第21話 姫の部屋(性描写有)
「わあ、おもらしー!」
ハッと壁側を振り向くと、縄でくるくる巻きにされた妖精たちが天井から宙吊りにされて、はしゃいでいた。
「サファイアひめ、やくそくかなえてくれたー」
ふぁっ!? 約束ぅ!?
「おもらし見せてくれるって、やくそくかなえてくれたー」
なっ!? はあ!? おいお前ら裏切ったのか!? ってか、お姫様はなんてものを約束してんだよ!! はしたないって規模じゃねえぞ!! あ、医療行為なら仕方ないか……って騙されるか! これ完全に王子サマの趣味だろ!!
ちょ、どこまで深く挿れてんだよ、もうほじくってるだろ、その動き。
ああっ もう、マジでそこ、ぐちゃぐちゃにされるの、やだ……
ふええ 手足が動かせないの、つらい。強い刺激が走ったときに、反射的にビクッと体を縮めようとする俺を、縄が引っ張ってきて痛いよぉ。
本格的に泣きだした俺に、手を緩めない王子。ぐいっと何かが大きく広げられて、氷で冷たいのと胎の奥まで空気が入ってきた違和感と刺激に、体が、抗えず――
王子が立ち上がって、呆れた顔で鼻を鳴らした。
「もう、敏感だなぁ。それに回数と頻度が高い。まるで種と果汁が多い、腐りかけた果物だよ。こんなにすぐぷしゅぷしゅ出されちゃ前が見えないから、我慢して」
痛! どこをデコピンしてんだよ、いてえな!
「ノワール、押さえてて」
「はい」
握りしめるな! んなあっさり握るか、普通。他人のなんて絶対に嫌だぞ!
物理的に出ないように手動で固定させ、残り二人は分厚い本を広げては俺の胎の中と何やら見比べて話し合っている。ときおり走る強い快楽に、俺が泣き声混じりの悲鳴を上げてしまうが、誰も気にしていない。
俺の反応よりも、この三人にはもっと大事な目的があるようだ。俺はそれを達成するための、ただの道具なんだ。
「この前よりかなり発達してるけど、まだ人間に戻せる段階だよ。このまま城に隔離して、森の成分が抜けきるのを待とう。サフ、ノワール、毎日ここを触診して、カルテに記入していってね」
「はい」
「承知いたしました、お兄様」
「人間に戻り始めると、ここから大便も出るようになるだろう。洗わなくても中は見えるけど、気になるなら器具を使って洗ってね」
「はい、お兄様」
俺の、尊厳とか、そういった概念が、この部屋じゃ霧のように儚い。
ノワールとか呼ばれてるチビガキが、とつぜん小さいくしゃみした。そのはずみで、手も離した。
「あ、手が」
我慢に我慢を重ねがけさせられたせいで、俺にも全員にも、かかった……。そこから先は覚えてない、たぶん、自身のあまりの痴態にショック受けて、気絶したんだと思う……。
「よし、今日はこんなものかな。それじゃみんなでお風呂に入ろうね」
意識が無くなる直前、王子サマがカルテに何かを記入しながら、そんなことを言ってたような、気がする……。
目が覚めた俺は、何の冗談だろうか今度はピンクのレースがついた天蓋付きベッドに縛りつけられていた。バスローブっぽい格好で。壁も天井も、ここから見回せる範囲内で見える家具も、全部イチゴケーキみたいな色彩かつ可愛いデザインだった。ドールハウスってヤツか? でも全部が人間サイズだぞ。
「あ、起きた」
部屋の片隅で、ノワールってクソガキが妖精たちとドミノ倒しみたいな遊びをしていた。俺と偶然に目が合うなり、
「ねえサフ、起きたよ」
誰かを呼んだ。
そのサフってヤツは、となりの部屋で何かしていたらしく、扉を開けてすたすたと入ってきた。あれ? サファイア姫と顔がそっくりだ。青く輝く瞳といい、長い銀髪といい……だけど服装が、いかにも良い家柄のお坊ちゃんって感じの紳士服だった。
姫のお兄さんか、弟かな。この城の家族関係の相関図って、どこで確認できるの。あの王子サマの名前もまだわからないし、何人兄弟なのかも何もわからない。
ついでに、このラブリー過ぎるベッドで固定されている経緯も全くわからないんだが。
「おはようございます」
「え、朝なの?」
「はい。あなたは一日と半日ほど、眠っていました」
声もサファイア姫にそっくりだ。
「……もしかして、サファイア姫の弟か、お兄さん?」
「いいえ。僕がサファイア姫です」
「はい?」
「僕には名前が二つあります。ルナリア王子の側近の、サフィールと申します。普段は王子の助手をしております。先ほどあなたのカルテを読み直した後、棚にしまっておりました」
カルテ作られとる。俺はいつ診察の予約なんて入れたよ。
「お前がサファイア姫なの? 俺はどっちの名前で呼んだらいいの?」
「お好きに」
「……じゃあ、サフィールって呼ぶ。その格好してるときは、お姫様には見えないし」
「どうぞ」
