Wannabe(……に、なりたい)

──発生から10日後、新宿大空洞


 巨大な八角形の形をした防護壁によって包まれた、新宿大空洞。

 関係者以外は立ち入り禁止であり、防壁内部に向かうには防衛省の許可を得なくてはならない。

 もっとも、結界壁の維持作業の為に私には常に許可がおりているので、七日に一度の作業日には、防護壁正面ゲート付近には大勢の報道関係者が集まっている。

 私から話を聞き出せる筈はないのだけれど、なにか重要な機密が見えるかもしれないと集まっているらしいが……今日は、その報道関係者も呆然としている。


「な、なんだ……何が起こるんだ?」


 陸上自衛隊の兵員輸送車両が、次々とゲート内部に入っていく。

 その光景を見た報道関係者は、何が起きるのかわからない不安と、何かが起きるだろうという確信で胸が小躍りしている。

 そんな中、私はというと……。


「あの、有働三佐。私はどう見ても部外者なのですが」

「はっはっはっ。そんなことはないだろう。そもそも、この部隊の責任者は君なのだからね? 作戦行動ということで私が隊長を務めているが、魔導編隊は君のための部隊なのだから」


 はい、目の前には何処の戦争映画の撮影ですかという感じに装備を固めている特戦群が待機しています。

 人数は一個小隊、25名のエリート集団。

 なお、その半分は、よく知っている第一空挺団狂っている連中です。


「あのですね……はぁ。だから今回の作戦行動が、『即応魔導編隊』なのですか」

「最近では、即応魔導編隊のことを『マッチョ変態』って揶揄している連中もいるからなぁ」

「はっはっはっ。違いない!!」


 そんなアホなことを呟きつつ、笑っている武田二曹と有働三佐。

 そこ、階級を忘れないで!!

 なんでこう、うちの連中はこういう時はフレンドリーなんだろう。

 

「私までマッチョに加えないでください!!」

「デッドリフト500キロを軽々持ち上げる如月三曹には、言われたくないなぁ」

「女性でデットリフトなんて、100キロも上がれば十分だろうが。なんだよ500キロって、世界記録一歩手前じゃないか」

「ほう。では如月三曹、今度、君のトレーニング方法を伝授してくれないか?」

「は、はあ? 有働三佐、トレーニングも何も実践で体を酷使していたら上がりますよ? 魔力伝達で筋肉も強化されますから」

「わかるか!! そんなもの」


 ですよね〜。

 

──ピピピピッピピピピッ

 そんな他愛無い話をしていると、有働三佐の腕時計がなる。

 それを止めて有働三佐が時計を交換すると、全員が立ち上がって整列する。


傾注アテンション


 特戦群の帯刀一尉が叫ぶ。

 そして有働三佐が話を始めた。


「本日の作戦は、新宿大空洞内部に広がる迷宮区画の調査である。内部に何があるのか、どのような敵が存在するのかはいまだ不明。如月三曹による事前ミーティング及び資料を元にしても、最低でもゴブリン種の存在はあるという仮定で調査を行う」


