第12話
僕は何だか関わってはいけないような話を聞いたが、でも胸くその悪い話でもあってトオルのことを思うと悲しく、そしてこの町の後発民に対し無性に腹が立ってきた。
注文した料理が到着し、一時の間、会話は中断した。
「何がどう良くて、何が悪いかって話ではなくて単純に集団から個人への『イジメ』はダメでしょうって思うわけ。子供だったらイジメと呼び大人だったら村八分と呼ぶ。こんな悪習は許せない。イジメられる方の原因もあるなんて主張する人もいるけど、結局はその中身次第でしょ?確かに協調性が無くクラス全体を悪い方向へと誘うような子が、正義感の強い子たちに目の敵にされるケースも勿論ある。でも少なくともこのケースは悪質だとは思う。結果だけを見てどうこうじゃなく、過程やその方法、やり方や考え方と残虐性に問題があり、その判断に、良い、悪いを付けることは出来るんじゃないかしら」
僕も同意見だと思った。直接の説得や交渉、話し合いを繰りかえすことが正々堂々と言える訳であり、他者の力を使い多数に根まわしまでして個人を省き、疎外させ、迫害するという方法は策士でも戦略でもなんでもなく、ただの侵略と粛清である。
「だから、今度はもう直接トオルくんのご両親にお話しを伺いに行こうと思ってるんだけど・・・君、協力してくれない?」
「・・・ええ、もちろんです。是非、ご一緒させて下さい!」
僕は、これがトオルの無念なんじゃないかと確信した。トオルだけでなく、一族がずっと受けてきた仕打ちや立場の無念が蓄積されているような気がして、追及にやる気が満ちてきた。先生も同じ気持ちであるとも確信し、僕はこちらへ帰省してきた一連の話を包み隠さず先生に話していった。
「・・・・・・そう、不思議な話ね。霊感なんて私には全く無いから分からないけど、けど、きっとそうゆうことなんでしょうね。なんだか切ないなぁ。全てをどうこう出来る訳なんてないんだけども、せめてトオルくんの無念というか、気持ちだけでもスッキリさせてあげたいわね」
「・・・僕、トオルの実家に明日でも行って見ようと思います・・・一人でも。今日も仕事は休んだんです。この際、ハッキリさせないと何も手に付かないって感じでどうしようもないんです」
「無茶はしたらダメよ」
「はい。前から考えていたんですが、何も知らないフリでもして普通にトオルを訪ねてみます。もしかしたらもう今はご両親も落ち着いていて、積極的に親御さんから色々聞けるかもしれないんじゃないかなって思うんです」
「なるほど、そうね、君にならそんな方法が使えるわね。いいんじゃない。期待してるわ!」
僕らは持っているフォークやスプーンを置いて腕を組みあった。
「申し訳ないけど私は学校を休むわけにはいかないから、今日と同じ夜の時間なら優先して動くし何かあったら電話して。私は中学時代の先生とかをまた当たってみる。何年も前に調べたんだけど殆どが異動していて話を聞ける人が居ないのよ。校長や教頭まで行っちゃうと話がややこしくなりそうだしね。もしかしたらまた異動で戻ってきた先生がどこかには居るかもしれないし」
「そうですね。先生も、無茶しない様に気を付けて下さいね」
「ありがとう。あ、そうそう、じゃあトオルくんが最後に亡くなっていたマンション、住所は分かったの。教えておくわ。母親と最後に暮らしていたとこね」
僕は住所が書かれたメモを見て驚いた。何故ならそこは僕が今住んでいるマンションだったからだ。
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