第27話   パパ、ママを助けて

 ママのなまえは、アルエット。今はイオラがアルエットなんだよ。ママ帰ってきた! イオラがママになる日が、早くくるといいな。


 そう思ってたのに……


「アルエット……」


 パパ、森でさびしそう。イオラが名前でよんでくれないから? おししょーさまって呼ぶんだよ、へんなの……イオラはママじゃないのかな……


「ん? ようやく帰ったか。アルエットはどうした」


 パパはおともだちと、むずかしいお話してたみたいだった。みんなパパとおともだちなの。なにかをきめるときは、みんなでおはなしして、数が多いほうにきめるんだって。ボクらも、おしろにのこってる子と、森ににげちゃったボクらで、わかれちゃったよ。いっぱいいると、むずかしいね。


「まだ、おしろにいるの。ヒモでしばられてて、たくさんひどいこと、されてるの。イタイイタイって泣いてて、かわいそう」


 怖いけど、がんばっておはなししたの。


 お面かぶってるおともだちが、くびをにゅ〜ってのばしてきた。


「痛いことって、まさか切り刻まれて喰われてるとかか?」


「ちがうの。みんなして卵産む穴につっこんで、アルエットが、イタイかキモチイイって言ってるの。アルエット、いっぱい泣いてた……」


 パパもおともだちも、シーンとなっちゃった。ボクのせつめい、ヘタだったのかな。


 ながいおくびが、するするもどってった。


「森を無防備にしないでくれよ、王様」


 パパ、ムムッとしたお顔してる。


金色こんじきの獅子王が人間に喰われてから、俺たちにはもう、あんたしかいないんだよ」


「……」


 体ぜんぶオヒゲもじゃもじゃのおともだちが、あごのおひげをもじゃもじゃなでなでした。


「潮時かのう……獅子王しか、闘志溢れる激しい妖精はおらんかったからなぁ」


「まさか獅子王が敗れるとは。あの忌々しい人間の王族め、喰った妖精の力を代々受け継ぎおって!」


 クマさんみたいなドロドロしたおともだちが、キバをだして怒ってた。


「パパ……」


 パパ、やさしいの。ママがゆっくり妖精になるのを、まってたんだって。いそぐと、ママが苦しくなっちゃうかもしれないから、まってたんだって。


 だからボクらが産まれたのは、ほんの百年前なの。これからママは、たくさん赤ちゃん産むはずだったの。


 でも人間が森に入ってきて、ママはあのお池に、ういてたの……殺されちゃったの。


 ママが妖精のママになってること、きづいた人間が、殺しちゃったの……ボクらの数が、増えないように。


「パパ、アルエットがイタイイタイって泣いてるの……たすけてあげて」


「見捨てろ、森の王。前々から思ってたが、アレはもうアルエットじゃないぞ」


 もじゃもじゃが、はんたいこする……。


「王!」


 パパがすたすた、歩きだしたよ。


「今の私に付いてゆきたいモノだけ、来るがいい」


「パパー!」


 ボクら、うれしくてぴょんぴょんはねた。パパのせなかに、とびのった。


「パパ、ありがとう」


「アルエットのこと、ぜったいとりかえそうね」


「パパ、ボクらも戦うね」


 パパ おへんじしないけど、うん って言ってるの、わかるよ


 パパ だいすき


 ママの分まで ボクらがたくさん いっしょにいてあげるの


 なんでも 味方してあげるの


 ママの分まで……


「待て王よ! お一人とそのチビたちだけでは武が悪いにも程がある。皆に声を掛けて戦士を募る。だからもう少し辛抱してくれ」


 ひげもじゃが、おおあわてしてたよ。よくわかんないけど、このままアルエットに会いにいくのは、あぶないみたい。


「アルエット……」


 パパがしんぱいしたお顔で、とおくを見つめてた。きっと、その先に、おしろがあるんだ。


 はやくママと またいっしょに暮らしたいな


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