第7話

 仕事をズル休みをした。初めてだ。僕は最近よくいわれる「社畜」てやつなのかな。今どき珍しいかもしれないが結構、仕事が楽しくて好きなんだ。仲間との連携や教育、実績、評価、嫌なこともいかることも、批判されることもあるが自身の成長を感じられる実体験が仕事にはある。スポーツと同じだ。


 そんな僕が全てのやる気を失った。経験はないが、恋人を突然失ったような気分だった。携帯電話がけたたましく鳴っている。きっと職場からだ。しつこくてうるさいから電池を抜いた。何もやる気が起きない。自責とトオルのことで頭がいっぱいだった。今更、何ができるだろうか。全てが遅い。これから何かをするにしても、それは自己満なだけだ。トオルの為ではない。自分が許されたいから、納得したいから、自責の念から解除されたいだけの行動に過ぎない。そんな自分にもますます嫌になる。


 丸一日考えていた。無駄か。必要か。何のため?意味はあるか?


 考えた挙句、何でもいいから自分の為にも行動しようと決めた。天国だとか死後の世界とかは知らない。それこそ死んでみないと分からないが、僕が聞いて知っている世界では「成仏」ってことをしなきゃいけないんだろう。ならトオルはずっとここに居ちゃいけないんじゃあないか?僕は個人的に会えて、知れて嬉しかった。後悔や悲しみ、寂しさ等はあるが知らずにのうのうと暮らしていたことの方が今や嫌だなと思える。


 でもトオルはどうなんだろう。


 こじつけかもしれない。勝手な価値観で決め付けてはいないか。でも、この際なんでもよかった。もし僕がこれから取る行動が間違っていたのなら、僕が死んだ時にトオルのとこへ謝りに行こう。そんな安易な結論で僕は自宅を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る