声にも顔にも表情がないヤツだな……。何を考えてるのか、全然わかんないよ。こいつの後ろで妖精達と遊んでるノワールってやつは、もっとわかんないし。
「お体に変わったことはありませんか?」
「んー、わかんねえ。なあ、この縄ほどいてくんね? もうさんざん調べただろ。それとも、まだ俺の体に用事あんの?」
「あります。だから解放できません」
うっそだろ……もう勘弁してくれよ。街の人間たちを眠らせてただけで、ここまでひどい目に遭うもんなの? こいつらの考えてることが、なんにもわかんなくて、気味が悪い。
「……お前らは俺のこと、窓から飛び降りて死んでも構わないって思ってんだろ。だからあんなひどい拷問ができるんだ。お前らの下で働いてる国民は気の毒だな」
「いいえ、ぜひとも長生きしてください。あなたの身体は、大変貴重なサンプルです。過去の記録と比較して、データを採取できます。ルナリア王子が、羞恥に泣きながら乱れ狂うあなたの痴態に大変満足し、翌日はすっきり起きられたそうですよ」
「おい! 最後おかしいだろ! お前らも目ぇ覚ませよ、あの王子サマぜったい頭おかしいぞ!」
俺に事実を指摘されたのが不愉快だったのか、それまで無表情だったサフィールの顔が、むっとした。
「人聞きの悪い……まるで我々が間違っているかのような言い草です」
「そう言ってんだよ。今だってラブリーなベッドに他人が縛られてて、それと冷静に会話してるこの状況のどこが大正解なんだよ」
「泣いて甘えるあなたを、我々が三人がかりで洗ってあげたのを覚えていないのですか? 王子を侮辱し続けるならば、もう洗ってあげませんよ」
は、え……? 野郎四人でお風呂に入って、俺を洗った?
覚えてないぞ……。そう言えば最後に王子サマが風呂がどうのって言ってた気がするけど。ってか、王子サマの名前はルナリアって言うんだな。聞き慣れないせいか、不思議な響きに聞こえた。
「お兄様と我々は、王族しか使えない特別な浴室に、あなたを抱えて運び入れました」
「へえ、そりゃどーも。過酷な性虐待で意識が飛んだんだわ、だから俺はお礼なんて言わねえ」
「お礼だなんて、むしろ謝罪を要求します。あなたのせいで、我々の顔面も着衣もベタベタになりましたからね」
う……。お、俺は悪くないぞ、お前らが俺の胎ん中ほじくりまわすからだろ。マジで痛いとこも突きまわされたし、その、奥の内壁のぬるぬるは、マジでなぞり上げないでほしい……どうしても、声が出る……
「薬草と香辛料を煎じた入浴剤には、氷で冷えたあなたの体を、温める効果が期待されます。お兄様に抱えられて湯船に浸かったときのこと、覚えていますか?」
「記憶にねえよ」
転んで片手を骨折したときは、兄弟に頼んで背中と頭を洗ってもらった。それも五歳くらいのときだから、あんまり覚えてない。
サファイア姫もといサフィールいわく、浴槽に沈む際に俺は怖がって、王子サマのうなじにしがみついて、胸に顔をうずめて震えていたらしい。そして小さく、弱々しい声で、
『怖い……ずっとそばにいて、お願い……』
「いやいやいやありえないだろ!! 嘘つくなよ!! お前らのほうがよっぽど恐ろしいことやらかしてんじゃねーかよ!!」
「その恐ろしい事の中には、『もっとソコ、舐めて』等、あなたからの指示もありましたが」
お前もかよ……お前も再現して説明するタイプなのかよ。ってか、ヤバイことしてる自覚あんじゃねーかよ!
今だって、俺また縛られてるし、酷くねぇか、この扱い! いくら俺が人間じゃないからって、何しても許されると思うなよ!
「なあ、ほどいてくれよー、なんでお前ら、俺に酷いことばっかりするんだよ。勉強ならカエルの死体とか、もっと小さい生き物を解剖して学べよ」
「勉強といえば、あなたのお腹の中に発生した未知の器官は、真っ赤に腫れていました。あの森で、ずいぶんと辱められていたそうですね」
「え……? な、なんのことだよ」
「何も覚えていないのですか。あなたは暖かなお湯に浸かりながら、ずっと王子に抱きついて、何かに怯えていました。王子が優しく肩まで浸からせ、理由を尋ねてみると、森の美しい泉の中で、血に濡れた睡魔王の指に七日間も犯されていたと」
…………。
「あなたは入浴を怖がっていたのではなく、草木の香りがする水を恐れていたのだと思われます。そこまで無理を押してまで、あなたは妖精になりたかったのですか?」
「……え? 俺は生まれた時から妖精だけど」
「いいえ、あなたは元は人間です。名前は……イオラ、でしたっけ、お風呂の中で自己紹介してくれましたよね」
イオラ? なんじゃそら、初めて聞いたぞ。俺の名前は、アルエットのはずだろ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます