第64話 恋愛の無自覚補助と、白い目線。
俺達はカフェに来ていた。
というのも、歌詞作りをしないといけないからだ。
正直言ってもう帰りたい気分はあったが、そういうわけにもいかない。
嫌なことを後回しにするのはかえってあとから面倒になるし、それこそやる気が起きなくなる。
本末転倒ってやつだ。
今日の頑張りは何だったんだってなるに違いない。
だから、できるだけ早くこうやって行動を起こしているのだ。
まあ、それが普通のことだし。
「あの、これって私必要ですか?」
羽村がそんなことを聞いてきた。
何を今更言っているのだろう?
必要だから来てもらったというのに。
全くよく分からない。
「必要も何も、人手が多いに越したことは無くないか?」
「えっと……二人に全然ついて行けてないんですが……」
「それでも意見って必要だろ? 俺こういうの作ったことないしさ、やっぱりこんな人数少ないと心配でさ。」
「それはそうかもですけど……もう一度言いますけどそれならなんで本当にこんなこと引き受けたんですか!?」
「断れなかった。それだけだ。困ってたみたいだったし、仕方ないだろ?」
「断れなかったじゃないわよ。そのせいで私もこんな目に遭ってるんだから。」
日野さんが口を挟んで俺に文句を言ってきた。
文句を言ってきたところで俺は言い返せない。
言い返せないどころか、ぐぅの音もでない。
むしろ自然と謝罪の言葉が溢れてくるくらいだ。
「すみません……」
「分かってなら、さっさと考えて。私も今作業頑張ってるんだから。」
「ハイ……頑張らせていただきます……」
そうだな。
全く何をしたら良いか分からないが、それでもしないわけにはいかないし。
……まずはどういうのがこの系統に合うのか過去のオリジナルアニメ映画の内容と歌詞から照らし合わせてみるか。
……全くわからない。
「……話戻しますけど、私よりもお兄さんの他の同級生さんの方が良くないですか? 絶対にその方が頼りになると思いますけど」
「そういうわけにもいかないんだよ。堂川はふざけるし、ペディアはナルシスト系になるだろうしな……」
「もっと他に頼れそうな人いないんですか……」
うーん……
といってもな……
俺の男友達で他に頼れるやついないもんな……
一人は熱血、他は平凡な俺と同じ高校生って感じだし。
……あ、清瀬がいるじゃないか!
なんで忘れてたんだろ……
そうだ! 清瀬にも手伝ってもらおう。
確か、今日暇って言ってたし。
もしかしたら来てくれるかもしれない。
「……あ! そうだ、清瀬に連絡してみるか」
「え! ちょっ……心の準備できてないんだけど?」
「なんでそんな慌ててんの? 清瀬が来るだけじゃんか。何もそんなあわてることなくない?」
「……お兄さんって本当にこういうのにはどこまでも疎いんですね。これは乃愛も苦労するわけですね……はあー」
なんで白い目で失望したように俺を見つめてくるの?
やめてよため息とかもさ。
すごく微妙な気分になるじゃないか。
まあいいや、いや良くないけども。
ともかく、清瀬にライム送るのが先決か。
「取り合えずライムに送って……と、これで良し。あとは来てくれれば良いんだけどな……」
「え!? 送っちゃったの? ……どうしよう……わたし、えっとちょっと化粧し直してくる!」
えっと何で急に?
トイレかな?
でもそんな慌ててる様子はなかったけどなぁー
「了解。ところで羽村は化粧直さなくて良いのか?」
「……お兄さん。私は完璧に仕上げてきてますから!」
えっと……いや、なんで?
女子ってよく分かんないな。
まあ人によって違うってことか。
……そういえば乃愛ってあまり化粧してるところ見たことないなぁ〜〜
今度化粧してみてもらおう。
「……そう、それなら良いんだけな。それはそうと、ここのところこの言葉使うのって結構良さそう?」
「うーん……パクリ感マシマシですね。クオリティーが下がりそうです。」
こんなんで終わるのだろうか。
俺は言い表せない不安の中、黙々と作業を続けるのだった。
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