第56話 放課後の運動
その後、クラスメイトのみんなから奇異の目で見られたり、可哀想な目で見られたりした。
お陰で午後は授業どころの話ではなかった。
俺に対してチラチラと視線が向くので集中などできるはずがない。
本当にわけが分からなかった。
そのままパッとしない感覚のまま放課後になった。
確か、稲城と遊ぶとか言ってたっけ?
遊ぶって何するんだろ。わかんね。
定番は……カラオケとかか?
中学のときに遊びに行ったのってクラスで遊びに行くときか、男子の友達もしくは部活のメンバーで遊びに行くときくらいだ。
だから女子と行く場所に検討がつかない。
乃愛と一緒に行った場所のどこかという可能性は高いだろうがあまりにも多すぎてどこが正しいのか分からない。
それこそ考えても混乱するだけだ。
ただ稲城に身を委ねるのが一番かもしれない。
でも万が一聞いてきたら面倒だしな……
「いたいた!才人くんこんなとこにいたんだ〜〜あたし探して損した〜〜」
「普通に生徒玄関以外になくない? どこで集まるかも言ってなかったし。取り合えずそんなときってここに来ないか?」
「う〜ん……そんなこともないと思うけどな。それより今日はどこに行くでしょうか!」
さっきそれを考えてたんだよ。
だけど出てこなかったの。
だから聞いてほしくなかった。
嫌な予感が当たってしまった。
えっと……素直に分からないって言おうかな。
別にここで変に威張っても無駄だし。
「普通に分からない。さっきも気になってそのことをずっと考えてたけど思いつかなかった。ごめん俺には無理だ。」
「……言うと思った。」
えっと?
どういうこと?
「えっとね!ヒントは〜〜定番です!」
定番?
カラオケか。カラオケだな。
それかゲーセン。
流石に家に遊びに行くことは無いだろうしどっちかな気がする。
……そういえば稲城って高校デビューなんだっけ?
それならオタク趣味の普通もあり得るか?
オタク趣味の普通ってなんだよ。
俺にはよく分からないんだけど。
だってクラスのみんなが見てるとかいうアニメしか見ないし。
考えても無駄そうだし一番最初に思いついたカラオケでいいか。
「カラオケとかか?定番っちゃ定番だけど。」
「ブッブー違います!」
「それならゲーセン?」
「ハズレだよ。もっと体を動かすとこ。」
体を動かすところ?
えっと……どこ?
「分からなそうだしもう言うね。バッティングセンターだよ!」
えっと……バッティングセンターって定番だっけ?
俺そういう知識ないからな……
確かにストレス発散には丁度いい場所だけどわざわざここに遊びに行くか?
俺だったら来るとしても一人でストレス発散のために来る。
そもそもこの周辺にバッティングセンターなんてあっただろうか?
「えっと……バッティングセンターってどこ?」
「え? すぐ近くにあるじゃん!」
「俺知らないんだけど。」
「分かった。付いてきて! 教えてあげる!」
そもそも教えてもらわないと遊びに行けないのですが?
当然教えてもらう権利はあると思う。
にしてもバッティングセンターか……
稲城ってこういうところ来るんだな。
知らなかった……
_______
「ここだよ!」
「うわっ近っ。徒歩5分じゃんか。逆になんで俺は識らなかったんだろう……家近いはずなのにな……」
「まあまあ、そういうときもあるよ!」
そういうときってどういうときだよ。
でもそっか家と反対方向にあったんだな。
あまり行くことないからわからなかった。
今度ストレス発散するときに一人か乃愛を誘っていこう。
「俺どうしたらいいか知らないんだけど」
「大丈夫!私に任せて!」
まあ、一人でもなんとかなりそうだけど稲城が張り切ってるなら任せるのが筋ってやつだよな。
そう思った俺は稲城に任せることにした。
数分後、俺はドラマでしか見たことがなかったバッティングセンターの打席にいた。
「なんでそんな当たるんだよ!」
「慣れてるから?」
「慣れてるでそこまでホームラン連発はしないんだって!」
「それを言うなら一応全球打ってる才人くんも中々だと思うけど?」
「知らないって。なんか無性に悔しいんだけど。」
「それは負け惜しみかな?」
すごいウザい。
滅茶苦茶からかってくるじゃんか。
「そうだよ。悪いか?」
「いや?全然?そうだ!勝負しない?」
「え?普通に嫌だけど?」
「どうして?」
「負ける戦いに挑むやつがどこにいるんだよって話。普通は勝算がないなら挑まないって。お前みたいにホームランポンポン打つやつと戦う意味がない。」
「ポンポン打つって言っても4回に1回程度だよ?そこまでハンデじゃないと思うけど……あと私普通に何回か空振りしてるし!」
「にしても無謀だって。」
「だったらこうしない?20回打って、打った回数が多かったほうが勝ちでどう?」
「乗った。」
「早っ!勝てると思った瞬間に乗ったの?」
そりゃあそうだろ。
こんなコスパの良い勝負は他にないないしな。
ハンデまでもらってしまったらもう負けるわけにはいかない。絶対に勝つ。
俺はそう心に誓うのだった。
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