 今日に至るまで、特戦群及び第一空挺団は私とヨハンナによるダンジョン講習が数回行われています。

 ちなみにゴブリン種は向こうの世界ではメジャーな部類でありますが、なんといってもその繁殖能力と戦闘能力については驚異度はかなり高いです。

 そもそも、戦う術を知らない町の人では太刀打ち不可能。

 何故ならば、奴らは『受肉した邪妖精ゴブリン種』というのが正式な呼び名であり、魔法による攻撃でなければダメージは半減します。

 よくあるファンタジー小説の中の雑魚モンスターと恐るるなかれ、リアルゴブリンはひぐまと同等に強い。

 ましてや、そんな奴らが群れを成して襲ってくるのです。

 特に女性はピンチです、貞操の危機です。

 やつらは女性の体内に自らの魔力を注ぎ込み、人間の卵子と結合させて子孫を繁栄させるのですから。

 ま、まあ、ファンタジー小説や漫画では雑魚、リアルで出るとトンデモない輩なのです。

 そのままダンジョンでの注意事項を確認しつつ、最後は時計合わせ。


「タイムハック……3……2……1……ハック!」


──カチッ

 全員が時計を合わせます。

 そして作戦開始、私が先陣を切って、魔法の箒で降下を開始。

 そのあとをチヌークが降下、懸垂降下で次々と隊員がダンジョン内部に突入してきます。


 そしてチヌークは上昇開始、5人がこの空洞入り口に留まり、殿しんがりを務めることになります。

 私は魔法の箒から降りて、先頭を進む。  

 ちなみに装備はいつもの魔導兵装、銃火器は無し。

 これには自衛隊上層部も苦虫を噛み潰すような顔で許可を出してもらいましたよ、ええ。

 規律がどうこうよりも命の安全が優先、そう説得しましたから。


 そしてゆっくりと周囲を警戒しつつ、私たちは瓦礫の上を進みます。

 時折感じる腐臭、これは未だこの瓦礫の下に残されている『人以外』の死体の腐乱臭です。

 まあ、新宿はネズミとか多いですからね。

 それでも表情一つ変えず、隊員は私の後ろをついて結界壁の手前まで移動します。

 

「ここから先は結界壁を施してきません。また、浄化の風による大気の清浄化も行っていませんし、何よりもワンダリングが発生する可能性があります」

「ワンダリングというと、先日のダンジョン講習で説明のあった『突然発生する魔物』の事だな。生命が何も無い場所で発生する原理も不可解だが、異世界では当たり前のことが、この世界でも発生するのか?」


 私の説明に、有働三佐が問い返してきます。

 まだ結界壁内部なので魔物の襲撃はありません。

 この空間は魔素が散っていますから。


「そうですねぇ。ぶっちゃけるなら、ダンジョン発生原理の2番以外であるならば、モンスターが発生する可能性があると思ってください」


 ダンジョンは、発生条件などで大まかに三つに区分されます。

 一つ目は、星の中を流れる|魔力河(マナライン)や、こっちの世界に存在するレイラインやマナラインといった未知のエネルギーの噴出によるもの。これは自然発生型と言われるタイプです。


 二つ目が、古い遺跡を改造して作られた、人為的ダンジョン。


 そして三つ目、これが厄介でして。

 ダンジョンスライムという伝承級魔物が発生し、作り出したもの。これはダンジョンそのものがスライムの体内であり、内部に侵入したものを取り込み吸収するというもの。生体ダンジョンと呼ばれるタイプで、とても珍しいものです。

 この場合のモンスターは『体内寄生型』というタイプで、ダンジョンスライムの体内に共生している蟲タイプのモンスターです。

 

「つまり、ここは人為的に作られたものでは無いということか」

「いえ、まだ仮定の域を出ていませんので、一概に否定するわけではありませんが。ただ、ダンジョンスライム型ではないと思われます。奴らは生きているものは吸収できない代わりに、死者や死体はゆっくりと溶かすように体内に取り込みます。そこらへんの瓦礫などから漂う臭気に死臭があることから、ダンジョンスライムでは無いこともわかります」

