第43話 クラスの出し物決め・前編




 昨日、妹に無視された俺はへにょへにょになりながら学校生活を過ごしていた。

 そして来たる6限、文化祭でのクラスの出し物を決めることになった。

 しかし俺は絶賛へにょへにょなままである。


「これからクラスの出し物を決めるけど、質問ある人いる?」


 茶髪の男子生徒が手を上げた。


「それって、何してもいい感じっすか?」


 言い方がチャラい。

 こいつも清瀬のグループに属している一人だ。

 確か名前は…国立くにたち 丈瑠たけるだったはず。

 よく中野さんに話しかけるやつの一人だ。

 前なんかデートにも誘っていた。

 こっ酷く断られていたけども。


「一応先生に確認を取る必要はあるから先生が許容してくれるようなものに絞られるな。」


「つまんね〜の。あの先生が許容する範囲でって狭すぎるっしょ。」


「すまない。だけどそうしないと出し物として許可されないんだ。分かってくれ。」


「はいはい、了解で〜ス。」


 なんか面倒くさ。

 俺に絡んでくることがなかったので、特に気にしていなかったが、それでもチャラチャラしていて面倒臭そうなイメージはあった。

 まさか本当にその通りだとは。


「…他に質問ある人は…いないみたいだな。えっと、取り合えず話し合いの時間を取る。その間に意見をまとめて欲しいらしいので、できるだけ考えてくれるとありがたいな。」


「了解だよ。僕に任せといてくれよ。」


 ペディアはぶれないな全く。


 クラスの出し物か…準備が楽なのがいいなぁ。

 まあ俺は文化祭実行委員だし、準備にはあんまり参加しないと思うけど、仮に準備に駆り出されたときに楽な方がいい。


 しかしこのクラスはよくも悪くもクラス全体の雰囲気がアクティブである。

 よって俺の思う通りにはならないだろう。

 俺だって本当は文化祭を楽しみたい。

 が、乃愛と一緒にいる方が優先なのである。


 乃愛のことを考えると途端に悲しくなってきた。

 へにょへにょに逆戻りだ。


「才人君?流石にもうそろそろ機嫌直したほうが…」


「良いんだ。俺はここで芋虫みたいにへにょへにょしてれば良いんだ。」


「ウチのクソ兄と比べてもかなりのシスコンね。面白くて朝から笑いそうだったわ。」


「本当にそれな!こいつシスコン極めに極まってるよな!だってこいつの妹愛異常だもん!」


 何故か堂川が誇っている。

 いや、何をそんなに誇ってんだよ。と言いたくなったが、そういうテンションではない。

 とにかく俺はへにょへにょでぐでーんとしている。

 もう何もやる気が出ないのだ。

 

「っていうか本気で今年の出し物何にする?」


「私たちも始めてだから分からないよね…」


「望友ちゃんノーだよ。…天川君にやって欲しい出し物とか考えるの!それいいと思わない?」


「…そういうの人前で言わないで欲しいな…恥ずかしいから。…………でもありかも。」


「でしょ!ありでしょ!」


 何ブツブツ言ってんだ…って話し合いか。

 話し合いならブツブツじゃなくてはっきり言わないと伝わらないだろ。

 といっても俺は今日はとりわけやる気が出ない。


 乃愛と仲違い?をしたままだからだ。

 乃愛と仲直りすることに対してなら積極性を出せるが、それ以外には出せる気がしない。

 でもやらないといけない、この場では話し合いをしないといけないのは確かだ。


「二人で何こそこそ話してるんだ?俺にも聞かせてくれよ!」


「…」


「何で急に黙るんだよ!いいだろ!?俺にも聞かせてくれよ!な?な?」


「望友ちゃん私がいうから。…堂川、あんたさよくデリカシーないって言われない?」


 その瞬間、堂川は膝から崩れ落ちた。

 だろうな。

 だと思った。

 あいつが話に横入りしたときにろくな目にあったのを見たことがない。

 大抵堂川は、何かしらの不利益を被っている。

 それなのに学ばないやつだな。


「そういえばさ。天川珍しくだんまりじゃん。どうかした?って妹か。」


 分かってるなら聞かないで欲しかった。

 ただでさえ乃愛成分が不足しているのに、乃愛が俺に対して不機嫌だったという追い打ちにこっちは打ちひしがれいるというのに。


「そういえばクソ兄が、すごい悔しがってたよ。あれ傑作だったわw」


 なんかすごい元気が出た。

 なぜか知らないけどすごい元気が出た。

 乃愛成分の不足に対抗できるとか俺って相当会長のことを嫌っているっぽい。


「ありがとう。なんかすごい元気出たよ。」


「ぶっふ。あは!はははは!同族w嫌悪wしててw笑うんだけどw」


 こいつ…マジでキレた。


「堂川、お前マジで黙れ。俺と会長は似て非なる存在だ。あんな変なやつにだけはなりたくない。」


「ガチトーンで言うなよ…なっ?怖い…だろ?」


「はっ?ガチで怒ってるだけですが何か?」


「え?マジ?」


「大マジ。ただでさえ俺は機嫌が悪いの。今までのような冗談だからって許されると思うなよ?」


「…はい。」


 本当に調子のいいやつだ。


「えっと、出し物はどうすんだー!!!」


「ちょ、恥ずかしいよ…」


 すっかり忘れていた。

 そういえばこの時間は出し物について意見を出し合う時間だったな。

 えっとどうしよ。

 できれば乃愛に聞きたかった。


 でも乃愛の中学ではスマホ使用禁止だし…

 はあ。自分で考えるしかないか。


 そう思った俺は考えにふけた。


「お〜い、聞いてるかい?僕の話を聞いてくれよ。」


「無視されてて草。」


「堂川君。やるかい?やる気ならどこからでもかかってきたよ。」


「お前ら!うるさい!黙って考えとけ。」


 あ、やばい。

 つい暴言を吐いてしまった。

 本当に今日の俺はどうかしてるな。

 こんなんで出し物なんか考えれるかどうか…


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