第63話 一件落着?
警察も来て一件落着……と行くわけでもなく、会長のせいで中々に状況が収まらないことになっている。
どうしても兄妹喧嘩を止められないらしい。
日野さんは会長が俺の前で性癖を晒したことが看過できないらしい。
まあ普通は嫌だよな。
俺は別にそんなことどうでもいいけどさ。
普通の人は家族の性癖がバレるのって恥ずかしいもんだよな。
本当に日野さんにはご愁傷様という言葉をかけるほかない。
それはそうと歌詞を作ってくれるという人はいったい誰なんだろう……
もしかして会長?
だったらあまり驚きはないが納得の話だろう。
気になるし聞いてみるか。
「あのさあ、羽村。こんな一件の後で言うような話じゃないと思うけど、歌詞作れる友達って誰なんだ? 悪い我慢できなくて……」
「いいですよー それで、だれか分かりました?」
「いや、分からなかったけど……だから聞いてるんだけど……普通に考えたらこの日野兄妹のうちの一人な気がする。」
「そこは察しが良いんですね……普段は鈍感なのに……」
今とっても馬鹿にされた気がするのは気のせいだろうか?
なわけないか。
話を長引かさせられてもわからないだけだし、結局どっちなのか聞かなくては。
「で、結局は二人のどっちが手伝ってくれるんだ?」
「それなら私の方じゃない? で、それがどうしたの?」
「柚歌先輩! あのですね……」
「はあ!? 何それ馬鹿じゃないの?」
「ですよね……分かってます。」
何コソコソと話してるの?
なんか自分だけ仲間外れって感じで嫌なんだけど……
あ! そうか!
やっぱり会長が歌詞作りを手伝ってくれる人なんだな。
そして会長はシスコンだから、妹の日野さんに説得を手伝ってもらおうとしてるのか。
それなら納得できる。
間違っていたらだめだから聞いておこうか。
「やっぱり会長か? 会長ならできそうだけど……」
「柚歌先輩ですよ? 今先輩を説得してます。」
「……それ先にやるべきでは?」
「あ! 確かに。」
「……はぁー」
まあ間違いは誰にでもあるし、問い詰めるのは違うな。
今度からは気を付けてもらおう。
「ともかくですよ、柚歌先輩に作ってもらえるようお兄さんからも頼んでください! 私から」
それはそうかも。
ってよく考えたら作詞できるとか普通に天才じゃね?
俺の周りって天才しかいないのかよ。
しかもどちらかといえば突き抜けてるような人が多い。
むしろ平凡(本人目線)な俺が普通じゃないのでは?
もう少し偏差値低めの学校にすべきだったか?
でもな……ここ家から近いし。
でも一つ下げると乃愛に構える時間が少なくなってたしな……
「お兄さん? ほらボーっとしてても意味ないですから」
それもそうだな。
「あのさ日野さん、さっきも羽村から聞いたと思うけど歌詞作り手伝って欲しい。頼む! 他に頼りがいないんだ」
「……それ、私にメリットある?」
え? あーそうだよね。
対価も何も無しに手伝ってもらおうとしてる方がおかしいか。
だってそこまで仲良いって訳でもないし。
でも俺から提示できるものなんてないしな……
やっぱりそんな上手い話なんてあるわけないか。
「ないな。すまん忘れてくれ」
「はぁー、そのくらいのこと考えておくもんじゃないの?」
はい、そのとおりです。
でもね? 俺だって相手が誰か分からなかったんだよ?
考えられなかったのは確かだけど、それでも考える術さえ無かったのもまた事実だし。
言い訳ってあんまり好きじゃないけどこのままじゃ俺一人で歌詞を作らないといけなくなる。
そんなこと普通(本人目線)の高校生にできると思うか?
「言い訳かもしれないが、その……誰が来るか知らなかったから……すまん」
「今回だけだから。貸し1ね。いつか返してもらうから」
とてもありがたい。貸し1で済ませてくれるなんて。
こっちは普通なら相当難題になるものを協力という形ではあるものの本質的には押し付けようとしているに他ならない。それを受けてくれると言っているんだ。
すごい親切なことだと思う。
本来なら、あまり借りなんて作りたくはないところだが、だからといって俺に歌詞作りができるかと言われればできる訳が無い。
それを条件付きでも手伝うと言ってれてるんだ。
断る方がそれこそ失礼というものだろう。
「ありがとう。本当に……助かるっ」
「オーバーリアクション過ぎない? まあいいけど。で、どういう曲をベースに作るわけ?」
「えっと……ライムで送られてきてるからちょっと待って。………はい、これ」
「……これさぁクオリティー高すぎない? 私も気後れしそうなんだけど……」
「もっとクオリティーが低かったら俺も安心してクオリティーの低い歌詞てくれたのに……これじゃあ無理っていうのも納得だろ?」
「これ絶対にプロが作ったよね? じゃないとこの映像にこのクオリティーはありえないよ」
それがあり得るんですよ。
あそこの部活は魔境だろう。
少なくとも俺みたいな普通(本人目線)のやつがあの天才たちの中では逆に異常者になるくらいにはおかしいもん。
「いや……こういうのがあと四曲ほどございまして……正直ヤバいかなーと……」
その瞬間、俺は日野さんに掴まれた。
「嘘でしょ!? ……あんたがお人好しなのは重々知ってたけどさ〜〜流石に私も五曲分の作曲は無理だよ? できて四曲かな〜〜」
「それでも手伝ってもらえるだけで嬉しいよ。ありがと。」
でも解決に近づいただけであって、解決はしてない。
あと一人っているわけ無いじゃんか。
これが詰みってやつか。今度からは気をつけよう。
「お兄さん、良かったですね。」
「まだ解決はしてないぞ。あと一人手伝ってくれるやつを探さないと……こっちは文化祭実行委員だってあるっていうのに……」
「あはは……ドンマイです」
「そこ! 話してる暇ないから。これ今すぐ作らないとまずいよ?」
「了解。ありがとな」
とにかく一歩前進か。
一悶着あったけど、いい方向に終わって良かった。
それもこれも全て羽村のおかげだ。
何か今度お礼しないとな。
……誰か忘れてるような気がする。
気のせいか。
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