「もしもそうなら、とっくに取り込まれているということか」

「はい。ですから、このダンジョンは地球のレイラインから噴出した魔力により、ダンジョンコアが発生。ここまで急速に成長したのではと、推測されますが……」


 ここで言葉が詰まります。

 もしも私の話した通りなら、ここまで不可思議で人工的な構造にはなりません。

 自然発生型は洞窟系と相場が決まっていますから。

 つまり、一番と二番の複合である可能性もあると。

 それに、一番最初に突入したときに存在したゴーレム。

 あれは魔族の作り出したもので間違いはない。


「訂正します。自然発生型に何らかの人為的な手が加えられているかと思われます」

「ほう。それについての説明をお願いしたいところだが、あれは敵かな?」


 有働三佐が、正面少し前の結界壁を指さします。

 半透明な壁の向こうでは、5体ほどのゴブリンが結界壁に向かって攻撃を行っています。

 巨大な斧を振るうもの、両手剣で力いっぱい切り込んでくるものなど。

 少なくとも、あのように見えない壁に向かってやみくもに攻撃を仕掛けて来るタイプは下位種。

 ただし、あのように強力な装備をうまく扱っているということは、それを指揮する存在、つまりある程度の知識を持つ上位レベルも存在するということで間違いはありませんね。


「ええ。先ほどの説明にあったゴブリンです。まあ、あの結界壁を越えてくることはありませんけれど、逆にあれを何とかしないと内部調査は行えないということです」

「全員、戦闘準備っ」


――ザッ

 有働三佐の掛け声で、全員が立ち上がり銃を構えます。


「如月、カウントダウンのち結界壁の排除。そのタイミングで一斉射のち、各自の判断で敵をせん滅しろ。サンプルとして捕獲したいところだが、今回の任務はダンジョン調査である」

「はっ!!」


 全員の返事にうなずく有働三佐。

 そして5からカウントダウンが始まると、全員に緊張感が走る。

 

「2……1……0っ」


――Brooooooooooooooooooooooooooooooom

 私が結界壁を消した瞬間、躍り込んできたゴブリンめがけてライフルが斉射される。

 数体のゴブリンが眉間を撃ち抜かれハチの巣になって転がったのに対して、一体のゴブリンは両手剣を盾のようにして銃弾をはじき返すと、そのまま発条バネのように跳躍してライフルを構えた兵士の真ん中に突入してきた。

 同時に特戦群の隊員たちもライフルを捨ててナイフを引き抜くと、近距離でのナイフコンバットに移行。

 残った隊員はとにかく近距離に詰められないようにとライフルを斉射し、とにかく数を減らすことに集中。


「糞っ……こいつら、体の表面で銃弾をはじくぞ」

「こっちもだ。如月三曹、こいつらは化け物なのかよ!!」

「今、奴らの身体を覆う魔力膜をはぎ取ります……ここまで強力に作用しているなんて、私にも計算外ですよっ」


 素早く両手で印を紡ぎ、韻を唱える。

 

