第7話 『神隠し』その6


 『はい。あたくしの、コーヒーメーカーで淹れた、ごく当たり前のコーヒーです。』 ☕😃☀️


 『あ。ども。』


 『具李子さんはともかくも、あなたは、どなた?』


 あ、ぼくは、名を名乗っていなかったろうか?


 『丹下勝タンゲマサルであります。』


 『わあ! カッコいい名前ね。で、あなた、よのなか、たのしい?』


 『はあ?』


 ちょっと、変わった質問だったから、びっくりした。


 『まあ、楽しくないわよね〰️〰️。とくに、ここは。』


 と、間髪いれずに先に言われてしまった。


 『あ、でも、この町に来てからは、いじめがなくなりましたから。ぼくは、転校常習者で、いじめられるのが普通ですから。』


 『そうなんだ。悲しい話ね。なるほど。そういう面はあるだろうな。大丈夫。話して良いから。気にしないで。あたしも似たようなものよ。なにしろ、ここは、神社なわけよ。ところが、このしばらく、町の人たちは、怪しい宗教にのめり込んでいて、こっちは、邪教扱いなんだから。』


 『あの………』


 ぼくは、具李子さんを見た。


 彼女は、小さくうなづいたのである。


 『あの、やはりあれは、宗教なんですか? うんじゃあーまいやら。とか。』


 『やはり、見てたか。まあ、当然よね。この神社は、なぜだか、昔から全国レベルで知られています。はるかなむかし、空から長さが3里にも達するという巨大な光の物体が現れて、そのまま、地に沈んだといわれます。そのために物体が落ちた場所にできたのが、この神社と、町なのです。それが、オカルト方面でも人気にナって、戦後は参詣者が増えたんだな。ずいぶん財政的には助かったわけよ。ところが、それとは別に、おかしな宗教ができた。教祖さま一族は、もうこの世にはいない。その一族は、みな、地下に帰ったといわれているみたい。なのに、いまだに、絶対的な信仰を集めている。不思議よね。それで、具李子さんには気の毒なんだけれども、あの神隠し事件が起きた。連中は、神社のせいだと主張しているわ。まあ、危険だという話が蔓延して、くるひとがぐっと減った。たまに、変わった人は来て、ご神域に入ろうとするけどね。でも、神社のご神域は、伝統的に禁足地なんだから、立ち入りは禁止になっているわけよ。具李子さんのお兄さんたちが、なんで、ご神域に入ったのかはよくわからないまま。みな、良い子達だったし。あの宗教は、『まいやら教』と呼ばれる地域宗教なんだけど、秘密主義でね、いま、実際の本部がどこの誰なのかも判らないんだ。警察の聴取に応じたのは、町長さんよ。うちの父もだけどね。警察は、一応は、伝統を尊重はする。もちろん、具李子さんも知るように、ご神域の捜査は、例外として、かなりしっかりしたわよ。でも、誰にも見つけられずにいるわ。おかしな噂話も飛んだわよ。捜査した警察官に怪我人や死人が出たとかね。うそよ。たぶん、校長も、町長も、やはり、『まいやら』の、幹部なことは、確かだとは思うんだけどね。この町のどこかに、その本部があるはずなんだけれど、なぜだか、よくわからないし、『まいやら』が、行方不明にからんでる兆候はないし。結局は、一番疑われているのが、ここなわけよ。』


 『はあ。なんだか、不思議です。』  


 『まあ、たぶんね。その組織について自体も、よくわからないんだ。町民の大多数は信者だし。かばいあっている。まあ、だから、町の外から来た人は、エイリアン。あえていえば、ここは、かなり疑われているけども、実はそういう人たちの、駆け込み神社なわけよ。なんだか、不思議でしょ。』


 『あたしも、助けてもらった。』


 具李子さんが言った。



      ⛩️

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