第14話 『地下の世界』その4


 『いったい、どこで、うつされたのかい?』


 ぼくは、具李子さんに尋ねた。


 『まさか、ぼく、とか?』


 『あなた、かぜ、ひいてる?』


 『いえ。』


 『じゃ、違うわね。』


 『巫女さまかな?』


 『電話したら、違うと言っていました。』


 『じゃ、おかあさん?』


 『その線が強いです。』


 『ふうん。おかあさんの職場は、小学校の食堂だね。』


 『まずいんだなあ。まあ、たぶん、いじめはないけどね。』


 『うん。……で、あれは、どうだった?』


 ぼくは、話題を変えなければならないと思ったのである。


 『それよね。』


 具李子さんは、鞄からノートを取り出した。


 『古文書も、持っているよ。でも、あれは、持たない方が良さそうに思ったんだ。写しは録ったから、なくても大丈夫だよ。座る?』


 『ああ。』


 神社の入口には、小さな公園があって、ベンチが置かれていた。


 ほかに、人影もない。


 ぼくは、具李子さんと並んで座った。


 そんなことは、初めてのことである。


 しかし、これは、幸いだったと言うしかないのだろう。


 なにもなければ、そうしたことは、起こるわけがないから。


 『内容自体は、そんなに長くない。まず、前書きもなく、唐突に始まります。』


 具李子さんは、やや、近寄ってきて、ノートを見せてくれた。


 『そのいち てんからおちたふね。』


 『そ、そのものだね。』


 『そうそう。』


 具李子さんは、訳もなく言った。


      🚢

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