「大地の精霊よ……かの者たちに施された加護を破壊し、ありのままの姿に変え給え……魔力破壊ディスペルっっっっっ」


――シュンッ

 私を中心に、巨大な魔力の渦が発生。

 この渦に触れたゴブリン共の身体を覆う魔力膜が瞬時に破壊され、より黒い体表が露わになった。

 それにしても、これほどの強度を持つ魔力膜が形成されるダンジョンだなんて予想外です。

 まるで、魔王国のあの帝城に施された、『魔王の加護』を彷彿とさせてくれますよ。


「敵性対象の魔力膜を破壊しました。けが人は下がってください、私が魔法処置を施します!!」

「了解……と、それじゃあ、ここからが本番だっていうことかよっ」


 先ほどまでとは違い、ゴブリンたちの動きも鈍くなったように感じます。

 膂力は羆レベル、瞬発力は鹿レベル。

 そんな輩が武器を振り回しているのですから、油断すると首が胴体から切り離されます。

 それでも、先ほどまでの劣勢状態から状況は優勢へと転換。

 床の上にはゴブリンの死体が一つ、また一つと増え始めました。


「sncfwighfouthgawmbapvh vawbbhn」


 そして隊長格らしいゴブリンが何かを叫ぶと、一斉にダンジョンの奥へと走り出します。

 どうやらこのままでは全滅すると理解したようですけれど、逃げるターゲット相手にみすみす見逃すほどのお人よしは、この場にはいませんよ。


「構えっ……てい!」


――Brooooooooooooooooooooooooooom

 ライフルの一斉射。

 魔力膜という加護を失ったゴブリンたちの身体に、銃弾が次々と突き刺さっていきます。

 そして気が付くと、逃げ出したはずのゴブリンたちは皆、その場で物言わぬ躯となって打ち捨てられています。


「ふう……如月三曹、敵性存在は?」

「はい……」


 両手を左右に広げ、魔力によるアクティブセンサーを発動。

 この周辺区画には、モンスターの放つ気配は存在していません。


「敵性存在、なし」

「了解。周囲の警戒を続行、体勢を整えつつ交代で休息を。如月三曹、異世界の場合、このモンスターの死体はどのように処分するのが適切かな?」


 有働三佐の問いかけに、私はおとがいに指をあてて考えます。


「そうですね。基本的には素材のはぎ取り、魔石と装備品の回収、あとは放置ですね。ダンジョンにもよりますが、掃除屋が現れて死体を捕食していますので」

「ふむ。可能なら数体ほど、サンプルとして持って帰りたい。どれが良いか選んでくれるか? そのあとは二人つけるので、剥ぎ取りと魔石回収をお願いしたい」

「了解です」


 さて。

 それじゃあ外傷の少ないものを数体選び、後方で待機している隊員に遺体収納袋に収めるように指示。

 そののち、二人の隊員にゴブリンの解体方法を伝授します。


「……と、このように死体の心臓部辺りに魔石があります。これは大気中の魔力を集め、それをエネルギーに変換する臓器と思ってください。ほら、この砂肝のような機関を切り裂くと、中に魔石が入っていますよね……」


 手早くささっと解体。

 本来、ゴブリン程度の魔石なら、大きさは直径2センチ程度の黒い石なのですが。

 このゴブリンからは、1センチ未満の石しか出てきません。


「ちっさ。まあ、ダンジョンが発生して間もなくでしょうし、そもそも地球の大気成分には魔力は殆ど含まれていないからなぁ……って、そこの二人、目を逸らさずにこっちを見る。隣のゴブリンの解体は貴方たちにやって貰いますからね」

「り、りょうか……ウウプッ」


 はい、袋を取り出して盛大に吐きましたか。

 そりゃあ無理もないか。

 見たことのない人型の魔物を解体して、その中から魔石を取り出すなんて作業、慣れない人にはきつすぎますからね。

 まあ、そんなことはお構いなしに、私はどんどん解体を続行。

 そりやあもう、異世界一年目で慣れましたからね。

 わざわざ冒険者ギルドに出向して、解体業務の補佐までして身に付けた技術ですから。


「……さて。有働三佐、ゴブリンの解体作業完了。死体は壁際に捨てておきましたので、あとでスライムが発生して掃除してくれます」

「了解……と、そっちの二人は入り口側後方に回れ、しんがりの二人と交代させる」

「「ハッ!」」


 私と一緒に解体作業をしていた二人は戦闘不能、というかすでに精神疲労限界の模様。

 任務に支障が出るということで、後方と配置変換ですか。


「よし、それでは調査を再開する。如月三曹、異世界でのダンジョン攻略についても、このような手順を繰り返すのだったな?」

「まあ、おおむねこの通りです。漫画みたいに敵を倒した瞬間に素材がドロップしたりはしません。大抵は倒した獲物をアイテムボックスに収納して、街に戻ってから解体屋に依頼するのが通例ですね」

「しかしなぁ……アイテムボックスというのは如月三曹しか持っていないのだろう。それを我々が修得することは可能なのか?」

「適性があれば可能、ということです。今回の任務が終わってから、調べることにしますか」

「そうだな……」


 ということで、再び調査は続行。

 マッピングしつつ回廊を進み、十字路とか行き止まりをいくつも経由して、大まかな地図を作成。

 その途中途中でゴブリンの群れと遭遇すること3回、さらに上位種である『ダークコボルト』との戦闘が2回。ゴブリンについては最初の群れほどの規模ではなかったため、すぐさま撃退からの素材回収が行えましたが、タークコボルト戦では負傷者が続出。

 邪妖精であるゴブリンに対して、ダークコボルトは地属性の精霊。それもダンジョンに出てくるものは瘴気によって凶悪化した存在です。

 一見するとゴブリンとは違いが判らないといわれているように、醜悪な顔を持ち、つやつやと光る藍色の皮膚を持った子供というのが分かりやすい説明かとおもいます。

 しかも、奴らは武器の扱いに長けていることでも有名で、近接戦で特戦群を圧倒していたのです。

 

