Next again


 「いい店って聞いたからついてきたが、なんだここ、お前やっぱり馬鹿にしてんのか?」


 クラブのような内装に音楽がかかっているが、マークには馴染みが無い音楽だった。それ以外で知っているクラブとの違いといえば、客層とモニターの数だ。客層はジョイのようなギークが目立ち、モニターの数はスポーツバーみたいな数が置いてある。

 派手なギーク向けスポーツバーみたいな趣きの店だ、飯には期待できないとマークの直感は告げている。


「いい店でしょ?」


 ジョイは笑顔で答える。


「帰る」


「ちょっと、ちょっと待ってくださいよ。こんな所でもここのチーズバーガーは最高なんですよ」


 ジョイはマークの背をぐいぐい押すと席に座らせた。


「七番テーブルさんチーズバーガーのセットとシェイク二つお待ち〜ごゆっくり〜」


 派手なメイクで猫耳付きのサンバイザーとミニスカートの店員が、無愛想にテーブルにハンバーガーセットのトレイを置いて去っていく。マークの目線は、店員の後ろ姿をしっかりと捉えていた。


「悪くないかもしれねーな……注文も早いし」


 マークは温かいチーズバーガーに齧り付いた。温かい食事なんていつぶりだろうか、最近は酒しか飲んでいなかったような気がする。


「旨いな、なかなかやるじゃねーか」


「でしょう?」


 チーズバーガーを早々と食べ終え、ポテトでチーズバーガーの溢れたチーズをこそげ取っていると、店の中で歓声が響く。


「なんだ?」


「あれです」


 ジョイはしたり顔でモニターに指をさす。


「ロボットファイト?」


 モニターの中では二体のロボットが激しく拳をぶつけ合っていた。血しぶきの代わりに、ぶつかり合った金属から火花が散りオイルが飛び散る。


「こいつはぁ……」


 マークは自分でも気がつかないうちに拳を強く握りしめ、モニターを食い入るように見つめていた。


 片方のロボットが黒煙を吐き機能を停止すると、ゴングが鳴り、会場を割くような歓声が聞こえた、気がした。


「ねぇマーク、興味ある?」


 声をかけられて我に返ったマークは、自分の拳に力が入っていることにそこで初めて気がついた。手の中にじっとりと熱が残っている。


「興味……ねぇと言えば嘘になるが」


 マークは残ったフライドポテトをケチャップで赤く染めながら答えた。


「じゃあ、決まりだね!」


 ジョイは電子決算で会計を済ませると、残ったフライドポテトをシェイクで流し込む。


「着いてきてよ」


「またそれか」

 

 夜風が火照ったマークの頬を撫でる。

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