第12話   俺がお師匠様の、奥さんに?(性描写有)

 俺が誰の手も借りずに魔法を使うには、何百年もかかるんだって。まず自力で魔力を生み出すところから目指さないといけなくて、それが数百年かかるそうだから、今の俺が魔法を使うには、お師匠様から魔力を補充してもらうしかないらしい。


 その方法が、あの泉で、お師匠様の指からこぼれる鮮血を、胎の壁に擦り込むというもので……つ、つまり、新しい魔法の練習のために、魔力を使い続けて、それがガス欠を起こしたら、またお師匠様に……アレをシてもらわねばならないと……。


 それが嫌で、何とか一発でコツを掴もうと、妖精たちにいろいろと教わりながら魔法を放ってみたんだが……なかなか思う方向に飛んでくれなくて……。


 もうやめる、復讐なんてしない、と諦めたら解決することなんだろうが、どうしてもそれは悔しいから嫌だった俺は、


「お師匠、様……もう無くなっちゃったから、アレ、シてほしいんだけど……だめ、かな……」


 木漏れ日の下で、たくさんの妖精達と、何やら話し合っていたお師匠様が、一人になった頃合いを見計らって、相談した。


 もじもじと手を前で組み、猫背になってしまう。お腹を危害から守ろうと、無意識に手で庇ってしまう自分がいる。


 お師匠様は流し目で俺を一瞥すると、蹄を鳴らして歩き出した。


「ついてきなさい」


「……はい」


 正直言って、この森の誰にも醜態を晒したくなかったけど、あの目隠しオレンジ野郎に一泡吹かせるためだと、自分を励まし、あの泉に裸で入って、お師匠様から魔力をもらうべく自分から足を開いた。



 終わった後は、胎が熱くなる……。足腰もガクガクになり、しばらくは熱い胎を抱えて、大樹のウロの中に隠れてじっと丸まる。


 魔力を注がれたばかりの俺は、非常に敏感で、無防備だった。


 今、あいつに襲われたら、ひとたまりもない……また棒なんか突っ込まれたら、俺――濡れた体を抱きしめて、胎の疼きが鎮まるのを待った。



 また、魔力がからっきしになって、補充したらどうかと妖精たちに言われた……。なんか、一日に一回は魔力切れ起こしてる気がする。その度に、最近忙しそうにしてるお師匠様に、声をかけて、わざわざ補充に付き合ってもらって……恥ずかしいし、迷惑だろうし、できれば、あんな乱れた俺は見られたくなかった。


 でも、これもあいつに勝つためだ、耐えろ俺! 甘えた声が漏れたって、この水音が掻き消してくれる!


「誰のことを考えている」


「アヒィッ!」


 お師匠様が俺の内太ももを片手で掴んで、持ち上げた。無防備に拡げられたソコを、お仕置きとばかりに何度も貫かれ……俺は立っていられなくなって、後ろに倒れそうになった。気づいたお師匠様が片手で受け止め、赤ちゃんを抱っこするみたいに、俺を軽々と抱き上げた。


 グスッ……と鼻をすすってしまう。涙もこぼれ出てしまった。


「もう、無理だよぉ……お師匠様の指、太いんだもん。水だって……補充のたびに汚れちゃうし」


「胎の調子はどうだ」


「っ……胎ん中じゃないと、ダメなのかよ。なんか、ますます胎の奥が敏感になってきて、このままじゃ俺、強くなるためじゃなくて、お師匠様にシてもらうためになっちゃうよ……目的が変わっちゃうよ……」


 嫌なのに、お師匠様の指が恋しくなる。いっぱいシてほしくなる。嫌なのに、ここに指じゃないモノが入ってくるのを待ってる自分が、すごく気持ち悪い。


「アルエット」


「もうこの修行、やだ……みんなの前で喘ぎながらオタマジャクシ放流し続けるの、耐えられないよぉ!」


 青い胸板をべしべし叩きながら、ぼろっぼろこぼれる涙を手の甲で拭い続けた。でも、ほんとにこの修行イヤで、もう我慢なんてできなくて、気付くと赤ちゃんみたいにわあわあ泣いていた。


 お師匠様の大きな顔が、困った表情になっている。最初はあやすように腕を揺らしていた、でも泣き止まない俺に、次に取った行動は――


「ねえこの流れでシゴくのおかしくない!? お師匠様たちはお花だから、繁殖がご褒美な文化かもしれないけどさ!」


「お前が嬉しそうに産声を上げていた、この方法が、一番元気になると思ったんだが」


「俺を励まそうとして!?」


 とりあえず手を放してもらった。


「俺が泉から産まれたばかりの頃も、そんなことしたって言ってたよな。森だと、それが常識なの?」


「お前が泉から浮かび上がってきたとき、私はとても嬉しかった。泉に入り、お前を抱き上げ、冷え切ったその身を温めた」


「そしたら俺が元気になったと……あのさ俺、背中とか撫でてもらうだけでも充分嬉しいから、下半身を刺激するのはやめてくれよな」


 すっげー悲しそうな顔するから、言葉がきつくならないように、かなり気を遣って説明したんだけど、わかってるのかな、この人。


「……身も心も冷えきったお前を、放ってはおけない。すぐに体温が上がる手段なのに、やめるのは残念だ」


「応急処置のつもりでやってたの。水から出たら、また体があったまるから、心配しなくて大丈夫だよ」


「アルエット……」


 大きな親指が、ほっぺたをぬるぬる撫でる。この人は、いったい何を心配しているんだろう……。何かがよっぽどトラウマになってるような、そんな感じがする。


「駄目だ、約束はできん」


「え」


「お前が今にも絶命しそうであれば、強行する」


「弱りきってる相手に? トドメになるわ」


「元気を失ったお前を見たら、ついやってしまう」


 ついで、やることじゃないだろ……。そのツッコミが口から出る前に、痛いくらいに抱きしめられて、ぬいぐるみみたいに頬ずりされた。


「お前が元気に産声を上げてくれたときは、本当に嬉しかった。会えるのをずっと、待っていたから」


「ずっと? 俺が産まれるのを?」


「アルエット、あとほんの少し体が大きくなったら、私と交尾するのだぞ」


「え!?」


「たくさん交尾しよう。あの頃よりも、もっとたくさんだ」


 ひ、ひえ……あの頃って、いつだよ。子供の頃から嫁さんを育てるとか、源氏物語かよ。ていうか俺、性自認は男なんだけど、お師匠様はそういうの気にしないの? 今のところ合意ですらねえんだけど。


「さて、修行を再開する」


「このタイミングで???」


 俺は再び泉の底に下ろされた。たくさん交尾したがってる相手を目の前に、裸で向き合う、この状況よ……。


「んぅ……やっぱりもう少しだけ、休ませて、ほしいかも……」


 怖がってお願いする俺の中を、指の腹でなぞり上げながら這い進んでゆく、青い指先。


 水面の波紋の揺れるのが激しくなってゆく。恥ずかしくて、少しでも耐えたくて、泉の底の泥を、足の指でギュッとつかんでいた。


 ……いっぱい交尾したいなんて言われたら、この太い指、別のモノに思えてくる……でもお師匠様のモノは、こんな規模じゃない。一度だけ、水浴びしてるお師匠様のがデカくなってたとこ見たことあるけど、とんでもなかったぞ。あんなの、人間のどこの穴にも入らないって。


 いつか、お師匠様ときっちり話し合わなきゃ……俺の生死に関わる問題だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る