 休憩を挟みつつ怪我人の手当てを行い、また調査を続行。

 8時間の行程ののち、ようやく第一層のラストと思わしき巨大な扉のある部屋へとたどり着きました。

 ええ、これではっきりしましたよ、自然発生型ダンジョンに魔族が介入しているっていうことが。


「さて、如月三曹。この扉は」

「まあ、俗にいうボス部屋ですね。自然発生型の場合、ここを越えると次の階層へと向かうことが出来ます。先に進むことが出来るかどうか、ふるいに掛けられると思って間違いはありませんね」

「ふるいに掛ける……か。なぜ、ダンジョンはそのようなことを行うのだ?」

「そうですねぇ。これはあっちの世界のパターンなのですけれど、基本的には弱肉強食なのですよ。それでいて、ダンジョンの最下層には『ダンジョンコア』という魔力の集積体が存在します。それを用いることで、ダンジョンを自在に作り替えることが出来ます。それこそ、好きな資源だけが採掘できるダンジョンとかも作れるのですけれど……」


 そう説明してから、扉を確認。


「ダンジョン自体も、それを維持するために魔力を必要とします。それは挑戦者である人間たちの命、魂をダンジョンは吸収して成長を続けます。特に、人工ダンジョンであった場合、ダンジョンコアが力を蓄えるために、強力な魔物を配置することがあるのですよ」

「それなら、わざわざボス部屋など作らなくても、強力なモンスターを配置しておけばよいのではないか?」

「そんな、命の危機しかないダンジョンなんて誰も近寄りませんね……ようは、バランスよくモンスターを配置し、冒険者を誘い込んで魂を回収しようと企んでいるのですよ。ここの主である魔族は」


 自然発生型に魔族が介入し、ダンジョンコアの支配権を書き換えた。

 おそらくは、そんなところでしょう。

 そうしてここで冒険者たちが突入してくるのを待ち、ダンジョンを成長させようというところでしょうけれど。

 問題なのは、どうしてこれが新宿に発生したのか。


「つまり、ここのダンジョンには支配者が存在し、人間の魂を刈り取っているというのか」

「そうですね。魔族が支配するダンジョンということなら、最も効率よく人間の魂を集めるには最適なシステムだと思われます。集めた魂でダンジョンも強化され、それに伴って魔素濃度も濃くなっていく。結果、自然発生するモンスターが溢れ出し、ダンジョンから外に噴出する……ダンジョンスタンピードという現象が発生します」

「そ、そんなことになったら」

「はい。ダンジョンの近隣にある町や村はモンスターの襲撃を受け、最悪は全滅する可能性もあります。そうならないように、冒険者などが定期的にダンジョンに訪れては、モンスターを間引いて宝物を回収している……といったところでしょうか」


 まだまだ、ダンジョンについての説明はあるのですが、今回はこの程度で。

 基本的な部分はあらかじめ説明しましたけれど、戦闘手段とかのレクチャーを優先していましたからね。


「では、このダンジョンも放置しておくと、先ほどのゴブリンやダークコボルトのようなモンスターが溢れ出す可能性があるということか」

「はい。ですから、急ぎダンジョンコアを破壊、もしくは支配権を書き換えた方がいいと思います。それをやるのは、私たち冒険者の役目なのですが」

「今の日本には、冒険者関係のシステムは存在しないからなぁ……わかった、ありがとう」


 ボス部屋前の回廊で、30分の休憩。

 そののち第一階層部分のマッピングを続行し、地図を作成するまでが今回の任務ということになりました。

 さすがにボス部屋に何がいるかまでは、私も知りませんけれど……。

 ここに至るまではゴブリンとダークコボルトしかいませんでしたから、このダンジョンの特性は邪妖精や邪精霊を主体とした亜種族が湧き出るタイプでしょう。

 そう考えると、このボス部屋はゴブリンロードかゴブリンジェネラル、もしくはそれらの複合が待っているという可能性があります。

 さて、それでは一休みしてマッピングの続きを開始することにしましょうか。

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