Take On Me(いえいえ、まったく想定外なのですが)
本日は、第一空挺団と航空自衛隊との共同訓練。
総監部からの指示があったらしく、昨今の世界的軍事状況を鑑みて行うことが決定したそうです。
ちなみにこの訓練の後は、アメリカ海兵隊、イギリスのSAS、第一空挺団の勝負、もとい合同訓練が行われます。
ええ、訓練というよりも、母国の名誉をかけた勝負という方が早いかもしれませんね。
例年ならば、アメリカ海兵隊と陸自の訓練とか、アメリカ軍と日本国自衛隊の大規模演習とかいったかんじなのですけれど。今年は、お互いに
しかもイギリスなんて、新たに編成された特殊部隊がやって来るとかで、幕僚監部の皆さんもワクワクしておりましたよ、ええ。
という事で、私は今、航空自衛隊奄美分屯基地にやって来ました。
訓練内容は航空自衛隊の部隊が守る基地に私たち第一空挺団が侵入。
基地司令を抹殺もしくは基地機能を破壊した時点で勝利です。
なお、航空自衛隊側は、侵入者の完全排除して時点で勝利。
これはかなりきつい訓練であるらしく、航空自衛隊の方々は、ピリピリとした緊張感に包まれています。
なお、訓練開始のコールが発令して時点で、私は一人、ポツンと本部待機。
他の空挺団の隊員たちはどこかに消えました。
ええ、消えましたよ、完璧に。
「……如月三曹は、潜入しないのかね?」
「私の今回の任務はバックアップです」
「ほう、それはまた、どうして?」
「私は魔法で姿を消すことが出来ます。まあ、サーモグラフィーには映ってしまいそうですけれど、それすら阻害する魔法を有しています。それを使って潜入すれば、第一空挺団の勝利は確定します。ということですので、私はここでバックアップです」
さあ、見せてあげましょうか、異世界最強の大魔導師の実力とやらを!!
「七織の魔導師が誓願します。我が手の前に七織の神殿を遣わせたまえ……我はその代償に、魔力25000を献上します。
――シュンッ
一瞬で私の目の前に、大理石によって生み出されたコンソールが展開します。
これは3枚の戦闘聖域、この魔法とマジックアイの複数稼働により、私は戦場のすべてを視覚としてとらえることが出来ます。また、戦闘聖域とのリンクにより、音声を拾い、こちらから指示を発することも可能。
これを各隊員たちに一つずつ付与し、さらに建物の内部にこっそりと潜入させました。
マジックアイの欠点は、『視認可能であること』。
当然ながら、マジックアイに対して攻撃を行われた場合、それがヒット判定だったら私はそれを消さなくてはなりません。
そうでないと、不公平ですからね。
「さて、これで空自の配備状況も全て丸わかりです………さあ、第一空挺団の皆さん、楽しいパーティータイムの始まりです!」
ふっふっふ。
私の後ろで近藤陸将がドン引き状態で見ていますけれど、それはそれということで。
あとは如何に効率よく、空挺団員たちを手駒として扱うか。
この手の作戦はスマングルの方が専門なのですよ。
あっちの世界でも、彼の提案した作戦の実に8割は圧勝していましたから。
なお、残り2割の失敗は、私たち
そのまま次々と指示を飛ばしつつ、徐々に基地包囲網を狭めていきます。
あとはヒット&ウェイで空自隊員たちをせん滅。
1時間もすれば、基地の防衛システムの完全掌握も完了し、最後は部隊長の司令部突入でゲームオーバー。
「……とまあ、これが高難易度魔術による、戦闘オペレーションです。今回の作戦については、私が基地施設内部を掌握し、都度指示を出していただけにすぎません。けれど、しっかりとした作戦立案者と戦闘指揮経験者が使用すれば、より効率よく運用は可能かと思われますと具申しておきます」
「ご苦労。これは確かに、国産魔術師の追加動員を欲する理由も分かるが。これは、魔術師なら誰でも使えるのかね?」
近藤陸将の問いかけに、私は淡々と説明を始めます。
「不可能かと。この魔法に必要な魔力は25000、常人の250倍です。ただし、これらを魔導具化することにより、一般の魔法使いでもある程度は耐えられるかと思われますが」
「北部方面隊の小笠原一尉では?」
「今はまだ無理かと。体内魔力量の上限を上げるためには、まずは実践で魔法を使いまくる必要がありますので。そして、小笠原一尉の魔法適性はバックアップよりも錬成型、兵器を魔導具化するほうに長けているかと」
はい、これが北海道で調べた小笠原一尉の適性。
簡単に説明すると、付与・強化魔法の適性があったのですよ。
まあ、他の魔法が使えないわけではありませんけれど、そっちが専門分野というところです。
「わかった。後ほど報告書を提出するように」
「はっ!!」
敬礼して挨拶を返すと、近藤陸将が本部席へと戻って行きます。
それと入れ替わりに、第一空挺団のみなさんも兵員輸送車で戻ってきました。
さて、このあとは反省会、そして明日以降のミッションのための準備ですか。
〇 〇 〇 〇 〇
――沖縄・キャンプ・ゴンサルべス
はい。
昨日までのアメリカ海兵隊との演習は実に有意義でした。
空自との訓練とは違う、まさに実践訓練。
キャンプ・ゴンサルベスはジャングル・森林地帯を想定した対ゲリラ戦の訓練施設であり、ここにアメリカと日本、二つの陣地を設定。
どちらの部隊が殲滅するかという超ハードな作戦でした。
なお、初日は第一空挺団が圧倒的戦術で海兵隊を押していたのですけれど、二日目になって勇者スティーブが作戦に合流。
私は前線に出ることが禁止されていたので、後方で戦闘聖域によるバックアップを行っていたのですけれど、あの脳筋スティーブが闘気全開で単騎で突っ込んできたため……あとは御察しの通り。
勇者vs魔導師という展開が始まることなく、第一空挺団が完敗しました。
そして二日挟んで、本日からはイギリスの新型特殊部隊と第一空挺団の勝負。
いつも通り、私は戦場聖域によるバックアップ担当。
正体不明の、イギリスの最新特殊部隊を相手に。
「それでは、よろしくお願いします」
目の前の魔導モニターを使い、特殊部隊を探すだけ。
敵本拠地へのマジックアイの侵入は禁止されているのて、今は数多くのマジックアイを戦場全域に飛ばし、特殊部隊を探すのだけれど。
――バジッ
「……え?」
突然。
マジックアイの一つが吹き飛んだ。
あれは私の魔力を練り上げて実体化した魔力体であり、通常兵器での破壊は不可能なはず。
だけど、その一つが吹き飛んだ。
「スティーブなら、闘気を剣に纏って飛ばしてくるとか、色々と手があるけれど。まさか、イギリスに闘気使いが生まれた? もしくは、習志野かキャンプ・デービットにスパイでも潜り込んでいた?」
いくつもの可能性を精査しつつ、私はひたすらに戦場に注意を向けつつ、第一空挺団に指示を送る。
だけど。
――ピッピッピピピッ
ジャングル地帯の奥、マジックアイが見ていた映像。
それは、私に向かって右手を伸ばし、魔術を詠唱している一人の特殊部隊員の姿だった。
『三織の魔導師が誓願する。我が手に宿れ、戒めの炎。かの力を一発の弾丸に変えて目の前の敵を破壊せよ……我はその代償に、魔力1200を計上する……』
その詠唱の直後、マジックアイは消滅。
そう、特殊部隊員は口元に笑みを浮かべつつ、魔法を放っていました。
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