第13話 『地下の世界』その3


 東地球政府の大統領さんは、ベートーヴェンさまだ。


 あの、ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンさまの細胞などから作られた、クローン人間であります。


 そのようなことは、一昔前までは不可能だったが、いまは、出来るようになった。ただし、そのテクニックは、西地球には、まだ、ないのだけれど。


 ただし、これも、父から聴いたところでは、東地球政府内でも、倫理上問題であるとされ、かなり、すったもんだしたらしいが、その詳しいいきさつは、西地球側には伝わらない。


 ただし、父によれば、情報がないわけではなく、国民の健康上、良くないと、タイガーさまが思っているからだとか。


 西地球側は、東地球が持たない、『精神科学的武器』を持っているがそれが何かは知りません。また、医療などは、東地球が優れていると聴く。ちなみに、核兵器は廃絶されているが、『保険』として、双方に30メガトンクラスの弾頭が、50発ずつ、残っている。果たして、それは、廃絶なんだかどうだかは、ぼくは疑問に思っていたが、そこは、言ってはならないのだそうだ。


 で、クローン・ベートーヴェンさんは、結果的に、あらゆる面で、あまりに素晴らしい人物になったため、選挙により当選しましたそうな。西地球側は、いささか、バカにしていたが。


 東地球には、選挙という制度がある。西地球側には、いまのところは、ない。むかしは、あったらしいが、結果に偏りが激しく、良くないと言われている。独裁の方が効率が良く、なにごとも早いとされる。タイガーさまのような、りっぱな指導者に恵まれることが必要だとされているわけだ。


 ぼくのみるところ、実は、ベートーヴェンさんの出現は、西地球にはショックだったのではないか、と思うが、それも、父によると、言ってはならないそうだ。


 なお、地球には、西東の両大国以外にも、いくつかの小さな国があった。


 まず、永世中立国とされている国がみっつあり、さらに、地球範疇外縁国という、いささか訳のわからない謎の王国『タルレジャ』がある。この国は、不滅の女王さまの下で、地球の文明をはるかに超越したテクノロジーを持ち、核兵器でもあらゆる化学兵器でも破壊不可能な住居、国土があり、地球では、誰にも勝ち目はないため、あえて、枠外に置かれているが、一部を除いて、貿易や観光などは、普通に行われていて、鎖国しているわけではないようである。また、平和主義であり、東西地球壊滅戦争を防止する役割が与えられていました。さらに、両大国には、それぞれに、自治権のある政府が複数あった。


 

 さて、その古文書を持って帰った具李子さんは、二週間くらいは姿を現さなかった。

 

 良くない、かぜをひいた、とされてた。新しい、Q型インフルエンザである。


 あとから聞いたら、それは、本当だったようだ。


 しかし、後半は、割に良くなっていて、ひたすら、古文書を解読していたようなのだ。


 一週間たった金曜日の夕方、ぼくたちは、また、神社で落ち合った。


 

 

 


 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る