オープン・ザ・ボックス

山本アヒコ

オープン・ザ・ボックス

 昔から箱を開けるのが好きだった。

 たしか幼稚園に通っていたころだろう。クリスマスか誕生日か、それとも単に親が買ってきたのか忘れてしまったが、プレゼントの箱を手渡されたときの胸の鼓動を今も覚えている。これが原体験だ。

 それから私は家にある箱という箱を開けていった。

 おもちゃ入れになっているプラスチックケース。母親のアクセサリーケース。父親の趣味である積んであったプラモデルの箱。カレールーの箱。とにかく何でも開けてまわった。親にはしこたま怒られた。

 箱の中身そのものには興味がなかった。ただ箱の中に何が入っているのか気になってしょうがなかった。

 箱に入ったお菓子をもらうと、箱を開けて中身を確認した瞬間欲しくなくなる。なので中身のお菓子は友達にあげていた。

 こういう子供だったので、まわりからは変な子供だと思われていた。

 大人になってもこの嗜好は変わらないままだった。箱を見ると中を見たくてたまらなくなってしまう。それでも子供のころよりは自制心があり、むやみやたらに開けたりはしない。

 ただ、たまに好奇心に負けてちょっとしたトラブルに巻き込まれることもある。

 ある日、ショッピングモールの片隅に置かれた段ボール箱を見つけた。どうしてもその中身が気になってしまった。近づいて観察してみると、全体は無地で文字が印刷されてはいない。蓋もテープで閉じていなかった。一度閉じて開いた跡もない。つまり、簡単に中身が確認できる。

 私はそっと段ボールをのぞいた。爆弾だった。

 ポケットからスマートフォンを取りだそうとするが、指が震えてなかなか掴むことができない。警察に電話しようとするが指が動かない。何度も三桁の電話番号を間違えて、やっと成功した。

「すいません……あの、爆弾、見つけてしまいました……」

 その後のニュースでこの爆弾は、最近飛行機をハイジャックして爆破したテロリストグループのものと同じだと報道された。

 その事件についてネットで調べてみる。ハイジャック犯は飛行中に飛行機を爆破したため広範囲に機体の残骸が散らばり、それを探すのに苦労しているようだった。まだ見つかっていないもののなかに、ブラックボックスというものがあった。ブラックボックスとは、飛行機の状態やパイロットの音声を記録したもので事故の調査に使うようだ。

 ブラックボックス。その中に何が入っているのだろう。

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オープン・ザ・ボックス 山本アヒコ @lostoman916

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