第45話 最カワ天使のご機嫌取り
家に真っ先に帰って来た俺は、すぐさま乃愛のところに向かう。
相変わらず乃愛の態度は手厳しい。
お兄ちゃんしょんぼり…
駄目だ。お兄ちゃんしょんぼり。
乃愛、乃愛…
違うそうじゃない。
落ち込んでるばっかじゃ駄目だ。
何か乃愛の機嫌を取る努力をしないと。
やっぱり乃愛の優しさに甘えてばかりなのはお兄ちゃん失格だ。
お兄ちゃんとして乃愛にちゃんと好かれたいのなら、乃愛がやりたいこと、乃愛が喜ぶことを最優先に考えるべきだろう。
「乃愛、今日食べたいものある?」
「…特には。…というかあんまり話しかけないで欲しいんだけど。そのくらいならママとパパにも聞けるでしょ?」
「だって乃愛とっても機嫌悪そうだったから。少しでも気が楽になったらなって思って…ごめんね、お兄ちゃん乃愛の気持ちもわかってあげられなくて…」
「本当にお兄ちゃん面倒くさい…それならさ、グラタン作って。お兄ちゃんのグラタン美味しいから。」
「…!おう任せとけ!お兄ちゃんがとびっきりのグラタン作ってやるからな!」
「はいはい、楽しみにしてるよ。でもその前に風呂に入ってね?今日のお兄ちゃんなんか臭いから。」
すごいショック。
妹に臭いと言われてショックを受けない兄がこの世にいるだろうか?
いやいない(迫真)!
あ〜ショックだ〜
「ちなみにどんな匂いか聞いても?」
「香水死ぬほどかけたような匂いがする…」
は?え?どゆこと?
もしかしてあれか。
国立が絡んで来たときにがっつり掴まれたからか。
確かに国立って香水馬鹿みたいに強いもんな。
なのに違和感ないっていう意味分からんやつだけど。
まあそういうやつもいるか。
ともかく真っ先に風呂に入って、いち早くグラタンを作らないと。
乃愛が好きそうなお菓子も何個か買ってきたし、多分仲直りするのは大丈夫なはずだ。
多分…大丈夫なはずなんだ。
あれ?ライム来てる。
本当に今忙しいってのに誰だよ?
えっと…ふうかからってことは…
あ〜稲城からか。えっと、部活の出し物関係かな?
ってか俺一応文化祭実行委員なんだけど。
それで準備しろって言うのか?
前に部長が文化祭実行委員になったときに、ほぼ毎日のように下校完了時刻ギリギリまで働かされてたって聞いたぞ。
絶対に無理だろ。
やれたとしても休み時間くらいだろうし。
【明日放課後空いてる?】
えっと内容を聞きたいんだけど。
どういう意味だ?
あ〜月曜日文化祭実行委員の集まりで部活にいかなかったから、その連絡だろうけど内容を教えてくれれば十分なので早く伝えて欲しい。
【空いてるけど何するの?】
まあすぐ来ないだろうし、スルーしよう。
と思ったら思ったよりも早く返信が来た。
こんな時までスマホ使ってるとか暇人なのかそれとも几帳面なのか。
でも返信が早すぎるな。
【いくつか話したいこと話そうって】
【部活のある?それならパス俺文化祭実行委員だから】
【そうなの?私も良かったね】
一体何が良かったのだろうか。
あと部活の話じゃなかったのか…
それならなぜ今連絡を?
【部活の話じゃないなら何?】
【えっと妹ちゃんを誘って今度お泊り会するって話。まだあるけどメインはこれ】
【また?】
【そう。次は私の家でやる予定】
え?乃愛が1日中いないってことだよな?
しかも普通の日に。
…耐えられる自信がないんですが。
【他の話ってのは?】
【ナ・イ・ショ☆】
なんで星マーク入れた?
あとなんでわざわざ変な打ち方した?
いろいろ気になるが、今は早く風呂に入って乃愛にグラタンを作るのが先である。
【内緒ならいいや。じゃあまた明日】
これでよしと。
さあ一風呂してきますか。
あ、また鳴った。まあいっか。
そんなすぐに返信するのも何かおかしいらしいし。
__________________________
ふう。これで臭いもなくなったことだろう。
あれ、何か着信来てたみたいだ。
えっと…は?電話?いやいや。そこまでしなくても良くないか?
だって秘密で済ませれるような情報なんだろ?
そんな大事な話をするならさっきの連絡の時点で伝えてるだろうし。いっか。
食事の後でいいや。
「乃愛待っててくれるかな?お兄ちゃん頑張って作るから、待っていて欲しいな…」
「お兄ちゃん…うるさい、リビングまで聞こえてるって。」
「え、あ、すみませんでした…」
「なんで敬語なのw、まあ次から気を付けて。」
優しい乃愛ちゃん…本当に可愛い最高だ。
これは天使。
「本当に天使!」
「そういうのいいから。」
乃愛に注意されてしまった。
お兄ちゃんとしてちゃんとしなければ。
「…お兄ちゃん、グラタン作るから待っててね。」
「はーい。分かったー」
それから俺はいつもよりも手塩にかけてグラタンを作った。
喜んでくれるだろうか?
もし、これで機嫌が悪いまま(思い込み)だったら俺は絶対に泣いてしまう。
さあ、どうだ!?
「うん、美味しい。いつものお兄ちゃんのグラタンって味がする。」
「そっかぁ…良かった〜」
「でも、少しお兄ちゃんの態度が大袈裟かも。」
どうしよう。お兄ちゃん泣いちゃいそう。
「はいはい、美味しかったから。お兄ちゃんは本当にお兄ちゃんしてるよ。大丈夫だから。」
良かった…許してくれたのかな?
え?膝に頭!
これ膝枕だ!
もう3年ぶりだな膝枕をするのも。
本当に嬉しかった。
そしてその表情は何にも代えがたい可愛さであった。
あ、電話忘れてた。
まあいっか。乃愛優先!
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