朱い雨の降る時間1
『相変わらず容赦無いね』
僕は暗視スコープで男性を確認する。
彼の額中央には一センチ程度の赤黒い銃創が残っている。
『でも、暗視カメラだと普段よりも多少画質が悪いな』
「申し訳ございません。今回のシナリオ上、仕方なく」
旦那の声に、僕はしおらしく頭を下げる。
「しかし、暗闇というのは人の恐怖を倍増させます。たまにはこのような環境の参加者を観察するのも面白いかと」
『まあ、それもそうだな』
納得したか。
その時、部屋のドアが開いて人が入ってきた。
フードを被った一人の男。
「さあ、ゲームオーバーになった方は他の参加者の邪魔とならないよう退場してもらいましょう」
僕が一歩横にずれると、フードの男は床の男性に近づいて膝まづく。
そして乱暴に担ぎ上げると、再び部屋を出て行った。
これで一人目は完了、っと。
「では僕は人狼らしく、他の参加者も探しに行きましょうか。観戦者のみなさまは、これからもごゆるりとお楽しみ下さい」
洗練された動作で監視カメラに向かって礼をすると、僕は男と同じように部屋を出る。
後ろ手で扉を完全に閉めると、僕はカメラにバレないよう小さく息をついた。
今回のゲームテーマは「リアル人狼」。
実際に流行った遊びを題材にしてみたけど、夜に殺人が行われるのは観戦者的にはやっぱり不評だったかぁ。
うーん、僕にとっては都合の良い設定だったんだけどな。
僕はこのデスゲームの舞台設定と進行を任せられているゲームマスター。
今回は参加者の中に紛れ込んでいる人狼役も担っている。
せっかくバレないように数か月前にビデオも撮って、少し髪も伸ばして雰囲気変えたのに、あのおじさんは欺けなかったかぁ。
ビデオとの掛け合いも、頑張って練習したんだよ?
っていうか、参加者の中に見当たり捜査官とか、今回のシナリオだとどう考えたって僕に不利だ。
この人選は、父さんがしたのかな。
僕の父は昔、僕と同じようにゲームマスターをやっていて、今ではこのデスゲームを主催している。
十二歳になった一年前、父さんが言った言葉が頭の中に響いてきた。
『ゲームマスターはエンターテイナーだ。どんな状況でも、観客を楽しませなくてはいけない』
楽しませる、ね…。
最近になってゲームマスターになったばかりの僕を試しているんだろう。
どんな人間が来ても、観戦者を楽しませるゲーム進行ができるか。
…ふん、面白いじゃん。
「見せてやるよ、父さんやみんなが期待する
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