I Will Survive(勇気を爆発させましょうか!!)
防衛省経由で届いた、私に対しての新しい指令。
それはナイジェリア政府に協力し、地下大迷宮に存在するダンジョンコアの掌握と、その管理権限をスマングルに移譲すること。
つまり、これで私はようやく、ダンジョン攻略に向かう事が出来ます。
あとはスマングルと二人で一番面倒くさく、且つ最短のコースが確保できるダンジョン選択し、突入するのみ。そう思っていたのですけれど。
「……以上、ダンジョン攻略チームは、ナイジェリア政府の好意により多国籍軍から選抜されたチームと合流することとなった。これはナイジェリアのみが迷宮の恩恵を受けるのではという他国の危惧を緩衝するためであると同時に、全世界にダンジョンというものを公開するための宣伝も兼ねているそうだ」
コンタゴラ・ベースキャンプにある簡易自衛隊隊舎のブリーフィングルームにて、津田一佐からありがたいお言葉を頂きました。
うんうん、ダンジョンコアの奪取や破壊ではなく掌握。
一番平穏に解決する手段ですよ。
ちなみに新宿地下迷宮でそれを行わなかった理由は一つ、その管理運営は私が担うという事。
そんな国からの指示でいちいちダンジョンに入り、そこで色々と面倒くさい設定を繰り返す作業なんて、誰がやるものですか。
まあ、今となっては、新宿地下迷宮も存在しませんので、平和なものですよ。
「なお、今回のミッションが成功した暁には、如月三曹が個人所有しているダンジョンコアを日本国が買い取り、それでダンジョンを構築して欲しいという希望もあるらしいが」
「津田一佐、それは無理です。私が所有しているダンジョンコアは、帰国後に粉末にして霊薬エリクシールを生成する材料にする予定です。ということで、日本国内でのダンジョン管理はできないものと思ってください」
手を上げて進言します。
すると津田一もウンウンと頷いていますよ。
「あくまでも日本政府の希望であり、拒否権はある。ちなみに余ったダンジョンコアの粉末で、ダンジョンを作ることは可能かな?」
「えぇっとですね、俗にいう『3LDK迷宮』なら作れますが?」
「……それはなにかな?」
3層構造、
この三つの要素を兼ね備えた迷宮を、あっちの世界ではこう総称していました。
ちなみに、中型モンスターの魔石から抽出した魔力を用いて作れる、じつに簡単な人工迷宮です。
もっとも、この手の迷宮で手に入る素材などたかが知れていまして。
基本的には、冒険者ギルドの訓練施設として管理され、用いられることが多いようで。
私もいくつか作ったことがありますからね。
「……というものです。ちなみにですが、先日私が入手した仮称モサザウルス君の魔石1/2でも作れますが。作るかどうかは不明ですね。自宅に庭に埋めて、私が管理して宝石貴金属摂り放題にすれば、実家もウハウハ状態でしょうけれど」
「いや、もういい……本当に、日本にとっての貴重なマテリアルを、私利私欲に使うのが好きだな」
「倒したマテリアルは、倒したものに所有権がある。異世界のルールです。それに、欲しければ仕事として依頼して頂ければ、報酬次第では受けますけれどね」
つまり、私を好き勝手使いたいのであれば、冒険者ギルドを通せと。
地球にはそんなものはありませんし、日本国ではそのようなものを管理する法整備を行うだけで数年は必要でしょうからねぇ。
「まあ、それについては、今回のPKF活動の完了時に、日本政府に対しての報告を行う。その時に質問などが出ると思うので、如月三曹も同席してもらうことになっている。これは命令なので」
「了解しました」
さて、面倒くさいことが起こりそうな予感ですけれど。
報告って基本的には書類によるもので終わりなはずですが、どうやら質疑応答も行われるようですので。私なりに必要なことだけを報告することにしましょうか。
そして一連の作戦についての説明を受けたのち、いよいよ多国籍軍との合同ミッションがスタートしました。
〇 〇 〇 〇 〇
――エバン大空洞
私が魔法を使ってた調査した結果。
スマングルが最初にダンジョンコアを埋めた地点に出現していた大空洞型迷宮の最深部に、ダンジョンコアがあることが判明しました。
それで現地にて多国籍軍選抜チームと合流し、作戦開始となるのですが。
