第13話

 トオルが家のマンションで遊歩している理由がこれで分かった。最初からずっと僕に言いたいこと、伝えたいことがあって出てきていたんだ。尚更トオルの無念が伝わってくる。


 トオル・・・必ず、助けてやるからな。


 そう誓い、翌日に意気込みを掛けた。



 小糠雨こぬかあめ が降り注ぐ。傘を差す必要性を感じない程の霧雨が冬の寒さをより強調させ行く手を阻むかのようでした。みぞれとなってもおかしくない寒さで、雪と化すのはもう少し後の月だ。

 フロントガラスに無数と付着する小雨は車の風速で乾きまた付着する。遠くの山々には日が差し込みの準備をしているようだった。


 先生と行ったトオルのお墓を横切り、山道を突き進む。針葉樹が立ち並ぶ隙間を人口のコンクリートが切り裂き進む道を僕は登って行った。

 いつの間にか砂利道へと変わっていた切り裂き通路は左右から枝葉が延び、車の側面を容赦なく叩きにかかってくる。僕は気にせず少し悪路に酔いを感じながら気合を入れた瞬間に鳥居が見えてきた。ここからは徒歩で長い階段を登らなければいけないらしく、車を停めて鳥居を潜り上部を眺めた。今が夏場ではなかったことに安堵する。


 それにしてもここまでいくつかの分かれ道があったが一発で到着した自分自身に驚いた。恐らく、幼い頃に来たことがあるのかもしれない。


 一歩づつ、雨で濡れた石階段に足を滑らせない様に気を付けながら歩を進める。息切れが始まり、寒さでガウンジャケットを羽織ってきたがじんわりと汗が滲むほど身体が温まり、歩みのリズムに無心と成り出したころに階段は最終地点と到達し二つ目の鳥居が僕を出迎えていた。視界には小さな小屋が三つ、道なりに参道の先中央には他の小屋よりかは少し立派な本殿があり、先ずは疲労の回復を図りながら参拝をすることにした。


 他に参拝者は誰も居なく、道のりから考えるとなかなかここまで来る人は居なさそうだ。有名な神社の場合はどんな神を祭り何のための社かという説明の看板がよく立っているのだが、そんなものも見つからず管理者のような人すらも見当たらない。

 奥の小屋の前には

「関係者以外立ち入り禁止」

 と表示された看板が足元に倒れていた。よくみると石段には苔が多く張り巡らされていたり小屋も埃っぽく人の手が入っていない感じがした。

 とりあえずこの看板の向こうにトオルのお父さんが居るかもしれないと思い、看板を無視して小屋の扉をノックしようとした。すると約十センチ程、引き戸が開いているのに気が付き

「すいませーん」

 開いている隙間から少し覗きながら、小屋の奥まで聞こえるぐらいの音量で呼びかける。が、応答は全くなかった。


 少しだけ戸を更に開けて

「あのー・・・・・・」


 外の光が小屋の玄関を少し照らすと人が倒れている足が見えて僕はぎょっとした。

「えっ、あの、すいません、大丈夫ですか?!」


 中へ入ろうとする前に悪臭が鼻を襲い仰け反った。

 まさか・・・・・・

 

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