悪役系転生お嬢様のボックスに転生した話

鋼音 鉄

聖天守護の道

一話 秀才バカと天才バカと鍛錬

「私、悪役になりたいのですよ」

「そうか、ならば鍛えないとな!」


幼少期のそんな会話が原因だった。『玩具箱アイテムボックス』と話しているのはカレン。赤い髪をした、西洋の顔立ちのお嬢様だった。そしてカレンと話している『玩具箱』の名前はレイド。両者が話している場は、レイドの能力である『玩具箱』の中である。


これから始まるのだ、レイドの、カレンが悪役になる為の授業が。その授業の内容としては、この世界に蔓延る魔力から始まり、武器の扱い方。魔力を利用してでの魔術の使用する、効率よく発動する方法。カレンが半端な悪役では終わらないように。ラスボスとして、生を終える事ができるように、強くさせる。


独りぼっちで、寂しくて、孤独に体を震わせていたレイドを救ってくれたのがカレンだ。そんなカレンを、未来の敵に殺される手伝いをしなくてはならない。心が締め付けられ、苦しく感じる。しかし、主であるカレンの夢を叶える為に覚悟する。この世で一番の大切な人を失う覚悟を。









「悪役となる為にはね、先ず魔力を知覚する方が最低ラインだよ。魔力を知覚できなければ、並大抵の攻撃は避けられない。魔力を知覚しなければ、本来理解が可能な攻撃も理解をする事ができなくなってしまう」


どんなに魔力、魔術のポテンシャルを持っていたとしても、魔力という手を持っていないければ何も意味をなさない。魔力を扱う術が無ければ、その才能は塵へと化す。しかし、魔力に目覚めさせるという事は、至難の業である。魔力が目覚める条件は才能でも何でも無い。運、ただそれだけだ。


けれども、カレンは運が良い。魔力が自然に目覚めるまで待つ必要なんて無い。この場に立っているのはレイドである。何故レイドが居るから問題無い、となるのかは、レイドを含めた『玩具箱』の説明をする必要が出てくる。


魔力を使用するスキルの中でも、稀有な存在がレイドを含める『玩具箱』である。魔力を一切必要としていないのにも関わらず、魔力に深く関係しているからだ。発動するのに全く魔力を使わないのに、発動する時に自然と魔力を放出しているからだ。なので『玩具箱』持ちの人間は昔には【生きる永久機関】と呼ばれていたりしていた。


そんな『玩具箱』であるレイドだからこそ、待つ必要が無いのだ。魔力を知覚、操作、運用、効率、その全てが、魔力に長けている妖精よりも遥かに上である。気まぐれで、何処に存在しているのかよく分からない妖精よりも、身近にいるスキルの方が上なのだ。だからレイドはカレンを幸運だと評した。


カレンの額に、レイドの指を当てる。突然な事で申し訳ないのだが、魔力というのは時間勝負となってくる。才能の大小で元の魔力の大きさの差はあれど、長い年月が経てば経つほど、魔力を知覚した時とは比べものにならない程の魔力が手に入る。鍛錬をすれば上昇幅は広くなるので、長くの年月を生きた方が魔力が強い、という事では無いのだが。


魔力がカレンに流し込まれる。自然に魔力に目覚める時と比べると、体への負担は強くなっているだろう。しかし、レイドがカレンの魔力の目覚めを肩代わりをしているので、事実としてはカレンがダメージを喰らう事など無い。


「どんな気分だ?悪役ラスボスとしての一歩を歩んだのは」

「凄く、良い気分ですよ。ありがとうございます、レイド。悪役一般悪役としての一歩を歩んだのは、心地良いですね」

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