「ハーイ。ファース少尉、お久しぶりですね。本日はよろしくお願いします」
『こちらこそ、よろしくお願いします。イギリス陸軍からは、私も含めて3名が参加します。あとはドイツからも3名、フランスから2名、中国から2名が参加することになっています』
「それと、チームリーダーであるナイジェリア陸軍ですか。では、後ろから飛んでくる弾に気を付けることにしますか」
そう呟いた私の言葉に、ファース少尉が苦笑しています。
ほら、今でも私たちの後ろでシェルナー少尉が苦虫を嚙み潰したような顔で睨んでいますから。
「うちの隊長は竹林一尉が務めます。そろそろ打ち合わせが始まるようですけれど」
『そのようですね。では、またのちほど』
軽く敬礼をしてから、ファース少尉がベースキャンプにある士官専用テントに向かいました。
そこで各国のリーダーと、ミッションリーダーであるナイジェリア陸軍から派遣されて来たジャック・オジュク中佐が詳細の打ち合わせを開始しました。
私は部隊待機し、いつでもダンジョンに突入できるように準備をしているだけ。
「さて、それじゃあ下調べでも……織の魔導師が誓願します。我が右目に仮初めの身体を与え給え……我はその代償に、魔力360を献上します。マジック・アイ発動」
――ヴゥン
新宿迷宮でも使った、魔法の目を作り出す魔法。
ピンポン玉大のマジックアイを作り出して操り、偵察に向かわせることが出来ます。
ということで、さっそくエヴァン大空洞の中へと、マジックアイを飛ばします。
斜め下に向かって伸びる自然洞型迷宮。
人の手が入っていないため、各階層ごとのボス部屋もなく。
ただひたすらに、グネグネと曲がりまくりつつ地下へと繋がっています。
道中にある少し大きめのフロアには、地上から逃げてきたらしい小動物たちが体を寄せ合い、休んでいる姿も見えます。
ええ、サバンナオオトカゲですね、全長10メートルほどの。
それが群れを成して、ひとつのコロニ―を作っていますよ。
抱卵しているトカゲもいますので、繁殖地として適切だと判断したのでしょう。
その先にもいくつか空洞があること、オオコウモリ亜種とか、全長5mほどの大ムカデとか、巨大な蜘蛛とか、イモリなど実に多彩です。昆虫がいっぱいいます、帰っていいですか。
「うげぇ……嫌なものを見ちゃった……」
「ん、また魔法で偵察か? なにが見えた?」
「見えたのはですね……こうこう、こんなかんじで、道順はこう……」
片眼は洞窟を確認しつつ、もう片目でメモ用紙に簡単な地図を書きます。
どの場所にどんな魔物がいるのかなども簡単に書き続けた先、最深部には、巨大な地底湖だけが広がっていました。
「最悪……ダンジョンコアは地底湖の底ですか。スマングルは泳げないので、私がどうにかする必要があるっていうことですよねぇ……」
「地底湖の底なら、水をアイテムボックスに入れいれば完了では?」
「液体はですね、しっかりと容器に入れないと納められませんよ。触れた水全てを納められるのでしたら、ガソリンをアイテムボックスにいれてダンジョン入り口からぶちまけてやって、火をつけて魔物を殺せば終わりなのですけれどね」
実際、そのような作戦を使ったことがありましたよ。
ガソリンはありませんでしたけれど、
あの時は、後始末が大変でした……。
「まあ、そんなことをしたら素材も集められないか」
「それに、オオトカゲと蜘蛛、大ムカデは魔石もちですね、反応がありました」
「つまり、そいつらには俺たちの武器は通用しないということか」
「何言っているのですか……通用させますよ。ということで、のちほど、皆さんの装備を魔導具化しますので」
具体的には魔力付与を行う。
それだけで、魔法しか通用しない敵にも有効な攻撃手段を得ることができる。
今回の私の任務はダンジョンコウの掌握と制御なので、余計な魔力は使いたくないのですよ。
やがて竹林一尉が戻ってきたので、先ほどの地図魔物の分布を説明。
そして陸自隊員の装備を全て集めて魔法陣に並べると、ゴブリン種の魔石を使ってすべての装備を魔導具化して準備完了。
他国の部隊も付与して欲しそうでしたけれど、魔法による武器の強化術式は日本固有の魔法技術ということで、他国への供与は禁止されているのですよ。実に面倒くさいと思いませんか?
