第15話 『地下の世界』 その5
『そのに、そのふね、ながささんりにおよぶ。じめんの、そこに、うまりぬ。たっすること、あたわず。』
『三里ってあるね。』
『いまと違って、律令制時代なら、一里は約533.5メートルというから。伝説ほどはでっかくないみたいね。それでも、1500メートルなら小さくはない。一里は約4キロというのは、中世以降になってからみたい。はっきり決まったのは明治になってから。多賀城碑からも伺えるし。』
『具李子さん、それは、見に行ったことがあるよ。まあ、大昔だなあ。でも、逆にありそうな話だよな。』
『そのさん、そこにいたるみちはふたすじあり。あらきやまのいただきにあるほこらから。また、かわだにからすだれやまにむかいしふところに、いだかれるみちあり。なぜできたかだれもしらぬ。』
『あらきやま?』
『神社の裏山の古い名前らしい。かわだに、という地名は、調べた限りは、いまは、ないみたい。すだれ、も、わからない。たぶん、どこかの谷間のことかも。このあたりは、危ない谷間だらけよね。』
『禁足地のどまんなかか。』
『まあね。でも、山の頂上ならわかりやすいわ。』
『その、よん。おちしものは、つねに、あやしのものにまもられて、ちかづくものは、ただにおかぬ。』
『ぶっそうだね。』
『もし、宇宙船ならば、放射能汚染してるかも。でも、もう、危険性はないかもしれない。だいたい、神社もあるわけだし。』
『まあな。』
『そのご。たくさんのものを、まどわし、なかに、ひきいれぬ。ちかよりてはならぬ。ひきいれられなむ。ひきいれられしものは、あやしのものにうまれかわるなり。』
『ふうん。まるで、オカルトだね。』
『そうよ。だから、これは、かなり後世に書かれた偽作だと思う。もしかしたら、明治期になってからかもしれないわ。ことばも、分かりやすすぎる。で、最後、そのろく。これが、先生が言っていたところで、まとめみたいなもの。おなじことのくりかえしみたいだけどね。ただし、最後に、いかにしてもおもむくならばこのもんしょうをみにきざむべし。』
『ふうん。へんな、マークだな。六芒星みたいだけど、やたら、かくばってる。』
『十二芒星よ。ただし、これは、3角形を4つ組み合わせてる。でも、一番気になるのは、このたくさんの人を中に連れ込んだという話しなんだ。神隠しそのものよね。』
『たしかに。』
『なら、探しに行こう。いや?』
具李子さんは、ずばりと言った。
『む。』
ぼくは、ちょっと詰まった。
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