第6話 『神隠し』その5


 そこに立っていたのは、あきらかに、『巫女』さまだった。


 巫女の衣服は基本的に全体的な決まりはないようだが、上着は白、袴は赤というのが普通だろう。


 この人は、わりにこのあたりでは有名な方である。


 山側神社の神職さんの娘さんである。


 しかし、実は天才的なピアニストであり、町から出ることが多く、そのためには、自家用AI空中自動車を使っている。


 そんなもの持っているのは、いまでは、町役場と、町長さんと、この神社だけらしい。


 そこからしても、この神社は、かなりの資産を持っているわけだ。


 具李子さんには、実は、ピアノの才能があり、この人から密かにレッスンを受けていた。町の人からとやかくいわれないように、隠し事にされていたのだ。学校にも、他の町の学校と兼任の音楽の先生以外には、内緒だった。


 だから、ここには詳しかったのである。


 兄が居なくなったのは、レッスンを受けるようになる、その少し前の事らしい。


 『具李子さんのお友達か。いや、やはり、恋人かな?』


 『まさか。同級生です。』


 まあ、当然そう言われるだろうが、ちょっと、がっかりもした。


 『あなたたち、コーヒー飲んでかない?』


 その誘いは、ぼくたちが、神秘な場所に旅をすることになる、奇妙なきっかけになったのだった。


 

 


 


 

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