そんなこんなで手書きの地図も各国に配布されたので、いよいよ作戦開始です。
………
……
…
先発は陸自が務め、私が魔物にたいして通常物理攻撃が効くかどうかを確認。
有効な場合は他国の部隊が殲滅し、無効の場合は日本国が対処する。
この方法でゆっくりとではありますが、地下迷宮を迷うことなく進むことが出来ました。
途中あちこちに枝分かれしている場所もありましたけれど、目的は最下層のダンジョンコアなので寄り道は禁止です。
「ちなみにだが、枝道に進んだ場合の危険度は?」
「それほど高くはないですね。陸自以外でも対処可能ですし、自然洞型なので宝箱が湧き出ていても、たいしたものは入っていませんし。ただ、自然鉱石が微弱ながら魔石化している場所がありますね。それは魔石とは異なり、魔晶石という呼び方で分類されていますけれど」
「それも、素材になるのか?」
「いえ、エネルギーの塊ですね。不足しがちな魔力を補ったり、あとは魔導具の燃料に使われたり。私とスマングルで開発した魔導ジェネレーターなんて、これがなければ稼働しませんでしたからね」
魔晶石は、魔力を放出する石。
魔導具にとっての電池であったり、魔導ジェネレーターに供給する石炭のようなものです。
とてもクリーンで炭素も排出しない、自然エネルギーの塊。
私とスマングルがこれの有効な使い方を見つけたため、町の中に街灯を設置することが出来たのですよ。その結果、町の中が明るくなり犯罪率が減ったと……まあ、今は関係ありませんよね。
私と竹林一尉のこの話には、他国も耳を大きくする勢いで食いついています。
なお、スマングルは最前列で、常に周囲に気を配っている真っ最中。
いつでも魔物の襲撃に対処できるように身構えています。
(ヤヨイ、敵の気配を感知した)
「ん? スマングルの闘気念話? ほいほい、なんじゃらほい? どんなやつですか?」
頭の中にスマングルの声が聞こえてきました。
さすがに洞窟内部では大きな声を出せないので慎重です。
(この先の大広間、サバンナトカゲ亜種が殲滅されている。人影は二つ、一つは全身鎧の騎士風、もう一人は魔導師だと思う)
「はあ、なるほどねぇ……大魔王がいたぐらいだから、四天王もいますよねぇ……魔導師は四天王の一人、不死王リビングテイラーでしょうねぇ……まだ生きていたのですか、あの骸骨。それで騎士は?」
(見たことがない。おそらくだが、現地雇用かと思われる)
「了解。そのまま前衛部隊にも報告しておいて……竹林一尉、緊急事態です」
私たちの部隊と斥候役のスマングルたちの部隊とでは、200メートルほど離れています。
しかも曲がりくねった迷宮ないですので、視認することもできません。
最後衛のドイツ・中国の後続部隊の姿も見えていませんし。
「何かあった?」
「斥候のスマングル隊が、未確認の人物2人を確認しました。風体から、恐らくは魔王の手下かと思われます。現在はサバンナドラゴンを殲滅中……ああ、魔石の回収でしょうね。この迷宮の魔素って、そのまま使うにはきつい濃度ですから」
淡々と説明していますけれど、すでに陸自と共に活動しているイギリスの部隊も武器のチェックを開始。いつでも戦闘状態に突入できるようにスタンバイですね。
そして一人のイギリス兵は後続部隊に通信を開始。ここならまだ届くのでしょうね。
魔素って、濃度によっては通信機器をジャミングするのですよ。
それはナイジェリアに来て、初めて知りましたから。
さて、ここからどう動くのでしょうか。
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