第67話 勘違い×勘違い
本当に羽村のお姉さん? のお店なのか聞かないと、ここに残っていいのかもわからない。
聞こう。
「えっと……ここって羽村のお姉さんが経営してるのか?」
「あー聞いてたんですか~~そうですよー」
あー本当にそうなのか。
それなら別に構わないけど。
でも感謝の旨とかをしっかりと伝えておかなくては。
「あのさ、羽村。この今日の作業が終わった時でいいから少しだけお姉さんに会う時間くれないか?」
「え? どうしてです? ………もしかしてお姉ちゃんを口説こうとしてます? ……絶対に会わせませんよー」
えっと……どうしてそうなるんだろう……
俺は別に口説こうとした訳じゃないしな。
全くなんで羽村はそういう解釈を?
うーん。本当になんで?
「えっと……口説こうとはしてないよ?」
「さっきの言い方! どう考えても口説こうとしてましたよね? やっぱりお兄さんも胸が良いんですか!? 胸なんですか!? そうなんですか!?」
勢いがすごい。
俺はただ羽村のお姉さんにここを使わせてくれたことに感謝しにいこうとしてただけだし。
そこからなんで胸の話に飛躍したんだよ。
まあ少しくらいは気にならないこともないがその程度だ。
もしかして羽村って……ムッツリか?
まあでもなんで急にそんな話に?
「うーん……別にみんなも一緒でいいからさ。むしろその方が良いかもしれないな。」
「え……お兄さんみんなの前で……それってもしかして告……絶対に駄目です!」
そこまで言うことはないだろう。
俺は別に悪くない。
でもな……このまま放置して感謝しに行くと羽村が怖いからな……やっぱり清瀬に頼んでもらうか。
それは清瀬に押し付けるようで悪いな。
今は許してくれなさそうだし後から帰るついでにでもお礼をしに行けばいいか。
「分かったよ。なんで止められてるのかはよく分からないけど別に後からでも良いからな」
「……っ。後からでも駄目です! 駄目なんです!」
勘違いした羽村が俺を怒鳴る。
その声を聞いたのかトイレの近くまで日野さんがやって来た。
「二人ともー何してるのーさっきからめっちゃ大きな声してるけど……」
「だから! なんで会ったばかりのお姉ちゃんに口説こうとするんですか!」
「あっ! 日野さん! お願いだから助けてく……」
「あー私は何も見てない。見てないからー!」
そこで見捨てるのは無くない?
助けてくれてもいいと思うんだけどな……
「ちょっ待っ……」
「お兄さん? なんで今助けを求めたんですか? やっぱり口説こうとしてたんですよね? ね?」
どうしてそうなるんだ。
本当に違うんだ、誤解だって。
それに羽村、どうしてそこまで必死に止めようとするんだよ。意味わかんないって。
「いや、だからそれは誤解だって。普通に考えて会ったばかりの人に告白なんてする訳ないだろう。俺をなんだと思ってるんだよ……」
「ムッツリスケベさんですよね? お姉ちゃんの胸ばかり見て! ……私だってそれなりにはあるのに……」
いや、できるだけ見ないようにはしてるんだよ。
だってジロジロ見てたらおかしいし。
でもな……健全な高校生としてそういうのに興味を持たないのもおかしいと思うんだよな……
なんか今の発言俺にぶっ刺さた気がするけど……まあ多分そんなことはないな。俺普通(本人目線)だし。
「そんなことはないと思うけど。少なくとも堂川とかペディアとかよりはマシだとは思うし。それにあんまり恋愛とか興味ないし」
あ、今の俺割と最低発言したのでは?
どうしよう……乃愛、俺もしかしたら羽村に嫌われちゃったかも……ごめんよ〜〜
それに強がってしまったしこれはマズいのでは?
普通に考えて恋愛に興味ない訳ないだろ……
まあ恋愛は諦めてるからニュアンス的にはほぼ同じか。
「それは……そうですけど……そういう話ではなくてですね! 今はお兄さんについての話をしてるんです!」
「いやそれは誤解なんだって。乃愛に誓って嘘じゃない」
「……本当にですか?」
「いや本当。乃愛に聞いてみ?」
「……乃愛さんが関わってくるのなら本当なんでしょうね。分かりました今は許します。……それにしても好意に気づかないどころか恋愛にすら興味なかったなんて……こんなの……」
いや、よく考えたら今ので納得するのは普通に意味わからなくないか?
普通は信用できないだろ。
よく分からないな……とにかく乃愛は偉大ってことか!
「納得してくれて何よりだよ。まあそれはともかく最後の方なんかボソボソと言ってなかったか?」
「べ、別に何も言ってないですよ。勘違いじゃないですか?」
いや絶対に何か言ってたし。
何を誤魔化してるんだろうか。
よく考えたら姉がいくら大事とはいえ、あの防ぎ方も少しおかしい。
だって俺が乃愛を守るときだって相手が相応しくないということを突きつけるのが基本だ。
もしくは単純な拒絶だろう。
……あーそれとお前のお兄ちゃんにはなりたくないっていうのが普通かな。
そう考えるとやっぱりおかしい。
何か別のことを考えていたのか?
まさかな。
羽村は作業の連続で疲れてたのだろう。
「あんまり無理するなよ。俺のことなんだし疲れたなら手伝ってくれなくてもいいからな」
「……?」
羽村は頭にはてなを浮かべたような顔をしていた。
そこまで疲れてたのか。
まさか疲れに気づかないくらいまでやらせていたなんて……
「ごめんな羽村、無理させてしまって……」
「いきなりどうしたんですか!? 無理なんてしてないですよ!?」
俺を気遣ってくれてるんだな。
なんて優しい子だ。流石乃愛の友達なだけあるな。
「いいから休め。俺のことなんだしそこまで熱心にやる必要はないからな」
「えっと……お兄さん……勘違いしてません?」
何が勘違いなんだろう……
一体全体どういうことなんだ?
全くもって分からない。
俺も疲れてるのかな……
「むしろやること無くて暇してたくらいですよ?」
「えっ?」
羽村から聞かされた衝撃(本人目線)の言葉に俺は一瞬何を言われてるのか分からなくなった。
そうならなんでさっきボソッと?
余計に訳わからなくなってきたぞ。
俺はその場で頭を抱えるのだった。
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