは言った。


 『うん。すぐには判らないわよ。多分ね。』


 具李子さんは、平静だ。


 『探そう。』


 深夜だから、当然ながら非常に暗い。


 でも、ここは山の中の小さな町であり、空の星は、眩くばかりに煌めいている。


 すると、とざんくんが、身体を発光させている。


 かなり、明るい。


 便利なロボットさんである。


 

      🕯️

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